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さよならシャボン(25) 愛惜

Story : Espresso  /  Illustration : Yuki Kurosawa

もうどれだけの時間こうして過ごしているだろう。

時は夕方。

太陽がゆっくりと暗い海の中へ沈み始めた。

沈んでいく太陽の光は水面で乱反射していて、直視するには眩しい程に輝いていて、海原すら燃えているようだ。

青年はその姿をただぼうっと、何をするわけでもなく防波堤に腰を下ろして眺めている。

彼の手の中には琥珀色の宝石があしらわれた小さな指輪、丁度今の水面のような色を持ったものがある。

それを親指と人差し指で摘み、無意識で僅かに回している。これをなにかをしていると指すならば、何もしていないとは言わないのかもしれないが。

輝いている水面と同じく、その宝石も太陽の光りを反射して輝いている。

海面から切り取った輝きをそこに詰めたのでは、とすら思わせる。

しかし、その輝きとはうってかわって青年の顔は暗く、光を失っているようだ。

太陽は今しがた、海面に沈み始めたところだが青年に映る太陽は一足先に沈んでしまったらしく、表情は窺うことができない。

物思いに耽っているのか、それとも水面の輝きに目を奪われているのか、はたまた別のなにか理由があるのか。

防波堤に打ち付ける波音しかないその場所。

太陽が半分ほど海面に隠れたところで青年は立ち上がり、指輪をつまんで夕陽の明かりを透かした。

それを眺めて、目を細めたのはただ眩しかったから。

「———」

青年は指輪を掌に置いて見詰めた。

一拍置いて、それを握り締めると大きく振りかぶった。

指輪は手を離れ、放物線を描きながら、尚も太陽を反射して輝き続け、そして、同じ琥珀色の輝きに溶けていった。


***

•さよならシャボンチームからのお知らせ
 えすぷれっそさんが活動再開したということで、また不定期に連載を再開することとなりました。それに伴って、メインビジュアル等のリニューアルも行っております。
 次の目標としては、今までの作品をまとめた文庫本を作って自分たちだけで遊ぼうと思います。本年もよろしくお願いいたします。


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