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民間法制審案を読む4 第4 第5 第6

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C案 (監護者指定廃止)

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民間法制審案読み、今日が最後

第4 婚姻中、親権を行使していなかった父母と子との、離婚後の面会交流、養育費に関する規律


 離婚後、夫婦の同居、協力及び扶助の義務が喪失することに伴い、親権を行使していない父母と子との交流を義務付ける規律を設ける。 児童虐待を理由として親権停止等の状態にある父母と子との交流に関しては、 裁判所が当該父母と子のみで交流させることは子の生命・身体に危害が及ぶおそ れがあると判断した場合には、児童相談所が提供する監視付交流支援サービスの利用を命ずる規律を設ける。


(補足説明) 婚姻中、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」(民法第 752 条)ことから、親権を行使していない父母であっても、親権を行使するもう一方の父母と夫婦間の義務を履行することを通じ、子との交流は間接的に義務付けられていると言える。 しかし、離婚後は、その夫婦間の義務が喪失することから、親権を行使していない父母が子と交流する義務も喪失することになる。 一方、児童の権利に関する条約第9条第3項には「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。」と規定されており、子の権利の観点から、父母と子との交流を義務付ける必要がある。 そこで、このような場合においては、離婚時に、「共同監護計画」に準じた「面会交流計画」作成を義務付けることとする。 なお、諸外国では、この条約第9条第3項に基づき、父母との「意味のある」人的な関係を維持する子の権利を保障するため、最低でも、子は、非親権者(非監護者)である父母と、隔週の週末(金曜日の夜から日曜日の夜まで)及び長期休暇の半分を共に過ごすことを父母に義務付けるのが一般的である。 その点を踏まえ、日本においても、「共同監護計画」の指針に準じた「面会交流計画」の指針を法制化するとした上で、指針に規定する面会交流の最低基準として諸外国と同様の面会交流頻度を明記し、その遵守を父母に義務付けることとする。 ただし、その場合、「児童の最善の利益に反しない」よう留意する必要がある。 例えば、父母の住居が離れており上記の最低基準を遵守することがかえって子に過度な負担を与え子の利益を害する場合などは諸外国でも例外を認めていることから(注23)、日本でも同様の規律を設けることとする。 また、児童虐待を理由として親権停止等の状態にある父母と子との交流に関 し、親権者である父母の申立てに基づき、裁判所が当該父母と子のみで交流さ せることは子の生命・身体に危害が及ぼされるおそれがあると判断した場合、 FPIC などが現在提供している「付添い型」面会交流支援サービス(注24)と同等のサービスの利用を命じなければならないとする規律を設ける。 同時に、この「付添い型」面会交流支援サービスが全都道府県で確実に提供されるため、児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号)第 12 条第1項に規定する児童相談所の業務に「付添い型」面会交流サービスの提供を追加するとともに、施設入所等の措置が採られた子と父母との面会等を制限する児童虐待の防止等に関する法律(平成 12 年法律第 82 号)第 12 条の規定についても併せて改正するなど必要な体制の整備を行う。なお、「付添い型」面会交流サービス 提供にかかる費用は全て国が負担するものとする。 その上で、裁判所は、児童相談所に対し、面会交流の状況等についての報 告を義務付け、当該父母と子のみで交流させたとしても子の生命・身体に危害が及ぼされるおそれがなくなったと判断した際には、速やかに当該支援サービスの利用を停止させるものとする。 なお、諸外国の例なども参考に、子の連れ去りを行うおそれのある父母や、 薬物中毒又は精神疾患などにより面会交流中に子を殺害するおそれのある父母に対し、裁判所が、親権停止又は親権喪失の決定をした上で、「付添い型」 面会交流サービスを命ずる規律を設けることについても検討すべきである。 また、児童の権利に関する条約第 12 条第1項に「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。」と規定されていることから、「面会交流計画」作成及び実行にあたっては、子の意見を考慮しなければならないと規律する。 ただし、子が親権者である父母から脅迫されている場合や片親疎外(同居親 の別居親に対する嫌悪感や恐怖感と病的に同一化して別居親を疎外ないし拒絶する現象)に陥っていると臨床心理士や公認心理師が判断する場合など、子の意見が歪められているおそれがある場合は、この限りではない。

