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感想「月の影 影の海」(小野不由美 作)

こちらの感想ではネタバレは極力入れません。
ぜひ、未読の方に興味を持ってもらえたらと思います。配信アプリ「ツイキャス」で、この本の紹介しながら、配信を見ている方とおしゃべりもします。
紹介する内容、ピックアップする点は基本的に記事と同じです。
しかし、ライブ配信なので、予定調和にはなりません。

配信予定日時

10/16に変更します。

https://twitcasting.tv/c:eureka0202


「裏切られてもいいんだ。裏切った相手が卑怯になるだけで、わたしの何が傷つくわけでもない。裏切って卑怯者になるよりずっといい」(下巻 p84)

あらすじ

平凡な女子高生、中嶋陽子。赤い髪をした彼女の元に、ある日突然「ケイキ」と名乗る金髪の男が現れる。見たこともない獰猛な生物に追われるうちに、陽子は日本ではない世界へと流れついてしまう。ここはどこなのか、手がかりは「ケイキ」という男と、彼から託された剣のみ。陽子は見知らぬ世界で、どう生き抜いていくのか。課せられた天命とは。


感想

正直、私があらすじを書くのは、少し恥ずかしかったです。
超がつくほどの有名作。
ファンタジー好きなら、誰だって一度は通る、と言われている作品の一つだと言っても、過言ではないと思います。
「十二国記」シリーズは現在、単行本では、上下巻を1冊として、10冊が発表されています。
最新作は10月12日に発売されたばかり。
まだ私は入手しておりません。

名前や用語の中には、中華ファンタジーらしい要素もありますが、どの時代がテーマということもなく、「十二国記の世界」というもので成立しています。
正直何度読んでも、国の官吏たちの位の違い、街の規模の違い、土地名…私は、覚えることができません。
もしかしたら、そこで読む手が止まってしまう人もいるかもしれません。
しかし、所詮自分は「蓬莱(作中用語:日本のことを指す)」から来た「海客(作中用語:蓬莱から災害でやってきてしまった人のことを指す)」だと思えば、わからなくても仕方ないか!と思いながら読み進めることができます。

陽子は異世界についた時から、 剣を振るうことができ、かつ言葉に苦労することはありません。異世界ファンタジーとしてはあるあるですが、その理由はきちんと説明されています。
かと言って、彼女はチートでもなんでもないし、『月の影 影の海』の上巻は、痛い思いをして、人に 裏切られて、と苦しい思いばかりが続きます。
下巻に入っても、無双ということはなく、ひたすら血に塗れ、歯を食いしばり生きていくことになります。

ここで、「単語や地名がよく分からない」という文章が 効いてきます。
読み手のアドバンテージは文庫本の最初のページに少し載っている国と土地の名前が書かれた図のみ。命の危険こそないものの、あとは陽子と同じ、「何もわからない」のです。

だからこそ、陽子が「裏切られても構わない」と言って立ち上がる時、読者は心を打たれるのだと思います。

物語の中でまで辛い思いをしたくない。
最後報われると分かっていても、途中が辛いと読むのがしんどい。
というタイプの読者の方もいらっしゃると思います。
そういう方には、もしかしたら「十二国記」シリーズは辛いかもしれません。

でも、物語だからこそ響く言葉もあるのだと、私はこの作品を読んで思ったのです。


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