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ワークショップデザイナーが大切にしている3つのこと

ワークショップデザイナーと日本で名乗っている人たちのなかには、青山学院大学・大阪大学・鳥取大学が実施している「ワークショップデザイナー育成プログラム」を修了したり、何かしら関わっている方が多いです。

私も、青山学院大学の14期の修了生として、2013年から2014年にかけて学んでいました。今回は同じ会社で、今年の春から青学のワークショップデザイナー育成プログラムを受講・修了したみたむらさやかさんと「ワークショップや場づくりで大切にしている3つのこと」をテーマに、それぞれインタビューを行いました。

この記事はWSD(ワークショップデザイナー育成プログラム)修了生 のアドベントカレンダー。WSD Advent Calendar 2021アドベントカレンダー15日目の記事となります。

さやかさんの記事は以下になりますので、是非こちらもご覧ください。

ワークショップデザインで大切にしている3つのこと

みたむらさやかさん(以下、さやか): モックンがワークショップデザインで大切にしている3つのキーワードについて伺いたいと思います。まずじゃあ3つのキーワードを教えてください。

モトキカズヨシ(以下、モックン): 3つのキーワードの1つ目は、「本人にとって意味のある活動」2つ目は「Playful and Rock」そして3つ目は「聞いてもらえた」です。

本人にとって意味のある活動

さやか: 1つずつどういう意味なのかと、何でこのキーワードを選んだのかというのを聞いていきたいなと思います。まず1つ目の「本人にとって意味のある活動」その心は?

モックン: 大人向けのワークショップも子ども向けでも。何かゲームを作ったり、何か対話するときでも。これやる意味ってなんのためにあるの?とか、何のためにこれを設計されているの?とか。参加者が分かると、主体的に動ける。トップダウンではなく、自分ごととして取り組んでもらえる。子どもだけでなく大人も基本同じ。
例えば最初に自己紹介させられるときも、なんでいきなりやるのとか。今年の1年の振り返りをキーワードで書けと言われたけど、何故やるのとか。そのやってる行為自体が自分にとって、どんな意味があるのか、また何のためにこの場にお菓子が置いてあるんだろとか。ここは設計者として、こういう場が作りたいから、いつもと違う日常設計をしているんですよ!と説明されると、本人にとってちゃんと意味のあるというか、本人が納得できる言葉で説明されていること。私はこの点をとっても大事にしているなと思って最初に出しました。

さやか:うんうん。それは何だろう?ワークショップのその事前準備みたいなところっていうよりは、当日の中のファシリテーションの中で意識しているっていう感じなのかな?

モックン: そうですね。なんかオンラインになってからで行くとスライド作成のフェーズかもしれませんね。特にオンラインになってからは丁寧に資料づくりをしていまうね。コロナ前までは、スライドに入れない時もあったかも知れません、言葉だけで言ってた場面もあったかなと。

さやか:なるほどね。それはさ、昔からずっとそういうのを意識していたのか。それとも意識するするようになったきっかけとかがあのかな。

モックン: どうだろうな。なんかでも いきなり。「はい、チェックインして!」みたいなのは、なんか昔から嫌だなと思っていて。

さやか: 自分が参加者で参加する時にってこと?

モックン: そうですね。なんか自分が参加していて。なんかこう雑なファシリする人がいるとざわざわするんです。その人の気持ちに寄り添った言葉が欲しいなと。例えば、仕事終わり、ギリギリでイベント参加したときに、スマホとか、ちょっと仕事のメールを返したいみたいな気持ちの時に、いきなり深い問いとか出されても。なんかちょっとザワザワするなみたいな。

さやか:うんうん。

モックン: 好きな日本ハムファイターズが負けたんでテンションが低いですとか、大好きな推しのアイドルが結婚したんで、ちょっと今日テンション低いんですのような。一度気持ちをこの場に出して、一回モードを切ってくれる関わりがあることの大切さを伝えてくれることと、その場があることが私は安心するし、参加していてもいいなと思うことがありますね。

さやか:はい、はい。確かにね。 参加者として、そこ引っかかると集中できないもんね。

モックン: うん、そうなんです。集中できなくなってしまうんです。

Playful and Rock

さやか: じゃあ2つ目に行こうと思います。これまたなんか語り甲斐のありそうなキーワードですけど、「Playful and Rock」その心は?