離婚後、夫婦の同居、協力及び扶助の義務が喪失することに伴い、親権を行使 していない父母に対し、子の監護に要する費用(養育費)の分担を義務付ける規律を設ける。


(補足説明) 婚姻中、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」(民法第 752 条)ことから、親権を行使していない父母であっても、親権を行使するもう一方の父母と夫婦間の義務を履行することを通じ、養育費の支払いを間接的に義務付けられていると言える。 しかし、離婚後は、その夫婦間の義務が喪失することから、親権を行使してい ない父母が養育費を支払う法的根拠も薄弱になる。 離婚後単独親権制を採用する日本において、民法第766条第1項を改正 し、「父母が協議上の離婚をするときは…子の監護に要する費用の分担…その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。」と規定したものの、 親権を喪失した父母が養育費を支払う割合はわずか2割程度であるという現状も、そのような法的根拠の弱さに一因があるとも考えられる。 そう考えると、離婚後共同親権制を導入した場合であっても、親権喪失など の理由により親権を行使していない父母にあっては、同様の問題が生ずるおそれがある。 しかし、親権を行使していない父母であっても、子の利益の観点から、「面会交流計画」に基づき、子と交流することを義務付ける規律を設けるのであれば、 同様に、子の利益の観点から、養育費を負担すべきである。 親権を行使していない父母に対し、養育費の支払いを義務付ける制度的保障としては、上述の「面会交流計画」を「面会交流・養育費計画」とし、当該計画の中に、養育費についても記載する方法が妥当と考える。 そして、「共同監護計画」同様、当該計画を添付しない限り離婚できないものとすれば、子は親権を行使していない父母と定期的に面会することが保障されるとともに、養育費の支払いも保障されることとなる。


第5 離婚後共同親権制導入時に、未成年の子の親権を喪失している父母の親権回復その他の救済措置に関する規律


離婚後共同親権制へと移行するための民法の改正法を施行する際、離婚を事由として未成年の子の親権を喪失している父母は、裁判所の許可を得て、親権を回復できる旨規律する。 親権の回復を申請する父母は、子の居所の調査その他の子との再会を実現するための援助を国に申請することができる旨規律する。 また、共同監護を実現するため、弁護士等による裁判外紛争解決手続(ADR)を 利用し、もう一方の父母と共に「共同監護計画」を作成すること及び「離婚後監護講 座」を受講することを義務付ける。なお、その際にかかる標準的な期間内のADR 費用及び公正証書作成費等の費用は、国が支給する。 もう一方の父母が当該計画作成に協力しない場合又は「離婚後監護講座」を受講しない場合、裁判所は、親権を回復した父母の申立てに基づき、もう一方の父母 に対し「共同監護計画」作成への協力又は「離婚後監護講座」の受講を命じた上で、その命令に従わない場合には、親権喪失(民法第 834 条)の審判を行うことができる規律を設ける。


(補足説明) 離婚後共同親権制導入に伴い、既に離婚に伴い親権を喪失している父母の親権の回復を図る必要がある(ただし、親権を喪失した父母から親権回復の申立てがある場合に限る。)。 その際、大量の申立てが発生することが予想されることから、離婚後単独親権制から離婚後共同親権制に移行した際の諸外国の例にならい、裁判所による親権回復の手続きを簡素化・自動化する。具体的には、親権回復の審判手続は羈束処分に近い性格のものとし、親権を有するもう一方の父母の意思に関係なく、親権を喪失している父母が、一定の客観的要件を満たしていることが確認できれば、裁判所は親権を喪失している親の親権を回復しなければならないとする特例措置を設ける。 この親権回復に関し、親権喪失後、長期間経過していること等により、子の居所が不明であるなど、父母と子との再会に至るまでには様々な障害がある場合が多いものと予想される。 かかる障害は、離婚後共同親権制への移行を怠った国の不作為に起因する 以上、国は当該父母に対し支援する必要がある。 また、子との接触が長期間ない父母が子と再会することの困難さは、外国に居住する父母が日本において子と面会交流をすることと同様の困難さを有すると考えられ、その点からも国は当該父母に対し支援する必要がある。 そこで、特例措置として、当該父母が、子との再会を実現するための援助を国に申請できることとする(また、当該申請は、子が申請することも可能とする)。 そのため、ハーグ条約に基づき面会交流援助について規定する国内実施法第 16 条から第 20 条までの規定中、「外務大臣」を「法務大臣」と読み替えて準用 する規律を設ける。ただし、国内実施法第 18 条第1項に定める申請を却下する 事由として掲げる「申請に係る子が十六歳に達していること」は「申請に係る子 が父母の離婚成立時に十六歳に達していたこと」と読み替えることとし、現在、 子が十六歳に達している場合においても、父母の離婚成立時に十六歳に達していなかった場合には、国は当該父母と子との再会を支援する義務を負うこととする。 更なる特例措置として、親権を回復した父母ともう一方の父母に対しては、弁護士等による ADR を利用した「共同監護計画」の作成と「離婚後監護講座」受講を義務付けることとする。なお、その際にかかる標準的な期間内の ADR 費用 及び公正証書作成費等の費用は、国が支給する。
 さらに、親権を回復した父母ともう一方の父母との間では、そもそも高葛藤の関係にあった場合も多く、親権を回復した父母が、親権の共同行使に向けて 「共同監護計画」を作成するよう、もう一方の父母に要請した場合、もう一方の父母が要請に応じる可能性は少ない。 そこで、もう一方の父母が「共同監護計画」作成に協力しない場合又は「離婚後監護講座」を受講しない場合、裁判所は、親権を回復した父母の申立てに基づき、もう一方の父母に対し「共同監護計画」作成への協力又は「離婚後監護講座」の受講を命じた上で、その命令に従わない場合には、親権喪失(民法第 834 条)の審判を行うことができる規律を設ける。

