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【お話16 私がふらつく】

スマホと同じ高さくらいとヒールを履いて歩いていた。
ドン・キホーテの片隅。
まったく興味のないブランド物のコーナー。
化粧品売り場を歩きながら、アイシャドウのパレットを眺める。
足元が、ふらつく。

魔法少女のおもちゃを買いたいと思った。
変身した後の彼女たちは、高いヒールで、走って跳んで、戦う。
好きな格好で、好きなように振る舞い、自分の信じていることを口にする。

今の私は、好きな格好でもないし、好きなようにも振る舞えない、心にもないことを口にするしかない。

ヒールが歪んだ気がする。
気がするだけ。
スマホが揺れる。
先輩が迎えに来たらしい。
ああ、今日も私は私を見失う。

お前はもっとできると、教えてください。