こんなことやってしもうたのは人生初


 50ccで(まだこの時、中型車を購入してない)戸田ボートに通っていた。手軽に行けるバクチ場だったから。まるでゼロから教則本もなしで、それでも何度っ通ううちに詳しくなっていった。そのボートレース場以外の部分ではブラックバスやブルーギルが釣れた。ブルーギルなど、生まれたばかりの小さい個体は網ですくっただけですごい数が採れた。
 太い川を渡るのだけど、前を走る2トントラック(名称だけきくとなんだか大きめに感じるでしょうが、ダイナとかあそこらへん、軽トラがほんの少し大きくなったレベル)の横から液体が揺れるたびに噴き出している。ああこれはガソリンスタンドでの燃料油キャップの締め忘れ、しかも、あの種の車両はキャップが車体とつながってない。きっとガソリンスタンドに置き忘れている。
 優しい私はそれをみかけて、運転者にそれを伝えようと、全速力で追いかけた。50ccの全速力なんて加速も悪けりゃせいぜい60㎞/h程度だ。どこかで信号でもあれば追いつくのに、そこは太い川を走るだけの橋の上だ。一次停止の標識すらない。どんどん離される。カワイはどんどん加速する。
 橋が終わり、間に合いそうだ、と思ったころ、トラックは左折する。ああ左折先はずっと信号も停止標識もないのだ、もう間に合わない、とあきらめた。カーブの際、燃料をまき散らしながら遥か彼方に去ってしまった。

 昨日、連日の遠出で減ってきた私の車に燃料をいれた。いつも通りストッパーがきいた後も細々となみなみといれた。満足し、機械からおつりを受け取り、発進した。

 車から変な音が出る。変な音は間違いなく異変の兆し。サイドミラーで確認する。戸田のトラックと同じことをしていた。燃料油キャップがぶらぶらと車体に当たる音だった。先ほどなみなみといれた燃料はこぼれてしもうていた。
 こんなことやってしもうたのは人生初だった。

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