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不動産投資におけるアセットタイプを理解しよう(その8:インフラ投資)

不動産のアセットタイプに関する解説の第8回です。
 
投資対象となる不動産には様々なタイプがあります。
今回はインフラ投資(PPPなど)についてです。

なお、ここで説明する対象はプロ投資家や不動産が投資対象とする不動産です。実需で売買される戸建や分譲マンションではありません。
レジデンス、オフィスビル、商業施設、物流施設、事業用不動産などの区分で説明しています。

8.インフラ投資の特徴


不動産に近いアセットを運用するファンドは多くあります。その中で代表的なものの一つにインフラファンドがあります。
 
インフラ投資は本来、PPP/PFIを対象とします。
PPPは「パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携」の略です。
PFIは「プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ」の略です。公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図ります。
 
インフラファンドの投資対象はPPP/PFIのインフラ施設(事業)です。
インフラファンドはインフラ事業からのリターン確保を目的に投資を行うファンドであり、オルタナティブ投資(伝統的資産(株式、債券)以外への投資)であるプライベート・エクイティファンド(PE)の一種です。
投資対象となるインフラ事業(PPP)は20~30年の長期間にわたり安定的なキャッシュ・フローを生み出すので、とても人気があります。
 
世界的にインフラファンドの規模は大きく、年々ファンドの規模は拡大しています。特に規模が大きいのが北米、欧州です。日本は市場が大きくありません。
Preqinによれば、米国では年間1兆円規模のインフラファンドが組成されています。欧米ではインフラ投資に巨額の資金が動いています。
 
日本でインフラファンドというと、太陽光発電設備に投資する再エネファンドを指します。日本のインフラファンドの投資対象はPPPではなく太陽光発電設備ですから、世界的なインフラファンドとは別物です。
 
さて、2024年5月時点で上場しているインフラファンドは、いちごグリーンインフラ投資法人(9282)、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)、東京インフラ・エネルギー投資法人(9285)、エネクス・インフラ投資法人(9286)、ジャパン・インフラファンド投資法人(9287)の5つです。
最大のカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)でも時価総額が約500億円ですから、規模は大きくありません。
 
日本では太陽光発電以外のインフラファンドが上場していません。
これは、FIT(固定価格買取制度)によって太陽光発電設備が大量に増えて、その事業者が資金調達のためにインフラファンドを上場させたことが原因です。だから、日本のインフラファンドはちょっとズレています。
 
なお、上場インフラファンドはJ-REITと比べて利回りが高いことが特徴です。これは、FITは買取価格固定期間があり、キャッシュ・フローとして見込める期間が不動産よりも短いためです。
ただし、FITの価格が下がり続けていますから、今後、太陽光発電関連の上場インフラファンドが増える可能性は低いでしょう。実際、タカラレーベン・インフラ投資法人は2023 年2月1日に上場廃止しました。
 
逆に、太陽光発電設備以外の(本来の)インフラ投資は今後増加していくのではないでしょうか。
 
インフラ投資のメリット・デメリットは以下のようになります。
 
インフラ投資のメリット
 
・長期間の安定したキャッシュ・フローが見込める
・不動産投資よりも利回りが高い(再エネの場合)
 
 
インフラ投資のデメリット
 
・投資金額が大きい
・今後の収益性の悪化が予想されている(再エネの場合)

<その9に続く>

<前回記事はこちら>


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【金融マンのための不動産ファイナンス講座】

【金融マンのための実践ファイナンス講座】


【図解 不動産ファイナンスのしくみ】

 

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