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小樽の鯉のぼり。

大学生のころはこの季節が憂鬱だった。

大学には7年くらい通って結局卒業することはなかったわけで、友だちもおらず楽しみもなく。私が通った大学は小樽にあったから札幌から通うわけなんだけど、電車で約45分かかる。

小樽に向かうために札幌を出発してしばらくすると銭函ぜにばこという地域を通過する。ここから先は荒れる日本海沿いに線路が面していて、小樽に着くまでの間、目の前には北の日本海のパノラマが広がる。


電車の中にいる観光客が背後に広がる日本海に気づかないという姿を何度も目撃した。その度に私は日本海にスマホのカメラを向ける。すると観光客は「わぁ〜」と気づく。北海道流のおもてなし。


小樽に入ると駅は3つあって、小樽築港ちっこう駅、南小樽駅、そして小樽駅が終着。私は小樽駅で降りる。


この季節、南小樽駅と小樽駅のあいだの川には鯉のぼりがかかっていて、それもたくさん。電車の中から鯉のぼりを見ていた。たぶん春を少し過ぎたころだと思う。

たまらなくいやだった。


だって普通の小樽の大学生がこの鯉のぼりを見る回数は4回だ。大学は四年制だから当然。でも私の場合は私が悪いんだけどこの鯉のぼりを7回見る必要があった。マジでだるかった。


鯉のぼりって子どもだったら喜ぶのかなぁとも思って、そっか、このころの私は子ども心もない余裕のない男だったんだなぁと思ったんだけど、よくよく考えたら子どものころ鯉のぼりを見て喜んだことなんて、ただの一度もなかったことに気づく。



大学はきちんと4年で卒業しようね。


〈あとがき〉
子どもの日です。端午の節句になるとどうして子どもの健やかさを祈ったり祝うんでしょう。鯉のぼりはそもそもいつからあるんでしょう。屋根より高い鯉のぼり、って歌もありますが「いらかの波と雲の波」のほうの鯉のぼりを知ってるとインテリ感が出るかもしれません。今日も最後までありがとうございました。

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