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トランプ派議員にもカネ出さんと!と地雷を踏んじゃったトヨタ

TOYOTAがアメリカでやらかしてしまって、かなりボコられている。ただし、日本のカイシャだから、ではない。

空気が読めなくて、政治献金をやめる潮時を見誤って、今や「アメリカ最悪の反民主主義企業」とマスコミに書かれている。これから東西の都市部でプリウスボイコットなどの不買運動が始まり、売り上げ激減、株価どん底〜につながりそうな。

日本の企業に限らず、出版社でもこういう目に遭う危険があることは、4月末にHon.jpに書いた。

つまりはこれ↓

...これからはBLM運動の高まりや、白人至上主義者らによる1月6日の国会議事堂占拠、そして保守派の州議会による選挙資格の引き締め法案の影響もあり、トランプ政権のもとでさらに二極化した読者に向けて、早急に立場を明確にし、具体的な行動をとることがよりいっそう求められるようになっていくだろう。

だから私の反応は「あ゛〜、だから言わんこっちゃない」なんだけど。発端となったのはアクシオスのこの記事だな。

Axiosというのは、日本では知名度イマイチながら、5年前にローンチしたニュースサイトで、政治関連のニュースを短くわかりやすくまとめた通信社のようになっている。創設者がPoliticoの記者らだったので、汚職すっぱ抜きのスクープなんかだとNYタイムズやワシントン・ポストなんかよりも早かったりする。

見出しの「選挙結果反対議員への献金はトヨタがぶっちぎりトップ」がわかりにくいかもしれないので補足すると、アメリカではトランプ支持者がいまだにジョー・バイデンが勝ったことを認めず、8月に耄碌したオレンジ野郎が大統領に復帰、という根も葉もない陰謀論を信じている田舎の白人のおっさんが大勢いるんですね。

今年初めのバイデン大統領の承認セレモニーでもバイデン大統領を正式に承認せず、(そんなことをしてどうなるわけでもないのだが。っていうか効力がないのはわかってるけどトランプ支持者に向けて「オレはやるぜ、オレはやるぜ」とハスキー並みの思考でポーズをとったということなんだろうけど)、反旗を翻した国会議員が上下議会合わせて147人もいて(もちろん皆共和党)、そのセレモニーの最中にトランプ陣営にけしかけられたMAGA民が国会議事堂で暴動を起こすという、クーデター大失敗!みたいなことがあったわけです。

その後、アメリカの名だたる大企業200社くらいが「この謀反議員たちに今後政治献金するのはやめます」と声明を出して、実際に献金をストップさせたところが多かったんだけど。トヨタはこれをスルーしちゃったんだな。おいおい、空気を読むのは国技じゃなかったのかい。

トヨタの場合、日本の企業とは言いながら、アメリカ国内で生産している車種も多く、でかい工場がケンタッキー(従業員8000人規模、カムリやアヴァロン、レクサスを作ってる)、ミシシッピ(カローラ)、テキサス(タコマ、ツンドラ)、インディアナ州(シエナ、セコイア、ハイランダー)にある。そして上院でバイデン不信任票を投じた議員のうち、シンディー・ハイド=スミス(ミシシッピ)、テッド・クルーズ(テキサス)は工場のあるところ出身だもんな。

下院議員でもインディアナ4人、ケンタッキーが1人(だけど、上院議長のミッチ・オコーネルもケンタッキーだし)、ミシシッピ3人、テキサスに至っては16人もいるから、この辺りに献金し続けちゃったんだろうなぁ。でもガチ保守派の石油利権まみれのコーク産業でさえ献金したのは7人、他は数人、ってところなのに、トヨタは37人に5万5000ドルというブッチギリの忖度力を発揮しちゃったわけだ。

批判の声が高まる中でトヨタが出したコメントもすごい。

"Toyota supports candidates based on their position on issues that are important to the auto industry and the company...We do not believe it is appropriate to judge members of Congress solely based on their votes on the electoral certification."(トヨタは自動車産業と弊社にとって重要な立ち位置にある政治家をサポートしております。議員が選挙結果を承認したかどうかだけで決めるのはよろしくないかと思っております。)

いやいや、そこで去年の選挙結果が八百長だ、大統領はバイデンじゃなくてトランプなんだとか喚いている頭のおかしい議員にカネ出してますって認めていいのか。そもそも議員をその人の決議投票で評価しなくて、何で評価するのよ?それともナニ?クーデター上等って言いたいの?

というわけで、トヨタさんはリベラル寄りのアメリカのマスコミからはしばらく槍玉に挙げられますね。しかも5万5000ドルぐらいじゃ共和党の保守議員がわざわざ「トヨタは悪くない!」って弁護するわけもなく、トランプ支持民は、まぁあそこの車は丈夫だから乗ってるけど、別にジャパニーズの黄色いお猿どもに応援してもらうつもりはないよ、ぐらいの感謝度となりそうな感じ。

ここで汚名返上したければ、「トヨタは民主主義を基本理念とする企業で〜す。今後、有権者規制法を通す州からは工場を引き上げる覚悟です」ぐらい言えば、テキサスやケンタッキーあたりもビビるだろうし、民主党からの支持や、だったらうちの州に来て、ってオファーも取り付けられるだろうし。まぁこのパンデミックの中でオリンピックをやるくらい、国外の空気が読めないのが日本人、って認識になっていくんだろうなぁ。



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