第6 国際間の子の連れ去りに関する規律

国内実施法の子の返還拒否事由のうち「相手方及び子が常居所地国に入居し た場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受ける おそれ」(国内実施法第 28 条第2項第2号)及び「申立人又は相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情の有無」(同項第3号)の規定を削除す る。 終局決定の変更(国内実施法第 117 条及び第 118 条)及び再審(国内実施法第 119 条及び第 120 条)の規定を削除する。 子の返還申立事件について、国内実施法の家庭裁判所の終局決定に係る規定 以外の司法当局に関する規定について検討を加え、その結果に基づき、当該規定 の削除その他の必要な法制上の措置を講ずる。



(補足説明) 諸外国からは、日本がハーグ条約を遵守していないとの非難が繰り返しなされている。先述のとおり、令和2年7月、欧州議会本会議は、日本に対し「ハーグ 条約の下で子の送還が効果的に執行されるように国内法制度を改正するよう促す」との内容を含む非難決議を圧倒的多数で可決している。(注25)。また、米国は、平成 30 年5月、ハーグ条約の年次報告書において日本を「不履行国」 に認定し、「執行プロセスが過度に長期化している」と批判している(注26)。 このような諸外国からの批判に対し、真摯に応える必要がある。 外務省のホームページによると、ハーグ条約は、国際裁判管轄の問題を解決するための条約であり、「どちらの親が子の監護をすべきかの判断は子の元の居住国で行われるべき」との考えから「原則として子を元の居住国へ返還することを義務付け」ている(注27)。 このように裁判管轄を定めた理由は、「一旦生じた不法な状態(監護権の侵 害)を原状回復させた上で、子がそれまで生活を送っていた国の司法の場で、 子の生活環境の関連情報や両親双方の主張を十分に考慮した上で、子の監護についての判断を行うのが望ましいと考えられているから」である。 したがって、子の返還は迅速に行われなければならない。ハーグ条約で「司法当局又は行政当局は、子の返還のための手続を迅速に行う。関係する司法当局又は行政当局が当該手続の開始の日から六週間以内に決定を行うことができない場合には、申請者は、遅延の理由を明らかにするよう要求する権利を有する」(ハーグ条約第 11 条)や「子の不法な連れ去りから一年が経過していないときは、当該司法当局又は当該行政当局は、直ちに、当該子の返還を命ずる」(ハーグ条約第 12 条)と規定しているのは、かかる理由からである。 また、「司法当局又は行政当局は…監護の権利についての本案の決定を行 わない」(ハーグ条約第 16 条)と規定されているように、ハーグ条約の返還決定 では監護権についての決定を行わない以上、子の返還手続は六週間以内に 決定することが十分に可能である。 かかるハーグ条約の趣旨からすると、返還拒否事由は極めて限定的でなければならない。しかしながら、国内実施法は、返還拒否事由としてハーグ条約に規定のない「相手方及び子が常居所地国に入居した場合に相手方が申立人から子に心理的外傷を与えることとなる暴力等を受けるおそれ」(国内実施法第 28 条第2項第2号)及び「申立人又は相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情の有無」(同項第3号)を追加した。 これらの規定は、ハーグ条約が要請する子の返還のための手続の迅速さの妨げになるだけでなく、ハーグ条約が禁止する「監護の権利についての本案の決定」を事実上行うことになることから認められない。実際に、これらの規定は 「ハーグ条約の抜け穴」として不当に機能しており、我が国が国際的非難を招く重大な原因となっている。 また、国内実施法第 117 条は、「子の返還を命ずる終局決定が確定した後に、事情の変更によりその決定を維持することを不当と認めるに至ったときは、 当事者の申立てにより、その決定…を変更することができる」と規定するが、一 度、終局決定をした場合、本来であれば迅速に返還することがハーグ条約の要請である以上、「事情の変更」が起きる余地がないはずである。 したがって、国内実施法第 117 条と同条を前提とする第 118 条は削除しなければならない。 同様に、再審の規定も不要であり、国内実施法第 119 条と第 120 条は削除しなければならない。 さらに、ハーグ条約は国際裁判管轄を決めるための条約であることを考えれ ば、国内実施法第 34 条で「管轄裁判所が法律上若しくは事実上裁判権を行うことができないとき、又は裁判所の管轄区域が明確でないため管轄裁判所が定まらないときは、最高裁判所は、申立てにより、管轄裁判所を定める。」として国内裁判管轄を最高裁判所のみで決定しているのと同様に、一裁判所の決定のみで十分であり、三審制や調停制度を設ける必要性はない。 したがって、子の返還申立事件については、国内実施法の家庭裁判所の終局決定のみで十分であり、この終局決定に必要な規定以外の司法当局に関する規定(国内実施法第 97 条から第 116 条まで及び第 144 条から第 147 条ま で)について検討を加え、その結果に基づき、当該規定の削除その他の必要な法制上の措置を講ずる。

以上


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