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財政赤字について

世の中は、誰かが借金をすると、それは誰かの資産になるものである。マクロ経済というものの基本に基づけば、そういうことになる。昔から言われるとおり、「金は天下の回り物」なのである。

日本の財政赤字は、いかにもすごく悪いことのように目の敵にされて、すぐにでも日本政府は破綻するかのように騒ぐ人がいるが、日本政府が赤字であるということは、民間部門(企業とか家計とか)が黒字であることの裏返しに過ぎない。

マクロ経済学の教科書に出てくる、「貯蓄投資バランス(ISバランス)」という恒等式がある。すなわち、政府、民間、経常収支の3つにおいては、

S - I  =  (G - T) + (EX - IM) 
民間部門の貯蓄=政府の赤字+経常収支の黒字

という恒等式が常に成立する。

日本において、民間部門と経常収支が黒字だとすると、政府が赤字になるのは、仕組み上、当たり前のことだという話になる。

民間部門は、企業と家計から成る。家計はともかく、企業が黒字になるのは、「失われた30年」とかで、投資機会がなくて、企業がキャッシュを貯め込むしかないからである。

実際のところ、高度成長期からバブル崩壊くらいまでは、日本企業は積極的に投資をしていたので、企業部門は常に赤字であった。

いずれにせよ、民間部門の余った貯蓄によって、政府の赤字国債を引き受け、さらに経常収支の黒字(=海外部門は資金不足)となるから、海外の国債や証券を購入しており、外貨準備高が積み上がるしかないというのが、今の日本の状態である。

米国だと、民間部門も政府も赤字で、帳尻を合わせるためには、海外からの資金流入に頼るという構造が、ほぼ一貫して継続している。これは、米ドルが基軸通貨だから可能なのである。いくら、米ドル紙幣を印刷し続けても、デフォルトにはなる心配はない。

これが、アルゼンチンみたいな米国以外の国となると、海外からの資金流入がどこかの時点で続かなくなるから(「大丈夫かよ」と心配になって、誰も国債とか証券を買わなくなるから)、デフォルトに陥ることになる。

デフォルトにならないようにしようと思うと、ざっくりと言えば、「我が国に投資してもらっても大丈夫ですよ」とアピールし続けるしかない。要するに国としての信用力が担保となる。

何が言いたいかというと、「財政赤字=悪」でもないし、「財政赤字=善」でもないということである。単なる結果の数字であり、それ自体にあまり意味はない。

だから、財政赤字だから増税するという論理にも、気をつけないといけない。中央官庁の役人(具体的には、財務省の役人)というのは、隙あらば、増税して、自分たちの財布を潤そうというのが習い性というか、本能的な習性みたいなところがある。

彼らは、あれこれと理屈をつけて、増税しようとする。税金を取れば、たしかに多少は政府の収支は改善されるかもしれないが、民間部門が本来ならば投資に振り向けるべき資金が、税金として政府に召し上げられるわけだから、企業の投資意欲はますます消極的になる。そんなことではますます日本経済は停滞し、経済成長は期待できなくなるから、将来的な税収も先細りになるであろう。

政府の借金を、家計の借金になぞらえて、「財政赤字はダメだ」という説明をする人がいるが、徴税権のある国と、我々のような一般庶民とは一緒にはならない。

あと、財政赤字は、あくまで政府というか、日本国の赤字であり、我々国民の借金ではない。「赤ん坊から年寄りまで、1人あたり〇〇万円の借金がある」といった暴論を言う人がいるが、あれは嘘である。

ついでに言うと、政府と日本銀行は、親会社と連結子会社みたいなものだから、連結ベースで理解するべきであろう。

もちろん、徴税権のある国家といえども、借金は借金である。日本という国の信用力が地に堕ちてしまい、子会社である日銀以外は誰も国債を引き受けてくれなくなると、「円」の価値も下落してしまい、すさまじいインフレが起きるという可能性はある。

そうならないためには、国家としての日本の「ブランド価値」を高めて、世界中の企業が競って日本に投資をしたいと思うように国としての信用力を維持するしかない。

国内におカネが潤沢に回れば、景気が良くなり、日本企業や個人が潤い、所得も上がるから、日本経済も再び成長トレンドに乗り、結果的に放っておいても税収は増える。物価も上がるかもしれないが、インフレを上回る経済成長が実現すれば、決して悪い話ではない。

そういう意味では、円安は悪い現象ではない。日本は割安だと思ってもらえれば、海外からの投資は積極的になるし、観光客も来る。官民挙げて、外資を呼び込むつもりで、大いに知恵を絞るべき絶好の機会である。

同じ島国である英国の規制緩和、ウィンブルドン化施策は、大いに参考にすべきであろう。

前にも書いたが、同じ時期に発足した「Jリーグ」と「プレミアリーグ」の現在の大きな隔たりが、外資を呼び込めない日本経済の現状を象徴していると思う。

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