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「無観客生配信」の功罪 ─ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2nd Live!

2020年9月12日(土)、9月13日(日)の2日間3公演にわたって開催された「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 2nd Live!」に3公演通しで参加したので、その感想を書き留めておく。

今回のライブは、ラブライブ!シリーズ初となる完全無観客の有料配信ライブだったこともあり、AR演出やステージ上にカメラマンを配置した大胆なカメラワークなど、今までにない新しいものを取り入れようという試みが随所に見られた。キャストのパフォーマンスも相まって、全体を通してこれまでのライブよりも映像作品として「魅せる」ことを意識したものになっていた。

その一方で、「無観客」という特異な状況がキャストに与える心理的負担が垣間見える場面もあり、ライブという場のあり方についても思案させられた。

誰の目にも明らかだった「成長」

キャスト自身も語っていたように、First Live “with You”と比べて明らかにパフォーマンスに余裕が生まれていた。それはもちろん個々人の体力やスキルの向上もあるだろうし、練習時間が取れなかったりスケジュールが合わないメンバーを他のメンバーがサポートするような、メンバー同士の関係性の深まりも理由として大きいだろう。そしてそのことによって、確かにキャストを通じてステージ上にキャラクターが見える瞬間が何度もあった。

キャスト自身の成長、メンバー同士の絆の深化、キャラクターとのシンクロ。これらをリアルタイムで、同期的に体験できるのがラブライブ!シリーズの醍醐味だと思う。

「物理的距離」=「心理的距離」

配信ライブという公演形態の良し悪しについては今まで散々議論されてきたが、何回か参加するうちに、これは形態やプラットフォームの問題ではなく視聴者側の参加態度の問題であることに気づいた。つまり、自分の意志で配信ライブに「積極参加」しようと思えば、いくらでもそのライブ体験はリアルなものに近づくのだ。

映画館でのライブビューイングと違って、チャット欄やSNS投稿で視聴者のコメントをリアルタイムで追いかける「祭り感」が味わえるのも良い。もちろん、通信環境や音響環境に対する不満感はまだまだ大きいが。

しかし、この「祭り感」はあくまでも視聴者側のみが味わうものであり、演者との双方向性はなく、それが演者に対して大きな心理的負担になっているという事実が、今回の2nd Liveで浮き彫りになった。

視聴者にSNS投稿を促し、それをモニターを通じてキャストに伝えようという試みはあったものの、どうしてもタイムラグが発生してコミュニケーションが非同期的になるという技術的課題もある。本当の意味でのリアルタイムなフィードバックが何も無い状態でのパフォーマンスは、想像を絶するプレッシャーとなっていただろう。

また、今回のライブでは歌詞ミスが散見されたことから、パフォーマンス中はステージ上のモニター(プロンプター)に歌詞を表示していなかった可能性がある。これはカメラマンがキャストの背後に回り込むカメラワークを実現する上で、画面内にその表示内容が映り込むことを避けるための配慮だったのかもしれない。

彼女たちと同列に語るのはあまりにもおこがましいが、自分もステージ経験がある身として、歌詞を飛ばして全身の血の気が引くあの感覚は嫌というほど理解できる。そのとき目の前に観客の顔が見えているかいないかの差は、天と地ほどのものだろう。ライブに行くオタクなら一度は味わったことがあるであろう、演者がミスしたときに流れるあの「応援ムード」のようなものが、一切演者に伝わらないのだ。つまり、正真正銘の、自分との戦い。「ミスをした」という自責の感情にすべての思考を支配され、集中を乱し、さらなるミスを誘発する。これは本当に辛い。

「無観客ライブ」は演者に対する最大限のケアを

全体を通して満足度と完成度の高いライブであったことは間違いないが、やはり演者も人間である以上は、肉体的のみならず精神的なケアをどう行うかが今後の課題になるだろうと感じた。それに対して「完璧にやるのはプロとして当然」「それは甘え」のような意見が出るようなことがあればそれは視聴者側のエゴに他ならないので、気にせずどんどん演者が伸び伸びとパフォーマンスできる環境づくりをしていってほしい。ほんと、観客席にプロンプターの一つや二つ置いてくれても全く問題ないので…。人間はミスをする生き物なので、多少のミスに耐えうる演出上の設計は必要なのだ。

今回は主に演者側の目線で語ったが、普通に参加者としてはそろそろリアルライブに参加して直接声援を送りたいという気持ちが強いので、大西亜玖璃さんにウイルスをぶっ飛ばしてもらいたい。3rd Liveは絶対に現地参加したいので。

さて、積み残したスクスタのキズナエピソードを読み込む作業に戻ろう。

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