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豊島


本当は最近猫で有名な男木島(おぎじま)に行こうと思ってたんだけど、直島からだとあまりにも交通の便がわるいので、(高松まで船ででて、それから別の船に乗り換え。待ち時間と乗船時間のほうが長すぎる)今回はあきらめた。何が見たかったかって、大量の猫にあえるっていうことだけだし。高松に滞在する時にするか、直島からの直航便が出ている時にリベンジすることとしよう。というわけでまたまた豊島(てしま)に行くことに。1年半前にも直島と豊島に行った。豊島に行く目的は、豊島美術館、一択。あとはいちごのお店や、島キッチンが行けたら完璧なんだけど。島キッチンはわたしの中ではほぼまぼろしで、なぜかっていうと今は土日しかあいてないから。土日は人がおおいので行きたくない。だから前に行った時に行っといてよかった。古い民家のようなたたずまいで、外の大きな縁側のような場所では、低い屋根がずうっと広がっていて風にあたりながら食事もできる。前に行った時は、中で食べたのだけど。中央がキッチンになっていて、店員さんは地元のおばちゃんたちらしく、そのキッチンを中心にぐるっとかこむようにカウンター席やテーブル席があったと記憶しているんだけど。その時に食べた定食がすごく美味しくて。何だったかは覚えてないんだけど、素朴なような、それでいて豪華な。島のおばあちゃんちに遊びに行って、食事をごちそうになるような感じ。あれがすごく気に入ってずっと行きたいって思ってるんだけどなかなか、開いているときにいけない。開いていても並んでいるし。

それからいちごのお店。新鮮ないちごを贅沢につかったクレープや、夏はかき氷があるらしい。なんといちごカレーも(!)。クレープを以前食べたのだけど、本当においしかった。

直島よりもさらに不便で、コンビニなんかないとおもうんだけど(直島には1件)、でも美術館のためだけでも、関西からでも行く価値はある。気づいたら、今回で4回目だった。はじめていったのは一人で、まだ直島で仕事していたときだった。豊島美術館ができてあまり間も無くて、お休みの日にふらっといった。船をおりて美術館に向かって歩いていると(ちなみに徒歩で軽く30分はこえるだろう。なかなか歩ける距離ではない。)、途中で地元のおじさんに拾ってもらって軽トラでつれていってもらった。今では到底考えられないけど、島にいたときは不思議とそれが普通。むしろ、それを期待して歩いていたっていうのもあったし。笑 しかも、帰りにシャトルバスの運転手のおっちゃんと仲良くなってイルヴェントのカフェ(奇抜な模様のカフェ。)を教えてもらって連れて行ってもらったりもして。(なんかおじさんと仲良くなることが多かった。笑)

初めて美術館に行った時はなんとなく覚えている。秋の日で、スタッフの人にすこしお話しできるくらい観光客は少なくて。何か絵画をみるとか、そういうものじゃないのでこういうインスタレーションはわたしはよくわからないことが多いのだけれど、これはちがう。入った瞬間に、「そうそう、こういうことなんだよ」とわかったような、なんか不思議な気持ちになって、涙がこみあげてきた。あまり言葉で説明したくない感じ。

建物自体が水滴のような形をしていて、つるっとした陶器のようになっている。チケットセンターから小道をわたってぐるっと草木の中をくぐりぬけていくと、真ん中にあるそれにたどりつくようになっている。その水滴のような建物は、天井に穴が二つあいていて、片方からは木々が、もう片方からは主に空が見えるようになっているんだけれど、もちろんなにもさえぎるものがないのでそこからは、風も、雨も、落ち葉も、虫も、全部入ってくる。その時スタッフさんに話をしたときに聞いたのは、毎日全然表情がちがう、ということだった。そして、床にはところどころ水滴がちりばめられていて、湧き水のようにちょろちょろ、とでてくる穴もあれば、水滴がほかの水滴に流れて行って、だんだん大きくなって最終的に跡形もなくおちる穴もある。不思議なくらい、その通り道は濡れてもいないし決まったところをとおっているわけでもない。だから、歩く時はふまないように気をつければならないのだけれど。水たまりの近くにとどまっていると、思いがけず、別の方向から水がさらさらと流れてきて、濡れてしまったりする。

天井の大きな穴のすぐ下の近くに座り込んで、ぼおっと見ている人もいれば、はしっこに寝転んだり、地面の水を延々と追いかけて見てみたり。いろんな風にして鑑賞する人がいる。何時間でもすごせる。音がすごくひびくので、咳をするのもためらってしまうような、厳かな雰囲気でもあり、でもすべてのものを受け入れてしまうような、優しさもあって。耳をすませていると外からは鳥の鳴き声が聞こえて、風の音が聞こえて。

今回行った時は雨が降っていた。それまでにいったときはいつも晴れていたか、くもりだったので、いつもなら雨の日はあまりうれしくはないのだけれど、この日は別だった。天井から雨が入ってきてその丸い形にあわせて地面には水滴がびっしり、のこっている。雨のしとしと降る音と、鳥の鳴き声。やっぱり入った瞬間に、涙がこみあげてくる。前回来た時はなぜか本当に涙がとまらなかった。

思いのまま、いろいろ眺めてみたり、目を閉じてみたり、何も考えないようにしたり。

ふと、ここ最近は常に何かを考えていてずっと忙しかったことに気づく。せっかく来たのだから、今くらいなにも考えなくてもいい。

とはいえ、今回はバスの時間もあるので気の向くまま堪能したあとに帰路へ。島のシャトルバスに乗り、港で降りた後、船の時間まで周辺を散策した。今回はいちごのお店もお休みだったので、直島に帰ってお昼を食べることにした。新しく「横尾忠則館」というものができていたけれど、あとはほぼかわらない。

かわらないと知っていても、また訪れたくなる。

変わっていなくても、その時によって自分の感じ方がかわるのか。

何度行ってもきっとまた訪れたくなる場所。

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