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SaaSビジネスサイドでのプロダクトとの向き合い方 #SaaSLovers Day3

本noteのテーマ
会社がプロダクト起点な組織文化であるために、ビジネスサイドで働く身として持つべきスタンスを改めて考えてみます。このnoteはこれまでの自分に対しての反省文です。これを5年くらい前の自分が理解しておけば、もっといい仕事ができただろうなと思う、そんな話です。

新卒で入社した会社は、大学生の自分はよくわかっていない状態だったけれどCRM系のHorizontal SaaSを提供する会社で、僕は7年ほどセールス/カスタマーサクセス/BizDevとして働いてきました。その後転職した会社でも約2年、インサイドセールス〜カスタマーサクセスとしてSaaSに関わってきているので僕の社会人人生=SaaSという状態です。

この4月から数年ぶりにCSを担当するようになって、改めて本気で「プロダクトの価値」というものを見つめ直すことが増えました。この半年を通じて、ようやく自分の中で”SaaS提供を行う会社のビジネスサイド人材としてあるべきスタンス”が言語化できるようになってきました。

今回、 #SaaSLovers #秋のブログ祭り というアウトプットの機会を得たので、SaaSのビジネスサイドで働く身としてどういうマインドでどう行動すべきか、ということを書いてみようと思います。

SaaS企業のすべての土台はプロダクトということ

どのような形であれSaaSに関わっていれば「プロダクトこそが会社の土台」ということを否定することはないはずです。一方、日々の業務となると、目線がどうしてもミクロになって、個別のお客様の要望になんとか応えて受注したりCS活動を行っていることも多いんじゃないかと思います。

どうにかして売上目標を達成させるため、なんとか顧客の解約を阻止するため、時にプロダクトで解決できない領域をプロダクト以外、例えば人力というソリューションで解決する選択をとることは少なからずあることです。特にスタートアップにおいてこの状況は「生きるか死ぬか」という選択なので避けられない現実です。

それぞれの持場で、各々が最大の努力をすることはもちろん尊いことではあるし、重要なことです。ただ、僕らが本来行うべきは提供するSaaSを通じて”1ではなくn”の顧客の成功を創出することのはずです。正直なところ目の前のお客様だけであれば人力を通じたサービスでも一定の満足は得られるかと思います。ただnを見据えたとき、その土台にあるのは間違いなくプロダクトであり、常にプロダクトを改善していく文化、プロダクト起点のマインドが根付いているかどうかは非常に大きな問題です。

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組織に働く力学が問題を難しくする

どの会社も気持ちを込めてプロダクトを創り、とても大切に育て上げてきています。ただ僕が周りの人の話を聞く限り、どんな会社でも「なんか自分と向いている方向が違うな」と感じるシーンはいずれかのタイミングで必ず訪れています。どうして最初はみな共通していたプロダクトへの理解に歪みが生じてしまうのか。これも当たり前の話ですが、組織に働く力学が大きな原因となって引き起こされていると感じます。

例えば戦略上のトレードオフで何かしら意思決定がなされた際、その意思決定に至ったプロセスが理解できないと「セクショナリズム」や「個人間の情報の格差」は簡単に生まれます。

こういったズレが繰り返し発生し放置されていると「このプロダクトによって、誰がどういう価値を得ることができるのか」といういちばん大事な顧客への理解が組織内でどんどんバラバラになっていきます。

そうして営業担当は売上をあげないといけないのでもともと想定されていない利用方法で契約を取ってきたり、開発担当は疑問に思いながら作った機能の保守に追われるようになったりします。こうなるとどんどん当初はうまく噛み合っていたプロダクト起点な組織文化すらも失われることになります。

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ビジネスサイドとしてあるべき姿と僕の反省

上記のような前提に立って考えたとき、数年前の僕の目線はとても一方的だったなと反省しています。

「この機能は絶対に必要だ!」と主張はしても、それが会社のストラテジーのなかでどういう貢献を行うものなのか踏み込んで説明できていなかったり、それぞれの組織の現状(リソースとか)を鑑みたときの全体優先度を考慮しきれてなかったり。ただのワガママな人だったと思います。

そして、今の僕がSaaSのビジネスサイド人材として持つべきだと考えているマインド・スタンスが以下の3つです。

・ 高品質なプロダクトフィードバックに努める
・ 会社のストラテジーを理解し正しくプロダクトへの期待値を持つ
・ 作られたプロダクトはレガシー化することへの理解を持つ

