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週刊金融日記 第349号 いよいよ不景気の足音が聞こえてきた、踏んだり蹴ったりの個人投資家2018年、オークランドでクジラを見てきた、奥さんにするなら情弱と情強のどちらが幸せか、他

// 週刊金融日記
// 2018年12月26日 第349号
// いよいよ不景気の足音が聞こえてきた
// 踏んだり蹴ったりの個人投資家2018年
// オークランドでクジラを見てきた
// 奥さんにするなら情弱と情強のどちらが幸せか
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 クリスマスから年始にかけて、もう長期休暇に入っている人も多いかと思います。一週間ちょっとなので長期と言うほどのものでもありませんけどね。まあ、僕は何の仕事をしているのか、と問われるとなかなか答えるのが難しいのですが、簡単に言うと、作家、投資家ということでしょうか。ハイパーメディアクリエイターでもいいですけど(笑)。法人はあるんですが、オフィスを構えて人をたくさん雇って毎日仕事をするというような会社ではなく、基本的には僕の売上などを管理して、税務などをスムーズにするための会社であります。会社にすると節税できる、という話をよく聞きますが、この辺はうまいことできていて、外資系証券会社の高額所得サラリーマンと税率はだいたい同じぐらいに落ち着きます。トホホ。

『週刊金融日記 第286号 日本で高額所得者がどれだけ税金を払うのか教えよう』

 それで、税金の話をしたいわけではなく、休みの話なんですけど、サラリーマンを辞めると平日に観光地に行けるのは大変ありがたいし、いつでも休めるんですが、ある意味でいつでも仕事なんですよね。そもそも仕事ができてたくさんお金を稼げる人というのは、当然ですが、人生の中で仕事の優先順位がとても高いのですよ。おかげで、ずっと仕事をすることになります。遊びに行くにしても、仕事にして経費にしようと思うと、いろいろリサーチしてアウトプット出して、とやっていくと、本来はセコい節税のためだったものが、本格的な仕事になります。僕が見る限り、稼いでいるフリーランスの人たちは、明らかにサラリーマンより毎日仕事してますね。
 その点、(経営者から見ると)定額使い放題プランでの契約のサラリーマンは、有給中は休まないと損なので、きっちり休めます。しかし、フリーランスは休みに休むと損なので、なかなか休みたくないわけです。この辺のインセンティブ構造の違いが、休みに休めるのかどうかに関係してくるのはなかなか興味深いですね。
 そこで、昔、対談したAV監督の二村ヒトシさんが言っていたことを思い出しました。AV男優というのは、お金をもらって可愛い女の子とセックスできるのですから夢のような仕事に思えますが、お金をもらってカメラの前でちゃんと勃つというのは、なかなか難しいことのようです。お金をもらうと、プレッシャーで勃たなくなるそうなんです。逆に性風俗店とか売春とかでお金を払うと、心理的に「お金を出したんだから元を取らねば!」と思うので、めちゃ勃ちやすいそうなんですね。実際に、写真指名したら、プライベートだったら絶対に声をかけないような写真とぜんぜん違う女性が出てきても、世の男性はちゃんと「元を取ろう」と必死にがんばってるなぁ、と。なので、この話には、なるほど!と思わず膝を打ちました。

●「モテたい」というのは、ごく普通の欲求ですよね?
https://cakes.mu/posts/9927

 それで、恋愛工学のナンパ理論でいうと、これはデートでおごるのか割り勘なのか、という終わりなき論争につながります。まあ、ちなみに僕は就職して稼ぐようになってからは、ぜんぶおごっています。レストラン代ぐらいは別に大したことないですからね。しかし、おごらない方がセックスできる、という説得力のある理論も存在するわけです。女の人から見たら、高いディナーおごってもらったり、プレゼントもらえば、もうそれで満足なわけで、あとは逃げるインセンティブが出てきてしまうわけです。しかし、割り勘だと、これだけ私の時間と感情のエネルギーを使ったのだから、何かで元を取らなきゃ!と思い次のデート、そして、いいシナリオの場合はセックスで元を取ろう、と女の人が思うというわけです。この場合、女の人にとって、セックスは何かと引き換えに売るものではなく、快楽という報酬になるので、なおのこといい、と。
 この理論がどれほどワークするのかわかりませんが、高いレストランに連れていけばセックスできるわけではない、ということは恋愛市場で何度かトライアル&エラーを繰り返せば男の人なら誰でも気づくことではありますね。それでも、僕はふつうに美味しいもの食べたいし、まあ、そこそこの金持ちになりましたから、女の人とご飯を食べにいけばおごりますけどね。

