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有馬記念2023 最終見解

絶対王者がターフを去った今、混沌とする競馬界に新時代の風を吹かす3歳世代のエース。暮れの中山で偉大なる父の血が騒ぎだす

◎ソールオリエンス

夢は私の夢はソールオリエンスです。

彼を紐解くために、まずはクラシックを回顧します。

▪︎皐月賞

今年は重馬場ながら1000m通過が58.5のハイペースで流れ、近6年では最も速い通過タイムを記録した。2017年が良馬場で58.4と考えれば明らかに速い事がわかる。



ただ1000m以降は
12.4 - 12.5 - 12.7 - 12.5 - 12.0
と緩み、最後だけ加速するラップを踏んでいた。ラスト200mは他馬がバテた所を差し切ったので、加速ラップになっているが、全体を通して見ると

一瞬のキレよりも持続的な末脚を使う差し馬

という事がわかる。自身が動き出したのは500m辺りで、コーナーは外に膨らんだが差し切れたのは
他馬が前半1000mで異例のハイペースに付き合わされた
大雨により内馬場が死んでいたので、多くの馬が外を選択した=他馬も同じような距離ロスをしていた
事が挙げられる。



【結論】
ここは自身もロスな競馬をしているが、他馬は同じかそれ以上のロスと消耗をしていたので、相対的に向いた。
雨や急坂を苦にしない所は、父キタサンブラックのパワーやスタミナ、母父Motivatorの欧州的な底力が活きた。

▪︎東京優駿

巷で散々騒がれているのは、優駿牝馬に比べてタイムが2秒も遅いため、3歳牡馬の世代レベルを疑問視する声。

そこでオークスとダービーのラップを比較する。
(上 オークス 下 ダービー)

オークスは1000m〜2000mまで12.0を刻み続ける緩みのないラップだった事がわかる。
逃げた馬がマイル路線で活躍しているライトクオンタムで、道中で緩まず淡々とラップを刻む事を調教されているため、長距離でもそのような刻み方をした。

一方ダービーは1000m〜2000mまで山型のラップの刻み方をしており、道中ダレた事がわかる。
逃げた馬が中距離路線で活躍していたパクスオトマニカで、テンから速い逃げは出来ない馬が逃げてしまったため、レース中盤が緩み、最後の直線だけ加速する瞬発力レースになった。
また本来逃げる予定だったドゥラエレーデが落馬した事により、押し出される形で逃げた事も、レース全体の時計を遅くした要因である。

時計が出た=レースレベルが高い
というのはあながち間違いではないが、レースを速いペースで引っ張るペースメーカーがいればある程度速い時計は出る。

今年の天皇賞秋はレコードタイムを記録したが、前半1000m通過が57.7と超ハイペース。
その前に秋天のレコードタイムを持っていたのはトーセンジョーダン。前半1000m通過が56.5。

これらは馬自身の最高速度は決まっているが、レースの流れによって、レース全体のタイムは前後するという事の証明だと思う。

今年のダービーは本来逃げる予定のドゥラエレーデが落馬し、押し出される形で逃げたパクスオトマニカが中盤緩むラップを作った事で、ラスト600mの瞬発力勝負になり、レースタイムが遅くなった。ダービーで3F33.5を使えば例年なら上がり最速タイムだが、今年の3F最速は33.0で、瞬発力勝負になった事を証明している。

勝ち馬のタスティエーラは、ハイペースで先行した皐月賞で2着に粘るスタミナ豊富な持続力タイプ。2着のソールオリエンスも皐月賞のラップでわかるように、スタミナ豊富な持続力タイプ。その2頭が苦手な瞬発力勝負のダービーで結果を残した事は賞賛すべき。

【結論】
両頭ともダービーの瞬発力勝負は不向きにも関わらず、結果を残している時点で、同世代では抜けた力を持った存在である。

▪︎菊花賞

条件戦から連勝で来たドゥレッツァに最後の1冠は奪われたが、2、3着はタスティエーラ、ソールオリエンスでやはり2頭は世代で抜けた存在である事を確認できた1戦。

菊花賞の舞台である京都競馬場は、馬場改修が行われて、外回りの3コーナーの下りのアール、4コーナーの出口が緩くなった。
これにより内を通る馬が4コーナーを回って直線に入る際、減速を抑える事ができる様になった。

過去の京都は下り坂で加速し、その加速を利用して大外から差す競馬が主流だった。しかし改修後は内を立ち回っても、減速なく直線に入れる様になったので、むしろ内ラチの方が有利なコースになった。

