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アニメーター作業スピードアップ【コマ撮り】

どうも篠原健太です。コマ撮りアニメーターやディレクターをやっています。YouTubeチャンネルも運営中です。

この記事ではコマ撮りアニメーターの作業スピードを速めるポイントについて書いてみたいと思います。参考にしていただければ幸いです!


コマ撮りアニメーターの作業スピード


コマ撮りアニメーターを職業にすると、求められる画的なクオリティーを超えることと同時に、締め切りを守らなくてはならない。締め切りを守るのは社会人として当たり前。しかし、そもそも受ける仕事の量がオーバーしていることもある。自分の仕事のスピードは自分でしっかり把握しておかなければならない。

今回は誰にでもできるアニメート作業スピードアップのポイントを書いてみようと思う。Animistスタッフにも常に作業時間を記録するようにしてもらっている。仕事としてやるからには自分自身の作業スピードをわかっておいて欲しいからである。

コマ撮りアニメーターのアニメートスピードは人それぞれで、速い人と遅い人とは2倍以上の時間差があるように思う。もちろん作業が速くても仕上がりが悪ければダメだが、願わくば速くなりたいものである。

コマ撮りアニメーターの作業を2つに分けるとしたら思考作業肉体作業がある。思考作業とは、演技を考えたり、段取りを考えたり、「ポーズ」の良し悪しを判断するなどの作業である。肉体作業とはアニメーターが手を使って物を動かすなど物理作業のことである。

1コマ1コマのアニメートに時間がかかる人はまず、後者の肉体作業に原因がないか振り返ってみてほしい。アニメーター自身の体捌きが遅くはないだろうか。例えば、シャッターを切るときに避ける動作が遅い。キーパッドのタイピングが遅い。モニターのチェックの視線移動が遅い。などなど。

これを改善して、シャッターを切るときに避ける動作を素早く、キーパッドのタイピングも素早く、モニターはできる限り最短距離で見られるとこに置く。自分の身体を素早く、そして最短距離で動かすだけで無駄な時間は削れる。なんだそんなことかと思われるかもしれないが、これが意外と疎かにできない。モニターの位置が悪いと手元からモニターへの視線移動に時間がかかったり、ひどい場合は首を痛めたりする。そんなのほんのちょっとの差だよ、思うかもしれないが、何百回何千回と繰り返すのだからチリツモである。なにも、100m走のタイムを1秒短くしろと言っているわけではない。ちょっと工夫してきびきび動くだけだから誰にでもできる。

さらに、きびきびと手を動かしていると、頭の回転も良くなる。思考作業も捗るのである。余談だが、アニメート中は何を考えているのか?とよく質問される。僕は色んなことを考えている。といっても余計なことは考えていない(あまり、たぶん)。今のカットを成功させるための色んなことを考えているのだ。例えば「役になりきって考える」「観客(視聴者)の立場になって考える」「演出の立場で全体から俯瞰して考える」と三つくらいの目線で考えなくてはならないはずだ。

また、数学的なコマの先読みもしている。例えば今のコマがこの位置なら、先のコマはこうなっていくだろう、といった「動き」の未来予測だ。少なくとも2パターン、多いときは5パターン以上の選択肢が毎コマあり、それぞれの未来予測の中から1番ベストなものを選んでいく。この選択肢の数はアニメーターの引き出しとも言うべきか、経験から出てくるひらめきである。

ひらめきは人形がきっかけとなる場合もある。「人形に動かされる」「人形が動きたいように動かす」という発言をするアニメーターがいるが、これは何もメルヘンチックな話ではなく、人形の制約を受けるコマ撮りにおいては当然である。環境によってアニメーター側が意味を見出すのだ。

ともあれ、人間は身体の動き、特に手のスピードに連動して、思考のスピードも変わるように思う。

まとめると、まずアニメーター自身が身体をきびきび動かすこと。最短距離で作業できる環境づくりをすること。小さな積み重ねが大きな時短につながり、おまけに頭の回転も良くなる。

私のコマ撮りアニメーターの師匠、峰岸裕和さんが昔テレビ番組に出演されたとき「コマ撮りに大事なのは勢いである」と答えていらっしゃった。この真意はご本人に伺わなければわからないが、今回の話に通ずるものがあるのではと思う。

以上。

追記(2024.5)

その後、峰岸裕和さんに「コマ撮りに大事なのは勢いである」の真意を伺う機会がありました。答えは「速くやんないと仕事終わんないだろ」とのことでした(笑)峰岸さんはとても作業が速くて上手いという評判のアニメーターで、私から見るに、好奇心から発する動かしたいという情熱が内在していながらも、見切り発車をする事はせずとても合理的に仕事をする人だという印象です。

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