モックン: まずは1個とか言いつつ and つけている時点で1個じゃないなと思ってるんですけど。ただ、これはセットだと感じていて。 Playfulって言葉自体は、ワーク自体が楽しいだけじゃなく、なんか楽しいけど、真剣にやれるのような意味が含まれると思っていて。これは設計段階から常に大切にしてるキーワードで。ワーク自体が本人にとってう日常とはちょっと違うもの。短い時間だけど、めちゃくちゃ集中できて、楽しめる感覚を基本的には大事にしててる。ただRockって書いたのは日本語で言うとなんか揺さぶられるって意味でつけました。

さやか:ああ、なるほどね。

モックン: 揺さぶられる。ロックロックされる感じ。すごく楽しい場なんだけども、体を使って踊ったりして。具体的には相手の似顔絵を描きながら、相手のことを知るワークを実施したり。そこでは他己紹介や自己紹介するんですが、その中の問いとして、今までの人生を揺さぶるような、結構シリアスな問いとかも交えておく。

さやか:うんうん。

モックン: なんかこう楽しい中でも、その場じゃないと聴けない問いを入れる。だから。楽しいけども、ちょっとシリアス。だからこそ本人にとって新しい気づきになったり、いつもとは違う自分と出会えたりできることを大切にしてますね。

さやか: なるほどね。なんかさPlayful and Rockの関係が気になるなと思ったんだけど。なんだろう。 Playful だからこそシリアスなことも聞ける感じなのか。揺さぶる問いをシリアスな場面でやると、シリアスな場面でシリアスな問いだと、参加者はしんどいからそこ、Playfulみたいな要素がいるのか。その辺の捉え方ってどうモックンは捉えているのかな?

モックン: そうですね。なんか全然多分論理的には説明できないですけど。なんかワーみたいな。言葉で伝えるの難しいですね。モチベーショングラフで言うと、右肩上がりのような場の雰囲気。 ちょっと日常とは違う自分になるためのデザインとしての没頭している状態ですかね。

さやか: ああ、はい、はい。

モックン: 楽しいと思う感情のリミッターを外すための変容としての場をデザインしていく。私は野外フェスとかも好きなので、フェスとかDJとか、普段ならあんなり歌ったり踊ったりしないでしょうって人も踊っている状態をつくる。

さやか: 普段はそうだね。うん。うん。

モックン: ただ、それだけだとただのお祭りだったりするので。そのままワークショップに持ち込む訳じゃないんですが。そこで行われていることや、その場の状態を学びの場に持ってくることで。何か一人ひとりの変化を起こせないかを考えています。
そこでは Playfulだけでもちょっと足りなくて、Rockだけでも足りなくて。できたら両方できると1番いい設計になるなと感覚的に大切にしています。

さやか: なるほどね。ある意味やっぱり非日常性が高いというか、ちょっといつもと違うモードの体験をしたいときは、モックンのワークショップに参加するといいね。

モックン: Playful and Rockというのは、参加者にとっても受け入れやすい場なんだと私自身は思っていて。その場では、普段出さない言葉や新しい気づきがあって、参加者自信にとっても受け入れやすい場の状態になっていると私は思っているんだなと。
改めて、さやかさんがまとめてくれましたが、Playfulな場を体験できる設計を私が意識しているからこそ、参加した人はそこでの気づきや学びを通じて、日常的にもワクワクしている人が身近に多いんじゃないかなと思いました。

聞いてもらえた

さやか:うん、なるほどね。でもなんか凄くワークショップっぽいキーワードだなあって感じたよ。モックンのワークショップ参加したことがある身としても、実感としてイメージが凄く分かるキーワードだなと思いますね。じゃあ3つ目に行きたいと思います。3つ目は「聞いてもらえた」ですね。

さやかさんと一緒にワークショップを開催した「「2020年、支援者としてのこれから。わたしの”働く”を考える」~LITALICOキャリアcafe vol.3」はこちら

モックン: これはですね。とても迷いました。最近は、さやかさんと研修開発入門という立教大学の中原先生の本を継続に読書会していますが。そのなかで研修設計とデリバリーの章で。参加者に質問が出た時に、その言葉を言い換える、リフレーミングして、これはこういう意味ですよね?と話すことの有効性があることが書かれていて、これを自然とたくさんやっているなと。

さやか:なるほどね。

モックン: 気づかずに結構やってるなと思っていて。どんな場でも参加者の声を聞くという場において、喋った事に対して、手を挙げてくれた、勇気を出してくれたことに。「ありがとうございます」を私は伝えるんですよね。
この場にとって皆さんの学びになるので、 是非当たり前かもしれないことでも、ぜひこの場に声を出して頂けると凄く場が良くなるので お願いしますと。そして喋ってくれた事に対しては、その視点もありますよねと伝えることを、当日のファシリテーションする上では、すごく大事にしているなと思って「聞いてもらえた」を出しました。

さやか:なるほどね。なんかそういう意味ではファシリテーターとして結構そこのキャッチする声のかけ方。そこに対してこう受け取る方がいいとか、やりかたのコツがありそうなのかなと。