今年の京都外回りで行われたG1
天皇賞春



エリザベス女王杯

 天皇賞春はタイトルホルダーがハイペースで飛ばしたため、内ラチの先行馬は失速しているが、勝ち馬のジャスティンパレスは最内枠からロスなく運んで、直線だけ外に出す競馬。16番のシルヴァーソニックが3着だが、余力のあった勝ち馬とは0.6秒も離されている。
 エリザベス女王杯は更に顕著で、内を立ち回った馬のワンツースリー。
改修後の京都外回りは明らかに内有利だという事がわかった。

それをご理解いただいた上で今年の菊花賞のソールオリエンスの位置取りがこちら

酷い!酷すぎる!
終始大外を回して、タスティエーラを徹底マークしていたソールオリエンスに対して、勝ち馬ドゥレッツァは17番枠ながらスタート切ってラチを獲得。その後ペースを落として最後まで内ラチベッタリでの勝利。

ちなみに天皇賞春とエリザベス女王杯を勝ったのはルメール騎手で、菊花賞を勝ったのもルメール騎手です。偶然ではなく、必然なんですよ、新生京都競馬場の勝ち方を知っているから。
京都競馬場を作るときにも当然造園家の方や一流騎手など様々な知見から競馬場を作っています。競馬は農業です。

ルメール騎手は栗東所属に対して、横山武史騎手は美浦所属。横山武史騎手の2023年重賞勝利は滞在の北海道もしくは関東圏のみの勝利で、関西競馬場の経験や知識が明らかに不足していた。
ルメール騎手は一流騎手で常に一流馬に乗っているので、主要4場は万遍なく走れる。

【結論】
馬の力で負けたと安易に思わない方が良い。

『ソールオリエンスのクラシック総評』
一度も自分の能力を最大限発揮していない


▪︎乗り役の過信

前述した通り、菊花賞は乗り役の経験不足が露呈したレースになったが、それ以外も頭を抱えるレースがある。
後ほど記述するが、何故横山武史騎手は大外を回す競馬しかしないのだろう?全レースを見て確信したのが、乗り役がソールオリエンスの力を過信しすぎている。

まずこの馬はコーナリングが下手だ。それを露呈したのが2戦目の京成杯。

青帽子を被ったのがソールオリエンスだが、コーナーの加速時にスピードを制御できず、大きく外に膨れてしまっている。
相手は弱いが、それでもこのロスを挽回する能力の高さを見せた。

レース後のコメント

1着 ソールオリエンス(横山武史騎手)
「馬はかなり能力を持っています。調教で2回乗りましたが、調教のときは右に倒れる仕草があったので気をつけていたのが、今回は逆に他馬を気にしてか左に大きく膨れてしまいました。他馬に迷惑をかけてしまったので申し訳ない気持ちでいっぱいです。

調教の時からとても走る馬だと思っていましたし、まだまだ緩いのでこの馬場が心配ではありました。3コーナーで手応えが怪しくなりましたが、今日は能力だけで全てカバーしてくれました。改めて強い馬だと認識できました。馬を気にする面もあり、まだまだ全体的に緩い馬なのでそのあたりも含めて、精神的にもフィジカルも成長が欲しいですが、期待していい馬だと思います」

 次走の皐月賞

レース後のコメント

1着 ソールオリエンス(横山武史騎手)
「馬場がかなり特殊だったので、外の馬場を走りたいと思っていました。スタートで思った以上に行き脚がつかず、もう少しポジションを取る予定でしたが切り替えてこの馬のリズムで運ぶことに決めました。この馬の強さは僕が一番知っているので、負けるとしたら展開のアヤだったり、もっと強い馬がいたりした時かなと思いましたが、状態は言うことないぐらい本当に良かったですし、返し馬から自信がありました。

(この馬の強さはどこか?の問いに)とにかく走る、走る馬です。とてもいい馬です。久しぶりにGIを勝ちましたし、これを超える喜びはないですね。日本ダービーは2年前も去年も、その前も良い結果を得られていません。僕は間違いなく1年ずつ成長しているはずなので、技術を上げた姿を、さらに大きい舞台でこの馬と一緒に皆さんに披露することができたらなと思います」