高品質なプロダクトフィードバックに努める

結局、ほとんどの問題は「プロダクトと顧客の間の問題が見えづらくなってしまうこと」が原因で発生していると感じます。
シンプルな例を挙げると「使いづらい」という言葉を一つとっても、UIの話なのか、機能が欠けていてプロダクト内で完結できないという類の話なのか、ぱっと開発サイドの方々が判断できるかというとそうではないでしょう。発生しているイシューを言語化し、社内にフィードバックすること、これは常に顧客に向き合い共に汗を流しているビジネスサイドが責任を持って行うべきことです。

この際、顧客からの声をただそのまま伝えるということではない、というのは重要なポイントです。顧客は現状のソリューションを前提にして問題提起をしてくださります。ただし、その顕在化しているイシューをどうプロダクトに昇華させるかはまた別の問題です。

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よく聞くこのフォードの名言は本当に重要だと思っていて、本質的に解決すべきイシューは何かを特定しその機能を用意することで初めてプロダクトの質があがっていくのだと思います。だからこそ、僕たちは顧客が抱える課題の裏にある背景まで、丁寧に伝える意識を持つことが大切です。

会社のストラテジーを理解し正しくプロダクトへの期待値を持つ

プロダクトは会社のストラテジーに基づいて変化していくもので、それができるのがSaaSの価値の1つでもあると思います。そして会社のストラテジーに沿わないプロダクトのアップデートは(一定のニーズがあると見込まれても)あるべきではない、この視点も忘れずに持っておくべきだと思っています。

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いきなり話が飛びますが狩野モデルという、サービス品質に関する考え方があります。このモデルは品質には「魅力的品質」「一元的品質」「当たり前品質」の3種類(※正確には+2種類あるんですが説明を割愛します)存在するとし、それぞれの品質の充足度合いでユーザーの満足度にどう影響するか、をまとめたものです。

市場のアテンションを取ったり競合他社から飛び抜ける必要がある場合は魅力的品質の向上に着目することになるでしょうし、利用はされているものの解約も多い場合、プロダクト実態として当たり前品質に届いておらず、喫緊でそこを改善しなければならない、ということもあります。

会社が持っているストラテジーの中で、今優先して着手することになるポイントはどこなのかを意識しておかないと、開発や経営、顧客とのコミュニケーションにもズレが出てきます。(そして何より自分が一番ストレスを感じます。)

これはプロダクトのアップデートを諦めたり、フィードバックを遠慮をするということではなく、前提となるストラテジーを理解したコミュニケーションとそうではないコミュニケーションではその結果に大きな変化がでてくる、ということです。

作られたプロダクトはレガシー化する理解を持つ

そして3つ目。これは僕の一番の反省ポイントでもあります。

提供されて数年以上経つSaaSを提供している会社に努めたことがある人ならば「なんでこれだけの改修にこれだけ時間が掛かるのか」という疑問を持ったこともあるのではないかと思います。この問題は、様々な機能改修が進んだ結果、何かを新たに開発する際に以前の改修が足枷になったり、影響範囲調査に時間がかかったり、システムがレガシー化していることが大きな原因です。

もちろんこれは誰も望んだ結果ではなく、その当時は必要で、その時の自分たちのベストで作られているということは間違いないはずです。それは仕方がないし、過去を否定しても何も生まれません。今の目線で考えるならば、これから機能を実装するということはこのプロダクトのレガシー化への責任を持つということです。

ビジネスサイドとして顧客の声に基づく要望は積極的に展開していくべきですが、そこに加えてこの目線を持って、レガシー化したシステムをより良くするために戦ってくれている開発サイドへのリスペクトを忘れないこと。これはプロダクト起点な組織でビジネスサイドと開発サイドが信頼関係を維持していくうえでとても大切なことだと思います。

# 反省文のまとめ

会社の組織というのは構成する一人ひとりによって成り立つものです。腐ったみかん、という言葉がありますが誰かの(間違った)強い意思があるとそれでこの組織文化というのは簡単に崩壊してしまうのではないかと感じています。そして今振り返ると、おそらく以前の僕は完全にこの腐ったみかん状態だっただろうなと思います。

SaaS企業の中心にあるのはもちろんそのSaaSであり、正しくより良く伸ばしていく・価値を広く届けていくためにはプロダクト起点な組織文化が必要不可欠です。SaaSに関わるビジネスサイドの人材として、持つべきスタンスをしっかり持って日々のコミュニケーションを取りたいなと考えているという話でした。

明日の #SaaS Lovers の予告

明日は僕の友人で、SmartHR関西支社でパートナーサクセスを担当している後藤くんのポストです。

パートナーサクセスは「パートナーとエンドユーザーのサクセスを創る」×「パートナーからの(一時的でない)コミット」という点が非常に重要で、だからこそめちゃくちゃ難しい領域だと思っています。正直なかなか成功事例が聞こえてこない分野だけど、だからこそこれをやりきれる会社は強いはず。色々と悩みながら進めているようなので、彼のnoteも楽しみです。

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