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料理と自尊心について

先週、渋谷の大盛堂書店で、美容ライターの長田杏奈さんとトークショーを開いた。最近『美容は自尊心の筋トレ』という本を出されて、版を重ねる売れっ子美容ライター。料理と美容とセルフケア、なんて話をした。

そのとき参加者にお願いしたアンケートに「料理と自尊心について」という要望があったので、料理は自尊心を高めるのに役立つのかどうか、すこし書いてみようと思う。

料理というのは、自己肯定感を得やすい作業だ。ごく簡単な料理なら、目玉焼きでもスープでも、短時間でできあがり「やった、作れた!」という素直な嬉しさがある。だから料理をすると、つい「作った自分」のほうに目が行ってしまう。料理がうまくなれば自分の価値はもっと上がり、自尊心につながると人は思いがちだ。(それはある意味間違っているのだけれど、ここでは置いておく)

だが、そのとき同時に「食べる自分」というもうひとつの喜びが生まれていることも忘れないでほしい。自尊心にとってより大切なのは、こちらの喜びであるような気がする。食の本能を満たされることは生き物にとって最大の自己肯定だからだ。基本的な衣食住が整うと人はそれだけで自分を大事に感じられるし、生きていていいのだという自信につながる。

私という人間は、外側の私と内側の私でできている。専門家に怒られてしまいそうないい加減な感覚だが、意識と無意識と言いかえられるのだろうか。忙しくて生活が荒れると、外側の私は栄養があって自分の体に合った適正な食事をとることなど、どうでもいいことに思えてくる。でも内側の私には大事なことだ。外側の私にないがしろにされ続けると内側の私は拗ね、倦み、最後は壊れる。

外の私と内側の私、どちらもが満たされて初めて自尊心というものが成立する。料理をして食べる行為は、両方の私を同時に満たす行為だ。だから、自尊心と深く結びつくと人は思うのだろう。

そんなことを考えながら、今日もスープを作っています。

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