『週刊金融日記 第4号 女の方が投資が上手い理由 機会費用 Opportunity Cost と埋没費用 Sunk Cost』
『週刊金融日記 第75号 最新のゲーム理論に基づくプレゼント戦略のガイドライン』

 今週はレストランコーナーでクジラの話を書いたのですが、日本はIWC(International Whaling Commission、国際捕鯨委員会)からとうとう脱退することを決めました。ぶっちゃけた話、もう日本人はクジラをほとんど食べないので、あまり関係ない話ではあるんですが、そりゃあ、欧米人からクジラは可愛いから殺すのは野蛮だ、お前たちクジラ捕るな!などと言われれば、一部の日本人は頭にきて、いわゆる沽券に関わる問題になってしまい、ずっと揉めるわけですね。
 しかし、欧米人のクジラ愛は大変に強いので、外交問題に発展する可能性はありますね。民主主義国家では、政治家はもちろん客商売なので、日本人がクジラを殺すのをなんとかしてくれ、とメディアに騒がれたら、欧米諸国の政治家も何かパフォーマンスをしなければいけません。

●日本とクジラ なぜ日本は捕鯨をするのか
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-35529672

●IWC脱退 失うもの多く
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39204040Q8A221C1EA1000/

●IWCから脱退表明 商業捕鯨再開へ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181226/k10011760001000.html

 じゃあ、牛は可愛くないから殺してもいいのか?とつっこみたくなりますね。で、じつは、欧米では牛もやっぱり殺してはダメだ!という人もどんどん増えてきているんですよね。たとえば、本メルマガでもたびたび紹介している、天才的な人類史のストーリーテラーである歴史学者のハラリ教授などもそのひとりです。

『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ http://amzn.to/2jpIlEJ
『週刊金融日記 第251号 サピエンス全史と生物学的欠陥で滅亡しつつある人類』
『週刊金融日記 第335号 人類はホモデウスに進化し生物学的な枠組みから初めて自由になれるのか』

 ハラリ教授の本を読むと、人類が大型哺乳類を次々と絶滅に追いやったことがわかります。一方で、牛や豚のように、人間に「有用」な動物は家畜化され、遺伝子を拡散するという生物学的な目標から見れば、こうした家畜たちは地球上で大繁栄していることになります。しかし、イノシシから品種改良された豚の子供は、イノシシの子供と同様に知的好奇心に満ち溢れており、森を駆け回りたいという気持ちを持っています。母と子の深い愛情もあります。こうした人間と同じような感情を持っている愛くるしい動物たちを、小さな檻に閉じ込め、ひたすら安価な餌を食わせて太らせ、病気が広がらないように抗生物質を投与し、時期が来たら屠殺して肉にするわけです。ハラリ教授にしてみたら、こんな非人間的な行為があるのか、と。それで彼は、ヴィーガン(Vegan)になりました。彼は自分は肉を食べず、こうした家畜たちの権利を守るために啓蒙活動をしているのですが、かといって家畜の肉を食べる人を攻撃することは決してない、穏健派のヴィーガンですが。

 ビジネス情報誌週刊SPA!で連載している映画評がWebにも掲載されました。血の繋がらない家族というのは、映画や小説の定番テーマのひとつですが、この映画もなかなか面白かったです。原作は中国が舞台ですが、韓国の戦後が舞台に書き直されています。

●11年育てた息子が浮気相手の子!? それでも妻と子を愛せるか 映画『いつか家族に』
https://nikkan-spa.jp/1536389

 ふつうのサラリーマンだったのが、とうとう約230億円の資産を築いた日本を代表する個人トレーダーになられたcisさんが本を出しました。同時代に同じ市場を見ていた僕には、なかなか面白い本でした。具体的な手法は書いていないし、もちろんそんなものはないのですが、考え方とかは僕とよく似ていて、共感する部分がありました。

