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「きいろのまち」 ※5/17追記・この物語に曲をつくっていただきました。


ニーナは黄色のまちで黄色のにんげんとして生まれそだちました。
黄色のにんげんのまちでは、まちもひとも、なにもかもが黄色でした。
そのなかでニーナは肌だけが黄色で目と髪が黒色だったのです。
そんなニーナを見るたび父と母はためいきをつきました。
まちをあるけば人々がニーナのすがたを見てはうわさをしたり、いじわるをするので、ニーナは毎日がたのしくありません。
年ごろになったニーナは黄色のペンキをじぶんにぬりつけるようになりました。
すると父と母とまちのひとがやさしくなり、ニーナにはたのしい日々がやってきました。
黄色のペンキでたのしい日々を手にしたニーナでしたが、ある日じぶんの
こころのなかに黒い色を見つけてしまいました。
あわててニーナはその黒い色を黄色のペンキでぬりつぶしました。
「ふぅ、あぶない、あぶない。こんなの見つかっちゃったら、またなにをいわれるかわからないわ!」
ところがしばらくすると、その黒い色はじわりと色を見せたのです。
「しつこいったら!」
もういちどニーナはかさねて黄色のペンキをぬりました。
それだけではしんぱいだったのでニーナはガーゼを黄色にぬり、こころのうえからぺたりとはりつけました。
ガーゼのしたでくるしんでいる黒い色を見てニーナはいいました。
「あんたがわるいのよ! 黄色じゃないんだから」
それをきいた黒い色はなきました。
ニーナもなきました。
ニーナのながした涙には色がありませんでした。
涙はどんどんどんどんあふれてニーナがぬりつぶした目も髪もこころの黄色もとかしていきます。
「やめてやめてやめて」
ニーナはなきながらじぶんの涙にたのみましたが涙はしらんぷりで
すべての黄色をながしさりました。
ニーナはすっかり、もとのすがたにもどりました。
涙もとまりました。
ニーナはこころの色をぬりつぶしていたとき、じぶんのいった言葉が
父と母、まちのひととおなじ言葉だったことにおどろき、悲しみました。
それによく見ればニーナの唇にはうっすらとしたピンク色がありました。
このピンク色はだれからもなにもいわれたことがないので、きたないものかきれいなのかニーナにはわかりませんでした。
でももうニーナは黄色のペンキでぬりつぶそうとはおもいませんでした。
黒色の目と髪はすきにはなれないままでしたが、勇気をだしてニーナは黄色のペンキもガーゼも捨てました。
いつのまにかニーナのこころにあった黒い色はきえていました。


参加させていただいた三羽さんの企画です。
ありがとうございます🍀


ギャングロッカーさんがこの物語に曲をつくってくれました。
ありがとう🍀



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