 皐月賞時点で同世代では抜けた存在だと認識した様子。

 次に問題なのが、ダービー後休み明けを挟んだセントライト記念

レース後のコメント

2着 ソールオリエンス(横山武史騎手)
4コーナーで振られて、2馬身くらいロスがありました。それでも勝てるかなと思いましたが、勝ち馬が強かったです。残念ではありますが、格好をつけてくれたように、悪い内容ではありませんでした。体型以上に距離が保つことが分かりましたし、本番でリベンジできるようにしたいです」

確かに4コーナーでは他馬に寄られる不利があったが、それ以前に14番枠から大外を回して差し切ろうとしている。
中山はコーナーで外に振られるので、内をロスなく立ち回った方が有利だ。そのロスがありながら、勝てると感じていた鞍上。どのメンツ相手でも大外一気を敢行するのは"鞍上の過信"と言えるだろう。

 そして菊花賞の惨劇へ続く

レース後のコメント

3着 ソールオリエンス(横山武史騎手)
「やりたかった競馬は出来ました。賢い馬で、折り合いはつきましたし、3コーナーから4コーナーでタスティエーラを封じ込めながら進められました。最後の4コーナーを回る時の手応えも良く、勝つ勢いで回ってくることができました。直線もいい手応えでしたが、爆発力が無かったのは、距離が長かったのかもしれません。距離をこなせなくはないですが、若干長かったように思いました。今回は全力を発揮してくれました。馬は頑張りました」

 実際3000mを走り切るスタミナがない訳ではない。セントライト記念のコメントから本人もわかっているはず。
3000m以上の距離を走らされた距離ロスと、現行の京都外回りでタブーの大外一気を敢行したのが大きな敗因。

確かにソールオリエンスは世代トップクラスの実力がある。しかし中山や京都外回りなど、コース形態の不利を受けやすいコースでは、鞍上の技術も問われる。

その点今回は日本のリーディングジョッキーである川田騎手に乗り替わるのは、トリッキーな中山においてプラスの材料になる。
川田騎手は先行する競馬を好み、ハープスターやリバティアイランドなど世代で抜けた能力を持つお手馬以外で追い込みをする事は考えにくいため、おそらく先行するだろう。

 そこで川田騎手が過去の有馬記念で取った位置取りを見てみると

2022年ディープボンド3-3-2-2
2020年オーソリティ 2-2-3-5
2019年ヴェロックス 8-8-9-9
2017年カレンミロティック 4-4-3-6
2015年ラブリーデイ 6-6-8-6
2014年エピファネイア 2-2-2-1
2013年ダノンバラード 3-3-3-2
2008年アドマイヤモナーク 14-14-13-11
2007年デルタブルース 5-5-6-7

ほとんどの馬で先行しており、4角10番手以下のパターンは1回のみ。手塚調教師も、先行競馬を示唆しており、新たな一面が見れる。

中山2500mの1枠1番はロスなく立ち回れ、本来の力を発揮しやすい条件。過去ロスのある競馬しかしてこなかった馬が、初めて本来の力を発揮する可能性がある。
また3歳馬の斤量ハンデや菊花賞からの短縮などの好材料は、実力以上のパフォーマンスを期待できる。

有力馬が外枠に集まった今回は内枠を引き、ロスの少ない競馬をするであろうソールオリエンスを本命にします。


危険な人気馬

▪︎ジャスティンパレス

金曜日現在、1番人気想定となっているが、みんな正気か?

確かに天皇賞春勝ち馬だし、イクイノックスに対して宝塚記念では0.2差、天皇賞秋では0.4差と絶対王者に近づいた1頭と言えるだろう。しかしレースの中身を分析しなければ、本当にこの馬が有馬記念に適性があるのか、また鞍上は武史でいいのか。

まず年明け初戦に阪神大賞典に出走した。ライバルと言えるのはボルドグフーシュやディープボンドくらいで、14頭立てながら非常にレベルの低いレースだった。

2023年 阪神大賞典

レベルの低いレースらしく、逃げ馬に競りかける馬もおらず、前半1000m通過が65秒と例年と比べて特に遅い。

2022年 阪神大賞典
2021年 阪神大賞典

ディープボンドが連覇した2戦と比べて全体的に緩み過ぎているのがよくわかる。
2021年は重馬場だったので、時計以上にスタミナを要する展開とラップだったのに対し、2023年はラスト1Fまで11秒台を使う瞬発力勝負になるいわば真逆の展開。
今年ディープボンドが5着に負けた理由はここにある。

瞬発力≠有馬記念

今年の阪神大賞典は有馬記念に直結しない非根幹距離重賞。

次走の天皇賞春。確かにディープボンドを突き放して勝っているが、京都外回りは内をロスなく回る方が有利になったとソールオリエンスの時に散々話している様に、1枠1番の枠利があった。

