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無職は青い芝生の夢を見るか?

「お仕事探しは順調ですか?」

ある晴れた診察室。通っている精神病院の医者に言われた一言。おおジーザス、やはり来たかいその質問が。私は、視線を斜め下にした。

「エァ〜探しているのですが、なかなかいい場所が見つからなくてェ、ヘヘ……」

努めてヘラヘラした。なんかしらんけど笑った。笑いたくもないのに。何で笑ってるんだろうと自分でも不思議に思った。

病院が終わると、道路で飛び跳ねたくなった。

ウッソピョ〜〜〜〜ン!仕事なんて全然探してませ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!ドンデンドンデンドンデン!ヒャホオ〜〜〜〜〜〜〜〜!

最悪な無職が誕生。俺が無職王シゴトヤダーだ。僕らの無職王。

清々しいほど、無職である。祖母に陰で「アイツはいつ仕事を見つけて働くんだよ」とヒソヒソされたり、親戚から何やかんや言われたりしても、私は無職だった。

無職であること、数週間くらいは結構後ろめたかった。「ア〜、顔見知りに嫌な顔されるんだろうな〜」とか「私が無職って知ったら知人はきっと私を蔑むんだろうな〜」とか。職を得て必死に働いてる知人達が眩しくて自死のことばかり考えてた。ペーパードライバーだけど車を走らせて山奥まで行って首を吊ろうとしていた。

だけど、慣れてみるとアラアラ不思議。もうなんか知人とか劣等感とかどうでもよくなってきた。社会に対する罪悪感が薄れ始めてきた。慣れって怖いよね。

私はずっと「他人に自慢できるような仕事をして、愛する人がいて、将来誰にでも誇れるような人生を送らねばならない」と思いこんでいた。今も、知人の顔を思い浮かべるとそういう妄想に襲われて吐きそうになる。

実際、私の周りは成功してる人が多い。キラキラ光る人生を歩んで楽しそう。家族恋人に恵まれて、仕事に恵まれて。キラキラと、美しい青い芝生で皆が踊る。踊る。素敵だった。羨ましかった。

その姿を見ている私は、その芝生に火をつけたくて仕方なかった。皆死んでしまえと鉄格子付きの四角い部屋で泣きわめいている私は、美しい芝生で踊る彼らからはどう見えるのだろうか?そんな事を考えていた。

ずっと「あるべき姿」に囚われ、劣等感ばかりが加速し希死念慮を増幅させる毎日。

でもそういうある種の罪悪感が薄れてみると、楽しかった。毎日何かに追い立てられる事もなく、のうのうと人生を消費していると酸素が美味しい。もしかして、ずっと二酸化炭素を吸って生きていたのかな。

私は四角い部屋で踊りだしたのだ。青い芝生を夢見て踊りだした。無職でありながら、ケラケラ笑って回りだす。一人で毎日楽しく、怪文書を作る。

おかしくなってしまったのか。元からおかしかったのか。どっちでもいいや。

まあもしかしたら突然職ありになるかもしれないし、そうならずに首を吊るかもしれないし。どっちに転んでも良いように、私は今日も文章をしたためるよ。

とりあえず、今は書きたい小説があるので死なないぜ!無職だけど!

無職マインド、模索中である。

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