マスコミ__1_

芸能事務所というシステムの終わり

こんにちは、新保紘太郎(@charytaro)です。

このnoteでは、フリーランスのモデルやインフルエンサーをキャスティングする仕事をしながら見えてきた芸能事務所の終わりについて僕なりの見解を書いていきます。

・広告費の配分がマスからデジタルメディアに流れてきていること
・モデルが事務所に所属するメリットが減ってきていること
・メディア側がタレントを囲い込む動きが進んできていること

この3つで割と詰み始めていることがわかると思います。
※音楽アーティスト・お笑い芸人・俳優分野は詳しくないため、主にモデル・タレント分野でのお話になります。


■日本の広告費ってどれくらい芸能事務所に流れてるの?

芸能事務所は所属するタレントを商品として売り込むことで売上を立てています(※1)。写真集やスタイルブックなどの販売売上もありますが、基本的にはテレビ番組や雑誌への出演費・CMなどの企業広告への出演費の割合が多いと考えられます。
民放のテレビ・ラジオ番組はスポンサーからの広告費によって制作され、新聞や雑誌も広告収入を得ていることから、4マスと言われるこれらの媒体への出演費の出どころは企業の広告宣伝費です。

ここで電通が発表した日本の広告費の媒体毎構成比の変遷を見てください。

日本全体の広告費の中でマスコミ4媒体の構成比がここ3年間でゆるやかに下がってきていることがわかります。逆にインターネット媒体は全体の総広告費が横ばいのなか2年連続で前年度広告費の15%増しで増加し続けていることがわかります。

さて、お次はYouTuber事務所UUUMが日テレのIR情報から作成したテレビ広告費の内訳です。

テレビ局ごとに内訳の構成比は多少異なるでしょうが、テレビ広告費2兆円はおおよそこのように使われているようです。
番組制作にはロケ地使用費や、スタジオセットや小道具制作費、映像編集費など多くの費用がかかるため、タレントへの出演料は最終的に2000~3000億円くらいになるのではないでしょうか。これを大小様々な芸能事務所で分けているかたちです(※2)。

一方、デジタルメディア広告ではキャスティング会社を使って直接フリーランスのモデル・インフルエンサーを起用する流れが加速しています。
特にキャンペーンサイトには知名度の高いタレントを使いつつ、サイトへの導線を作るためにInstagramやYouTubeの投稿を同時期に行なうといったことも増えています。
インターネット上においては事務所所属の100万フォロワーのタレント1人より、1万フォロワーのフリーモデル100人使って細かくターゲット購買層にリーチする方が効果的だ、という考えが追い風になっているようです。

そんな時代の流れがある中、マス媒体の広告費が減り続け、デジタル媒体の広告費が増えていったら芸能事務所の利益となるパイはどんどん狭まっていきます。


■じゃあ、フリーモデルをどんどん所属させればいいじゃん!

Answer:無理です。
なぜなら広告主にとっても、フリーモデルにとってもメリットがないからです。

まず広告主にとっては広告で使うタレントはクオリティは担保したうえで安い方が嬉しいです。そして基本的にサイト出演費にしろ、SNSプロモーション費にしろ、事務所所属のモデルがフリーモデルより安いことはないです。
芸能事務所はモデルのギャランティからマネジメント費として3~5割程度のマージンを取るので必然的に金額は高くなってきます。フリーモデルの場合、そもそも単価が安いので僕のようなキャスティング業者が間に入ったとしても同程度のポジショニング・知名度の場合は所属モデルより高くなることはまず無いです。