『一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学』cis https://amzn.to/2CzpOgW

 先程のサピエンス全史はまだ読んでない人は年末年始に読むといいと思います。そして、こちらのcisさんの本も、サラッと読めて、株とかFXとかやってる人は面白いかな、と。とは言っても、相場の勝ち方はいろいろあって、彼と波長が合わないなら無理に読む必要もないと思いますが、ゲーマー上がりのトレーダーで世の中なんでも数学的な確率で考える、という点は僕も似たようなものだったので、僕は波長が大変合いました。

 いつものように読者からの興味深い投稿がいくつもありました。見どころは以下のとおりです。

- 今年のふるさと納税はアマギフで決まり
- 投資をする上で入るタイミングをどう判断されていますか
- 所長が未だに日本を拠点にしている理由はなんですか
- 私立小中学受験は医学部受験の先取りだった
- 奥さんにするなら情弱と情強のどちらが幸せか
- 新宿プロトコルでホテル打診に失敗
- アドバイスに従い出会い系アプリに顔出ししてサード童貞を卒業

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.いよいよ不景気の足音が聞こえてきた

 欧米の機関投資家の多くがクリスマス休暇に入ってしまうため、この時期はあまり相場が動かず、市場も閑散としがち……、だと思われていますが、まあ、そんなこともなく、動くときは動きます。そして、日本を含め、世界の株式市場が大暴落で、サンタさんから素敵なクリスマスプレゼントが届きましたね。僕の方は、12月初旬に申し込んだふるさと納税の和牛なんかが、ちょろちょろとクリスマス前に届いて、たいへん助かりました。ありがとうございます!

『週刊金融日記 第347号 ふるさと納税とポイント還元祭りで札束でビンタされる』
『週刊金融日記 第348号 ふるさと納税ではポイントに踊らされるな』

★鹿児島県志布志市からさっそく和牛頂きました! 適度なサシの赤身肉でとっても美味しゅうございました。どうもありがとうございました。
https://a.r10.to/hvm7Fm

★楽天ふるさとでポイント稼ぎながら泉佐野市にふるさと納税するとか、そういうセコいことするなよ! 絶対にするんじゃないぞ!!
https://a.r10.to/hv0Hgd

 僕も株式市場が暴落すると、円で見る資産が目減りして、そういう意味では損なのですが、ちょっとこの数年はいろいろと私生活で忙しかったので、投資関係の仕事をサボっており(ビットコイン関連のトレーディングはかなりがんばりました! PLがピークのときにドヤってメルマガに書いたのですが、その後は損切りするハメになり、ぼちぼちのPLで落ち着きました。だいたいの経緯は人生相談コーナーに書きました)、どちらかと言うと僕のポートフォリオは日本円のウエイトが非常に高くなってしまっているので、一時的には自分が損してでも、世界の株式市場が大暴落して、その勢いで円高になり、不景気になって、たとえば銀座の鮨屋とかが簡単に予約が取れるようになったほうがいいなぁ、という個人的願望があります。しかし、願望と予測は違うものです。これは意識していないと、ついつい自分に都合のいい情報を集めてしまい、予測精度が下がります。
 以上のような僕の個人的なポジションを踏まえつつ、それでも、やはり来年は下げ相場、不況の足音が聞こえてくるんじゃないかな、と思っております。つまり、2008年の金融危機後に10年続く上げ相場が来て、世界的に好景気が続いたのですが、それもとうとう終わるのかな、と。パーティーは終わった、と。理由は3つほどあります。

【理由1 日米ともに景気対策やり過ぎ&金融緩和し過ぎで次のショックに対処できない】

 これは僕の経済本にもくわしく書いたことです。ちなみに、この本を読んでいない人は、年末年始に読むべき本でしょう。主に相場や景気なんかに関係する部分の経済学の基本がコンパクトのまとめられております。大学入試の小論文の素材文に使われたりもしており、ちゃんとしたまじめな本です。これも冬休みの課題図書ですね。

『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』 https://amzn.to/2CB1StL

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