2023年 天皇賞春
2020年 天皇賞春
2019年 天皇賞春

過去京都で行われた春天とのラップの比較。2020年は1600m〜2000m地点で加速して、1度減速する特殊な踏み方をしているが、2019年を見ると、2000m地点からレース全体のペースが上がる持続とまではいかないが、早仕掛けのレースになっている。
勝ち馬のフィエールマンは7-5-4-1と位置取りをあげながら進んでいるので、自身も早仕掛けラップを踏んでいたと言える。

今年はタイトルホルダーが2000m地点までペースを落とさずに運んだため、ペース自体は流れたが、坂の登りに入る前に失速したため、各馬の仕掛けはそれほど早く行われていない。2400m地点の区間ラップは13.2とかなり遅い。
 これを見て思ったのが、ジャスティンパレスは溜めて差す競馬が得意な典型的なセカンドクラスのディープ産駒である。確かに坂の下りから進出しているが、動き出しのタイミングからは真のロングスパート勝負とはいえず、どちらかと言えば瞬発力勝負になったのが今年の春天。

瞬発力勝負はディープ産駒に分があるのに対して、2着のディープボンドを最後突き放す感じがなかったのは、能力の頭打ちだと判断できる。

宝塚記念

2023年 宝塚記念
2022年 宝塚記念

2022年は急な1〜2コーナーですら緩まない、圧倒的先行馬不利の持続ラップだが、2023年も先行馬が飛ばす展開になった事で、中盤の緩みが少ない持続ラップになった。2023年の異質な所は、インコースが完全に死んだ馬場になっており、過去稀に見る外伸び決着になった事。

2コーナー辺りで1、2着馬が最後方に位置取っていた宝塚記念はないだろう。

この直後鞭を落とす

鞭を落としたのが残り300m付近なので、満足に追えなかった可能性も否定できないが、

イクイノックスも進路を塞がれる不利を受けたスルーセブンシーズも、この地点までステッキを使って追っているわけではない。

結局10秒後にはスルーセブンシーズがこの位置まで来てるのだから、外伸びや不利を考えるとパフォーマンスは明らかに下。別にジェラルディーナの様に捲ってきたわけでもなく、外へスムーズな進路取りで直線脚を使って3着なら特段強いとは思わない。
むしろ恵まれた展開、馬場で先着を許した上に、早仕掛けをしたジェラルディーナを捉えるので精一杯だったので、非根幹距離への適性はそこまで高くないと感じた。
スタミナよりも瞬発力に優れたディープ産駒。

 天皇賞秋

ジャックドールが1000m通過57.7、1600m通過が1:32.1とマイルのペースで逃げたため、先行馬には相当負荷が掛かったレース。

怪物以外の先行馬は沈んで、2、3着が惰性で追い込んだジャスティンパレスとプログノーシス。どちらもディープインパクト産駒。
結局軽くて上がりの出せる馬場と展開で来るんだから、本質的なスタミナパワーが問われる有馬記念は合わないんじゃないかと、疑念が生まれる。

①春2戦のパフォーマンスは得意な展開とペースだった(相手も格下)(ディープボンドが苦手な瞬発力を求められた)

②馬場と展開が明らかに向いた宝塚記念の低調なパフォーマンス(非根幹距離適性の疑問)(不利のあったスルーセブンシーズに完敗)

③惰性で上がり最速をマークした天皇賞秋(差し馬に展開が向いただけ)(結局はキレるディープ産駒)

※フィエールマンと同じにしてる人がいるが、彼は天皇賞春で示した様に、ラップの加速と共に自身も早仕掛けをして4角先頭にいるくらい、高い持続力とスタミナを証明していた。
またラジニケから菊花賞という異端ローテで勝ち切るようにスケールの大きさも違う。東京でもクロノジェネシスやアーモンドアイと言った名牝と差のない競馬を演じている。そもそも能力を比較出来るほど、ジャスティンパレスにスケールやレース内容の強さはない。

【結論】
スタミナやパワーがあるタイプではなく、軽い馬場やラスト3Fで時計が出やすい展開に強いディープ産駒。有馬記念には合わない。

引用 netkeiba.com

相手に関しての詳しい考察は別途ツイートします。ちょっと長文書くの疲れました。

◯タスティエーラ
▲ディープボンド
△ライラック
迷タイトルホルダー

で考えています。

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