モックン: そうですね。オンラインの事例で行くと。オンラインでは、とりあえずチャットをたくさん書いてもらうことを意識していますね。チャットが増えると場が活性化する。今日朝食べた朝ごはんをチャットに書いてくださいと問いを投げたときにも、私はひたすら全部読み上げますね。さっき慌ててアンパン食べたんですね。あそこのお店のパン美味しいですねのような。書いたら誰かが反応してくれて嬉しいとか、そう思ってもらえるようなスタンスを大切にしていますね

さやか:うんうん。ラジオ風だね。

モックン: むしろラジオとかが好きだからなのかもしれないですね。手紙を投稿してラジオで読みもらえたら嬉しいじゃないですか。そしたら、また来週も手紙を出したくなる。空耳アワードの空耳ソングになりそうな曲を日々探して、また手紙を出したくなるじゃないですか。出したくなるし、今度は投稿されたものを読みたくなると思うんですよね。その自分でこの場を作ってる感覚を私は作りたいのかもしれないですね。そして大事にしてるのはあなたも作り手の一人ですよと。リスナーとともに一緒に作っていく感覚かな。

さやか:なるほどね。

モックン: そこが大切な気がしますね。誰も参加者はいないよって。

さやか:ああ、なるほどね!だからこそ、インタラクティブなやりとり自体が、一緒に作っている一人であるっていうことが、感じられる場でもあるし、伝える場でもあるみたいな感じですね。 なるほどね。参加者はいないって面白いね。

モックン: それは私にとって大きい気がしますね。いろいろ副次効果があると思いました。今さやかさんの話を聞いてスタンスだったりとか、想いとして、私も話しながら「みんなでこの場作ろうよ!私だけが作ってるわけじゃないよ!」っていうメッセージを早い段階で伝えるためにも、チャットの文章を読み上げたりする行為を通じて、参加者全員に伝えているのかもしれないですね。

さやか:なるほどね。うん。まあ、最初に導入の時に言ったことがちゃんと実感できるみたいなところでもあるよね。

モックン: 話聞くこと大切ですよ本日は!って言っておいて、お前聞いてないじゃんってなったら本末転倒だったりするじゃないですか。

さやか:そうですね。いやー面白いなあ。ここまで喋ってみてどう?

モックン:ここまで喋ってみて。改めて言語化してこなかったなっていうのが、最初の気づきですね。少なくともオンライン空間で設計する中で、この3つのキーワードが含む場に参加すると自分も¥すごく安心感があるなと思い出しました。
ただ 、オンラインだと逆にPlayful and Rockな設計をする場合、身体知的な要素も場に与える影響が大きいので、最近なかなかできてないのでまたやりたいなというのが気づきでしたね。だからこそオンラインでもPlayful and Rockな設計ってどうしたらいいかなとか。逆にオフラインのときは身体表現を積極的に使うことで参加者が没頭できる方法を考えようという思考が働いているなということに、新たに気づきましたね。

あなたにとってワークショップとは

さやか:うんうん。面白いね。今まとめた感じになったけど、ちょっと聞きたいから最後に質問しようかなと思うんだけど。今のこの3つのキーワードって、ワークショップデザインしている時に大切にしていること、意識していることだと思うんだけど。その3つを含めてモックンにとって、ワークショップってどういうものなんだろうって言うのを最後聞きたくなりました。

モックン:完全に頭の中にスガシカオの曲が流れてる感じですけど。自分にとってワークショップか・・。本人にとって凄く大切なもの、 だけど普段大事にあまり出来てなかったり、相手に伝えられてなかったことを、その場とその周りとの相互作用によって改めて再認識したり、大事にできたりする。言語とか非言語で 伝えられる凄い力を秘めているのがワークショップかなと。

さやか:なるほどね。その自分が大切にしていることを何とか思い出したり、取り戻すみたいなために、そのPlayful and Rckみたいな要素も必要なんだろうね。きっとね。面白いなあ。今の改めて喋ってみてどうですか?

モックン:いや、なんかポカポカしましたよ。また喋りながらふりかっていて、たぶんそういう場に自分も過去参加したんでしょうねおそらく。 だからこそ、それが大切という原体験を持っていて。そのワークショップで救われたとか、ワークショップによって自分の周りの人に変化が起きたとか。そういうのがベースにあるんだろうなって言うのを思い出しました。
ワークショップやっている人は、多かれ少なかれ皆どこかで、原体験みたいなものがあったり、もしくは怒りとか渇望とか、喜びや感動のような感情がその裏にはあるんだろうなと。その上で、ワークショップや社会構成主義のような考えに、惹かれたり、日々大切にしているんだなと。

Special thanks:みたむらさやかさん

Zoomインタビュー中の風景




ありがとうございます。ちょっと疲れた日にちょっといいビールを買おうと思います。