【ツイート転載】「若者の右傾化」論の略史(2024.02.06)

「若者の右傾化」論に疑問を持ってくれることは嬉しいですし、若い世代のデモや反差別も心強いですが、そもそも「若者の右傾化」論というのは、当初は(維新支持層のような)「若者」意識の強い中年右派というよりも、むしろサブカルチャー左派によるものでした。

まず、2000年代に出た、香山リカ『ぷちナショナリズム症候群』(中公新書ラクレ、2002年)や荷宮和子『声に出して読めないネット掲示板』(中公新書ラクレ、2003年)などといった、主としてバブル文化に耽溺した層による若年層の消費文化と「ナショナリズム」を安直に結びつける議論が流行し、主としてサブカルチャー左派の間で「若者の右傾化」なる議論が浮上しました。

次に、2005年のいわゆる郵政選挙の後に出た三浦展『下流社会』で、消費文化の提示する「男らしさ」「女らしさ」ではない「自分らしさ」を出そうとする若年層が自民党支持に走ったのだということが主として左派において「定説」になってしまいました(例えば、金子勝「論壇時評 政治のバブル」2005年9月28日付朝日新聞)。

昨今の維新支持層などの「若者」意識の強い中年右派層による「若者の右傾化」論みたいなものは、いわばそれらのサブカルチャー左派的なものに対する「意趣返し」と位置付けられます。これはロスジェネ論のあたりから(赤木智弘など)見られ、現在に至っています。

「若者の右傾化」論みたいなものは、若い世代を見下したい、とまでは行かなくても適当な素材で「問題」化したいサブカルチャー左派やマーケッターの身勝手な欲望から生まれたものです。そういう流れを忘れてはいけないと思います。

ちなみに『ぷちナショナリズム症候群』に対する左派からの反応は、反権力スキャンダリズム雑誌『噂の眞相』2002年11月号のコラム「撃」が同書を滅多斬りにしていますが、残念ながらこれが当時出てきた左派からのほぼ唯一の批判です。(『「非国民」手帖』(情報センター出版局)に所収)

こちらの同人誌も参照。

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