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素人の焼肉オタクによる、素人のための焼肉の焼き方

こんにちは。かねどーです。今日は焼肉の焼き方ですが、これは長らく記事にするかどうか悩んだ内容です。

というのも僕が認識して文字に落とせる内容は、僕が焼肉を焼く上で大事にしていることのほんの一部にすぎない気がしているのです。また文中の単語や表現について、僕と読者でイメージが一致するとも限りません。これを読んだ読者の方が僕の意図とは全く異なる焼き方をしても僕には感知できず責任も取れないので、これはなかなかの大事です。

それでもこの記事が肉の焼き方に気を配ったことがない人、肉をいつも誰かに焼いてもらっているが本当は自分で焼きたい人に、何か新しい気付きを生むことがあればと思い、文字にしてみました。補足や質問を歓迎します。

はじめに:焼肉とはいかなるものか

焼肉とは数ある外食の中でも、客の技量や気配りが食体験の質を左右するジャンルのひとつです。ほとんどの料理は調理された状態で提供されますが、焼肉は仕込みとカットを終えた肉という、完成には程遠い状態で提供されます。

すなわち、焼肉は客が調理に参加する料理であり、客の腕次第で同じ肉が素晴らしい料理にもクズにもなるということです。トングを手に取る時には、仕入れや仕込みをしたお店、お金を払った他のメンバー、何より命を落とした牛に対して、自分が責任を負っているという覚悟を持ってください。

やってはいけないこと

焼肉において何が適切かを説明することに比べれば、何が不適切かを説明することはいくらか容易です。ここでは「これをやるとテーブルの誰かはキレるか、無言でキレている」という、代表的なやってはいけないことを列挙します(なお、これは1-4人の焼肉が前提で、バーベキューなどはまた別です)

×運ばれた肉を一気に鉄板に乗せる
単純にしてよく見かける大罪です。ほとんどの人はそんなに沢山の肉の焼き具合を一度に制御できませんし、2枚も3枚も焼けたところで食べるペースがあるので、冷めた肉が何枚も放置されることになります。全ての焼肉ステークホルダーに対する冒涜ですね。「肉なんて焼ければいいじゃん」という奴、お前が全員分払ったうえで牛に償え。一度に焼く肉は基本1人1枚以下、それ以上置く時は肉の焼けるリードタイムを考慮しての配置が常識です。

×肉が折れ重なった状態を放置している
焼きムラの原因になるので、薄い肉を意識的にたたんで焼く場合を除いてです。ちょっと直せばいい話なので、直しましょう。

×火が出た鉄板を放置する
焼肉をしていれば火が出るのは当たり前なので気にしなくていいですが、放置すると外は丸焦げ、中は生焼け、落ちた脂が焦げて雑味増し増しの肉ができるのでです。また人により意見が分かれますが、氷を置いて鎮火するのは僕はやりません。鉄板が冷えすぎたり肉が湿気ったりススが出たり悪影響がありそう。肉を避難させて待てば自然と鎮火しますのでそうしてください。

×鉄板に複数枚乗せた肉を、毎回一斉にすべてひっくり返す
鉄板上の温度勾配は複雑で、数cmずれると温度が100-200℃異なる場合もあるそうです。1枚肉が表裏焼ける間に、隣のもう1枚はまだ片面が終わっていない等もしばしば。何も考えず一斉にひっくり返すと、ある人にはちゃんと焼けた肉、ある人には生焼け、ある人には焼きすぎを出すことになり、罪が深いです。僕を含めて焼ける人は呼吸をするように「これは焼けた、これはあと数秒、これはまだ当面なので少しずらして…」と調整をかけています。

×肉をコロコロコロコロ頻繁に返す
肉によるので一概に言えないですが、タン塩等の薄切り肉でやると脂が失われ、肉がまずくなります。厚切りや塊肉を除いて、肉は一回ひっくり返して終わりで焼けた方がよいです。めくって確認はOK。

その肉はお前の人生そのものだ

ここまで読んで「たかが焼肉で色々とめんどくさいなぁ…」と思った方は、人の肉を焼こうとせず、自分の肉だけを焼くか手を膝に置いて待っていれば大丈夫です。あなたが余分なことをしているばかりにその場にいる全員の食体験を毀損しているのであり、覚悟がないのにしゃしゃるから駄目なんです。そろそろ僕も何言ってるのかわからなくなってきた所で、ではどうすべきかを論じましょう。

以下で「焼き加減の種類」「肉の部位別、適切な焼き加減の目安」「肉の声を聞く方法」「全力で肉と対話すべきおすすめ焼肉屋」などを説明していきます。少なくとも説明しようとしていきます。ついてきてください。

焼き加減の種類を理解する

肉を焼く上で大切なことは、「肉の部位・熟成度等により、美味しい焼き加減は異なる」ということです(良く仕込まれた肉なら同じ部位でも焼き方で違った美味しさがあることや、好みの問題はいったん割愛します)。焼き加減は最低限、次の3つで理解するのがよいと思います。

レア(生焼き):「ロゼ色」等と称される、黄色がかったピンクの肉色。生肉よりほんの少しだけ固い。

ミディアム(ふつう):レアとウェルダンの中間。肉色はロゼ色と、肉の表面ほどではない薄い茶褐色がグラデーションで混在。

ウエルダン(よく焼き):全体が肉の表面とほぼ同じ茶褐色に変色。かなり固くなる。

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