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感想 「悪いものが、来ませんように」(芦沢央 作)

こちらの感想ではネタバレは極力入れません。
ぜひ、未読の方に興味を持ってもらえたらと思います。配信アプリ「ツイキャス」で、この本の紹介しながら、配信を見ている方とおしゃべりもします。
紹介する内容、ピックアップする点は基本的に記事と同じです。
しかし、ライブ配信なので、予定調和にはなりません。

配信予定日時
8月18日(日)19:30〜


https://twitcasting.tv/c:eureka0202

ツイキャスを見る際に、会員登録等は不要です。リンク先は八朔の配信ページに直接繋がっていますので、お気軽にどうぞ。

※アーカイブでも視聴可能です。

この子のもとに、幸せばかりがまっていますように。悪いものが、来ませんように。(p12)


あらすじ

助産師に勤めながら、不妊や夫の不倫に悩む紗英。心の拠り所は、子どもの頃からずっと変わらない。奈津子の存在。奈津子も紗英を心の支えとして、息苦しい生活を送っている。そんな中、紗英の夫が他殺死体で発見される。紗英の夫を殺したのは「誰」なのか。紗英と奈津子の奇妙な関係が呼ぶ「もの」の正体とは。


感想

紗英の夫を殺したのは誰なのか、という謎を解くミステリーだと思っていたら、物語序盤で「ん?」となります。
序盤からひしひしと感じる違和感。
最後まで読んだ後、読み返してみて、なるほどなぁ、と思わされる。
どんでん返しな展開が好きな方はぜひ。


ちなみに。
「悪いものが、来ませんように」というタイトルから、勝手にホラーを想像していました。
芦沢さんの作品が、今年の本屋大賞の「火のないところに煙は」以降初めてだったので、ミステリーのように見せて、実はホラー!と思っていたら、ホラー要素は皆無。

ただ、人間の強い感情って怖い!とはなりました。
愛情でも、友情でも、嫉妬でも、執着でも。
感情にはパワーがあって、それはプラスにもマイナスにも動くんですよね。
怖いです。

自分は末っ子なので、紗英と毬絵の関係に興味を持ちました。
二人は姉妹なのですが、紗英が生活の全てに強い閉塞感を感じているのに対し、毬絵は自分の生活をエンジョイしている感じがします。
毬絵はどうやら、小さい頃は紗英の後ろをついて回っているようなタイプの子だったようですが、今では立場が逆転したように紗英は感じています。
毬絵は母親と反発し合い、大学で東京に出て、結局結婚することなく子どもを妊娠し、実家に帰ってきます。
心配する紗英をよそに、あっさりと和解する二人を見て、彼女は自分の立場の情けなさをひしひしと感じてしまう。
紗英の「大人から見ていい子」と言われる性格は、成長するに従って、やっかいなものになっていく。
親の育て方が悪いのか、紗英の自立心のなさが悪いのか。
悪役探しをしても、見つからない。
そして、きっと、こういうパターンの人は一定数いる、と思うと苦しくなりました。

しかし、読後感は、割とスッキリしていると思います。
ぐちゃぐちゃに絡まったていた刺繍糸が、実はどこかの一本を強く引っ張ると、スルリと解けた、というような感じ。
今からでも遅くない。
引っ張るべき糸が登場人物たちにもはっきりと見えたのだろう、と思わせるエンディングのため結構読んだ後救いがある気がします。


余談ですが、私は今この感想を書くことが怖くなっています。
それは、少しでも何かを書いてしまうと、ネタバレになるのでは…!と思ってしまうことです。
文庫本だからこそ載っているプロの方の書評『解説』を読み込んで、絶妙なバランスに唸っております。







お前はもっとできると、教えてください。