次にフリーモデルにとっての芸能事務所に所属するメリットを考えます。以下は、日本音楽事業者協会が定めているプロダクションの役割と機能です。

音楽プロダクションに準じた内容ですが、機能的にはモデル・タレントの芸能事務所と同じです。細かく見ていきます。

①発掘と育成:アーティストのボイストレーニングや俳優の演技レッスンと違って、モデルには体系化した育成が無いためメリットにはならない。
②キャリア開発:長く続ける意志があるモデルには、長期的な目線でのコンサル的な相談はメリットとなる。
③制作:写真集やスタイルブックの制作などはメリットとなる。とはいえクラウドファウンディングでできちゃうけど、、、
④宣伝:自身のSNSでセルフブランディングして発信できるため、メリットにならない。
⑤媒体ブッキング&営業:テレビや映画・舞台などを目指していないならメリット薄い。広告案件はキャスティング会社などで登録可能。
⑥経理・会計管理:請求書の発行や税金処理はメリット。
⑦法的保護:契約書の内容チェックなどでメリット。
⑧情報露出のコントロール:SNS上でのリスクマネジメントの専門家がいるならメリット。
⑨スケジューリング:自分でできるためメリット薄い。

さて、音楽アーティストや俳優業にとってはメリットとなある部分があるものの、モデル・タレントに関して言えばメリットとなるのは、本人のキャリア開発とバックオフィス業務です。

こうして考えると、フリーランスのモデルを数人抱えて本人がやりたいことを一緒に考えながらバックアップ業務を行なう”フリーランスのマネージャー”という存在が増えてくるように思います。

モデル専属ではないですが、クリエイター業界では実際にフリーのマネージャーが出てきています。
この流れはフリーランスのモデル・タレント業界にも来るはずです。


■それどころかメディアが芸能事務所化してきている

昔はメディアがモデルやタレントを使うときは芸能事務所にオファーをするという流れでしたが、最近はメディアが直接モデルをマネジメントするケースが増えてきています。

女性誌のCanCamが読者モデル・インフルエンサーをCanCam it girlとして抱えたり、C Chennnelがオーディションアプリ「mysta」を立ち上げたり(※3)、音楽分散型メディアのluteが電子工作アーティストのギャル電とマネジメント契約を結んだりと、この流れは加速していくように思います。

これによりメディアは広告代理店、もしくは直でクライアントに媒体営業に行く際に、マネジメントしているモデルを合わせた提案ができるようになります。もう芸能事務所いらないじゃん!!!


■2018年、まさに転換期

今年が転換期というより、今変われなきゃもう終わっていくと思います。
そんな中でも時代を先どっていると感じる芸能事務所について。

★ASOBISYSTEM
言わずと知れた青文字系の始祖、アソビシステムです。
HARAJUKU KAWAII STYLEというWEBマガジンを運営していることによって、芸能事務所でありながらクライアントに直接プロモーション提案できます。
LCCのJetstarや、ヘアスタイリング剤のLorettaなど、おそらく広告代理店を挟まないでやってるような気がします。

★N.D.Promotion
Nom de plumeというガールズメディアを運営する事務所です。
ここの特色は公式Instagramもメディアとして機能しているところです。
先日Tik Tokを使ったプロモーションプランを発表しており、自社タレントと既存メディアを連動させつつ動画PR施策の提案に舵取りしているようです。


さて、長々書きましたが芸能事務所はタレントのマネジメントだけを行なえば安泰というシステムが崩れつつあるため、メディアを持ち、コンテンツを育て、PR的な発想で施策提案をしていく存在にならないといけないという話でした。

新保紘太郎(@charytaro)でした。



(※1)芸能事務所は所属するタレントを商品として売り込むことで売上を立てています。
 →もちろんそれ以外の売り上げもあります。こんな記事も。「星野源の事務所はオリーブオイルを販売 大手芸能プロの副業がすごい

(※2)これを大小様々な芸能事務所で分けているかたちです。
 →2000~3000億円は僕の概算なので詳しい資料あったら教えてください。もちろんTV以外のプロモーションメディア広告費からも芸能事務所に辿り着くお金があるので、タレントキャスティングの規模としてはもう少し大きくなると思います。

(※3)C Chennnelがオーディションアプリ「mysta」を立ち上げたり
 →パートナー企業として名を連ねるのはエフエム東京、産経デジタル、集英社、松竹、ソフトバンク、TBS、ポニーキャニオン。どこも直接タレントを抱えて旨みのある会社ばかり。


#インフルエンサー #プロモーション #PR #パブリックリレーションズ #広報 #広告

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