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脚本家の権利と生成AIに関する共同声明

11月3日の文化の日に、日本脚本家連盟並びに日本シナリオ作家協会より、「脚本家の権利と生成AIに関する共同声明」を出しました。

「日本脚本家連盟(通称:日脚連)」も「日本シナリオ作家協会(通称:シナリオ作協)」も、脚本家の協同組合であり、私はシナリオ作協の方の会員です。
両団体が共同声明を出すのは異例のことで、双方で打ち合わせを重ねて、下記の文面を作り上げました。

声明内にもある通り、脚本家に無断で脚本に手を加える等、脚本家の権利をないがしろにする行為が頻発している状況を看過できないということで、両団体でこの声明を出すに至りました。

私自身の経験を振り返ると、ある企画で「この座組では、撮影現場で脚本を変えるのは当たり前のことだから」と言われ、私がそれを了承したという言質を取ろうとされたことがありました。
当然、その場で拒否しましたが、新人の頃であれば「当たり前」という言葉に惑わされて受け入れてしまったり、「生意気だと思われたくない」という気持ちから拒否できなかったりした可能性はあると思います。
ですが、声明文にもある通り、脚本の同一性保持権は著作権法で認められた権利であり、それを主張することは生意気でもなんでもなく、当然のことです。

私のnoteを読んでくださっている皆さんのなかには、脚本家志望の方が多いと思います。
声明文やこの投稿を読んでいると、「プロの現場って、勝手にホンを書き換えられることが横行してるの?」と不安になっているかもしれませんね。
私個人の経験に限ってをお伝えするならば、「プロデューサーや監督の誰も彼もが無断で脚本を変えようとしてくる」といったことを感じたことはありません。
ただ、上述のように、無断で変えることを了承させられそうになったことはありますし、自分が被害に遭うに至っていないからと言って、到底看過できる問題でもないと考えています。

もう少し、私の実体験をお伝えするならば、ある映画の脚本決定稿印刷後に監督から「このシーンにもう一つ、こういう意図のセリフを足したいのですが…」と連絡があり、監督と相談の上、セリフを一つ付け加えた、ということがありました。
この現場では、一行のセリフであっても、無断で加えられることはなかったということです。
丁寧な対応をありがたく感じましたが、同時にこれが「あるべき姿」でもあるわけです。
今、脚本家を目指して学んでいる皆さんにも、これがあるべき姿だということを心に留めておいていただきたいです。

今回の共同声明の送り先は「放送映画関係者および報道関係者各位」ですが、SNSを通じて、いわゆる「一般の方」にも広がっているようで嬉しく思っています。
例えば、こちらの今井雅子さん(シナリオ作協の著作権委員の代表を務められています)のポストは、11月12日現在1,234回リポストされ、1,458いいね、ブックマーク154、表示件数は31.3万件です。

シナリオ作協の公式アカウントのポストは、11月12日現在576回リポストされ、731いいね、ブックマーク136、表示件数は43.3万件です。


但し、この状況を見て「拡散してるぞ!」と喜んでばかりもいられないと思っています。
両団体での打合せでは、ベテラン脚本家の方から「この声明を出しただけで状況が劇的に改善するとは限らない。それでも声明には深い意義があり、今後もこういった発信を継続することが大切」というご発言がありました。
まったくその通りだと思いますし、私個人としても出来る限り発信をしたいと思い、こちらの投稿をしました。

長文をお読みいただき、ありがとうございました。

#脚本 #シナリオ #シナリオ作家協会 #日本脚本家連盟 #著作権
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