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役に立たない楽しいこと

趣味でボイストレーニングに通い始めた。2ヶ月前の話だ。急に新しいことを始めたいと思いつき、まずは体験レッスンに行った。講師と一対一で腹式呼吸と発声方法を習い、その場で歌ったら今まで出なかった高音が出て、うれしくて即入会申込書にサインした。

歌を発表するだとか明確な目標はない。ただ単に歌が上手な人に憧れていて、それと仕事以外で定期的に会うような人間関係がほしかったので習うことにした。独学でも歌は練習できるのだろうが、私は飽きっぽいので強制力のない状況では3日も続かない。趣味にも多少の強制力と他人の目が必要なのだ。
月謝は月2回のマンツーマンレッスンで9千円ちょっと。相場より安いが、低収入フリーターにとってはかなりの出費となる。でも他にお金のかかる趣味がないのでなんとかしている。

腹式呼吸の練習は無心になれて結構良い。お腹に溜めた息を40秒〜50秒かけて薄く吐き続ける練習なのだが、かなりきつくて呼吸以外のことを考える余裕がなくなる。雑念が勝手に消え、練習したあとはなんだか頭がスッキリしている。最初は30秒台で限界が来たが、練習しているうちに40秒くらい息が続くようになった。要は深呼吸だからマインドフルネス的な効果があるのだろうが、いかんせんきつくてめんどくさいので週に1回くらいしかできていない。私は深呼吸よりも好きな歌を熱唱するほうがよっぽど楽しく無心になれる。

2ヶ月で歌はどうなったかというと高い声(hiG#)が出せるようになり、リズム感がマシになってきた。以前が壊滅的だった。さすがに月2回のレッスンだけでは上手くならないので家やカラオケで自主練習し、録音した声を自分で聴いている。
練習する気力のなかった先月は歌わなすぎて歌声の出し方を忘れたが、レッスンにだけはサボらずに行った。レッスン中は歌のことしか考えないので良い気分転換になった。先生は明るくて気さくで元気をもらえる。発声練習をするだけでも声が楽に出せるようになりうれしかったが、加えて「歌に感情がこもっているように聞こえるテクニック」を教わってから数十倍楽しくなった。それまでは自分の歌声が棒読みに聞こえてつまらなかったため、テクニックひとつで全然違って聞こえることに感動した。

こうして上達を実感すると誰かに聞かせてみたくなるが、上手くなったのはあくまで当人比であり他人からすれば下手くその域を出ない。もっと客観的に上手くなったらカラオケサークルにでも入って仲間を作りたいなと思う。

こんな感じで、1円にもならないしする気もない趣味の能力を上げることはとても楽しい。一方、食い扶持となる仕事の能力を上げる気はさらさら起きない。将来は当然不安だけれども、やりたくないことをやっても続かない。
ずっと楽しいことだけやって生きれたらいいのになと、また幻想に逃避していくのだった。


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