「風薫かぜかおる、星光ほしひかる、空晴そらはれる、後はえーと、夢眠ゆめねむるとかどう？」

事務所の社長兼マネージャーである松原さんが私の芸名を一生懸命提案してくれている。だけど全部微妙過ぎて「どう？」とか言われても苦笑いもできない。そもそも私はアイドルとしてデビューするつもりなのにその演歌歌手のような古風な名前はなんだ。100歩譲ってギャップ受けを狙った古臭い名前は良しとしよう。でもその最後の「る」は一体何？何の意味があるの？その「る」っていります？？

「何言ってるの！この「る」が１番大事なんだよ！他の字は100歩譲って何でもいいけど、「る」だけは譲れない！」

うん、まぁそうだろうなって思ってた。芸名の最後が全部「る」になってるもんね。って他の字は何でもいいんかい。「風薫る」なんて風情があってちょっと良いなって思った自分が恥ずかしいわ。でもそんなに重要視する「る」って松原さんにとってどんな存在なの？

「そりゃあ特別な存在だよ。でもそれは僕だけじゃなくてみんなにとっても「る」は重要な存在だと思うよ。ほら商品名に「る」のつく風邪薬もあるし、キタキツネを呼ぶときはルールルルって言うよね。それにスピッツも「ルールル宇宙の風に乗る〜」って歌ってるじゃん」

いや風邪薬の商品名とかキタキツネを呼ぶときとかそれほど重要じゃなくない？それにスピッツのロビンソンは「ルールル」じゃなくて「ルーララ」だから！

「まぁまぁ細かい話はいいじゃん。とにかく「る」って人を幸せにしてくれるんだよ。「るるる」なんて3つ並べばもう人生バラ色だよね。そうだ！「風かぜるるる」なんてどう？最高じゃない？」

もうそんなに「る」が大事なら、いっそのこと「るるるるる」で良いじゃないですか。3つでバラ色なら5つ揃ったら超絶ハッピーライフでしょ…なーんて、それはさすがにないですよねって、いやいやいやその手があったか！みたいな顔やめてくださいよ！冗談に決まってるじゃないですか。ちょっとどこに電話してるんですか！『みつけました！期待の大型新人るるるるる！』じゃないですよ！芸名にシークレット感が出てますって。ホント勘弁してください！せめて名字だけでも変えさせてくださーい！！

…その後、『風かぜるるる』としてデビューした私は、いつ某薬品会社から類似名称として訴えられないかと毎日ビクビクしていた。そんな私に思いがけないビッグニュースが舞い込んでくる。

「『芸名が商品にピッタリ』ってことで風邪薬のCMオファーをもらったぞー！」

人生ってホント「るるる」だわ。

おしまい。
（1069文字）

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※創作中になんとなくこの方をイメージしてしまったのですが本作品とは全く関係はございません(笑)

#でもどうやってこのお名前をつけられたか気になる

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#つるるるるさん
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