見出し画像

『Avvaival』の世界観が描く時間から解放された人々

『Dune』を手がけたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による作品である『Avvaival』.

ヘプタポッドと呼ばれる未確認生物が地球に到来するSF映画なのだが、SF映画にしては珍しく戦闘シーンがない.(一方的な攻撃はあるが)

そのため未確認生物ヘプタポッドと人間の内容に注視しながら見続けることができる.

主人公はエイミー・アダムス演じる「ルイーズ・バンクス」という言語学者と物理学者のジェレミー・レナー演じる「イアン・ドネリー」という物理学者になっている.

この映画の最大のポイントは『未来』『現在』『過去』の関係性にある.

我々の世界では時間軸と呼ばれる時の流れがあり、記憶の中に存在する『過去』と今を生きる『現在』の中で生きている.

しかしヘプタポッドの存在する世界では時間軸が存在せず、『過去』『現在』『未来』が同じ空間の中に存在する.

要は未来が見える状態の中で生きているのである.

作中の中でヘプタポッドはヘプタポッド文字を駆使し人間に対して「武器を与える」とメッセージを送った.このメッセージこそが時間軸の存在しない世界であり言語であったのだ.

そのため言語を習得したルイーズは未来を思い出す行動をとる.ここは理解しやすいように恋愛(ルイーズとイアンの関係)にしている.

最初に出てくる赤ちゃんはルイーズの子どもだが、死んでしまう運命にあった.しかし実際には死んでおらず、未来に死ぬ運命にあるというのが実際の話であって現在の世界では存在していない.

そしてこの見える未来をルイーズは受け入れている.自分の子どもが死ぬ運命にあると知りながら、その未来を望んでいるかのようにイアンと歩んでいこうとしているシーンには一般人は疑問を持つ.

未来が見えるにも関わらず抗うことなく受け入れる精神力はルイーズの特殊な武器なのかもしれない.

この未来を見ることをヘプタポッドは武器として提供すると述べているが、やはり時間軸をぶち壊す概念を一般人が受け入れることができるのかは分からない.

未来を思い出すことを人間は素晴らしいことであると認識できるのか.

それとも受け入れるしかないのか.

ヘプタポッドの世界観が人間をどう変えてしまうのか知りたくなるSF映画だった.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?