国立西洋美術館 自然と対話のダイアローグの展示手法について

先日(2022/06/04~9/11)開催されていた自然と対話のダイアローグの展示が非常に建築的な展示(美術館のキュレーション的で無い展示)という風に感じたため、今回はそれについて書いてみようと思います。

今回のテーマとしてある"対話"という言葉は目玉であるモネとリヒターの展示で一番明確に現れていた。モネの船遊びが雲が反射した水面に映った雲、これは焦点を持った雲を表す。それに対してリヒターの雲は焦点を持たないどこを見てもいいのかわからない不思議な絵であった。この二つを四角い梁の直角な2面をとり、展示していた。この展示の手法こそが今回のテーマの対話である。

言い換えると二項対立的なものを絵画の展示で行うことは非常に珍しいと感じた。通常、美術品の展示はナラティブな歴史などの流れをたどるものが非常に多い。しかし今回の展示ではナラティブな流れではなく要素に着目した展示であった。

さらに展示する仮設の壁の高さがコルビュジェのモデュロールに対応しており、2階の常設展と高さが同じなのでは無いかと感じた。これこそが今回の展示の美術館全体とのナラティブを建築的に作る要素なのでは無いかと思う。
加えて、西洋美術館の三角の天窓を模したような展示も遊び心があり非常に建築に精通しているなと感じた。

今回の展示は仮説の壁に色が塗られていて、黒色や紺色などの壁面になっている点も珍しく、絵画が色鮮やかに見えるなと感じた。
内藤廣もスペインの美術館で絵画が置かれる場所によって絵画の雰囲気や作者の伝えたかったことがわかるようになった。とあったように美術館のキュレーター的な目線だけでなく建築的な光や配置の計画も踏まえて展示することの重要性が見て取れた。

今回の展示は建築家が関わっているらしいが、非常に面白く切り口の鋭いような展示手法で非常に面白かった。美術のアカデミックの人からしたらなんだこれはとなる可能性は無くは無いが、建築を学ぶ自分としては建築と芸術の可能性の拡張と共通点の広がりを見つけたような非常に面白いものであった。
また美術館の展示にこのような挑戦的な姿勢なものがあれば書いてみたいと思う。

読んでいただきありがとうございました。

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