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[Side Story] 久しぶりの帰省①

■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
久しぶりの帰省①

みなさま、
はとばみなとです。

宇宙巡光艦ノースポールは、単に小説の本文を書くだけでは完成しません。何種類かの設定資料を用意していて、必要に応じて参照しながら小説本文を書いたり、本文を書いている時に新しい設定が必要になれば、その都度、設定書に追加しながら、本文を書き進めています。もちろん、登場人物の設定資料も作成しています。

ノースポールの通信オペレータを務める池上舞さんの設定資料も作成してあったのですが、ふと気が付くと、出身地の設定が石川県穴水町になっていたのです。その設定を書いたのは、2年か3年ほど前なので、今年(2024年)の地震以前のことなのですが。

ちなみに、各キャラクタの出身地の設定は本当に適当で、その時々で、

『昨日のキャラクタは東北出身にしたから、今日のキャラクタは九州出身にしよう。』

というような感じで決めています。なので、池上さんの出身も偶然ではあるのですが、ご縁というものはあると思うので、池上さんが久し振りに、ふるさとである、穴水町に帰省するという設定で、Side Storyを書いてみることにしました。

時代的には、私達のいる現在から30年後の未来ですが、やはり、今年、2024年の地震には触れなければならないと思っています。

それでは、読んで頂ければと思います。

2054年6月
石川県穴水町

池上さんは海岸沿いの道路を歩いてました。歩道がきちんと整備されていてきれいな道路です。池上さんはコツコツというヒールの音を立てながら、海岸に沿って緩く右にカーブしている歩道をゆっくりと歩いて行きました。

前の月、5月に、地球の大気圏内ではありますが、シーライオンがテスト飛行を成功させていました。これにより、VMリアクタやドライブパネルなどの未来のテクノロジーの具体的な稼動確認が取れて、プロジェクト全体の計画も一気に具体化されたのです。その中で、ノースポールの発進日程も明らかになりました。もちろん、池上さんも乗り組む予定ですので、故郷のご家族に報告のために帰省したのです。

港が見えてきました。数隻の漁船が接岸していて、漁網や他の荷物の積み込みの作業を行っているようです。空にはカモメが舞っています。海は静かで、まるで、鏡のようです。

「あ、」

池上さん、歩道の少し先に立っている男性に気付きました。海の方を向いて腕を組んで立っています。仁王立ち、ほどではないようですね。

「久地さん。」

その男性が池上さんの声に気付きました。

「おー、舞ちゃん・・・、だよね?」

ちょっと自信なさげです。池上さん、ここ、石川県穴水町には、だいぶ長い間帰ってきてなかったんです。この町は、ふるさとなんですね、池上さんの。

「はい。舞です。」
「はははは。きれいになっちゃって。一瞬、有名な女優さんが来たのかと思っちゃったよ。」
「えー、そ、そうですかあ?」

池上さん、照れてます、照れてます。確かに、着るものを頑張ってコーディネートしてきたようで、それが、お洒落に見えたのでしょうか。

「今日は、もう漁は終わったんですか?」

天気は快晴。風も穏やかで海も凪いでいました。海に出るにはもってこいのコンディションです。

「うん。もうね、引退したんだ、オレは。」
「え? じゃあ、漁師の仕事は?」
「海人が継いでくれたんだ。」
「え、そうなんですか?」

久地海人君。久地さんの息子さんで、舞さんと同い年の男の子ですね。同じクラスだったこともあるそうです。

「へー、偉いなあ。確かに、海人君て海が好きだったですよね。」
「そうだね。それで、金沢の大学を卒業したあと、海の資源調査をする会社に就職したんだ。それが、一昨年に、突然家に帰ってきてさ。漁師を継ぐって言いだしたんだ。」
「ふーん。」

なんでも、資源調査の仕事をしているうちに、漁師の仕事が気になりだしたんだそうです。魚も海洋資源のひとつ、海の恵みですからね。その調査に参加する中で漁師の方の話を聞く機会があったりして、それで、自分の中で、漁師の仕事に対する興味が高まったようです。

「今じゃ、浜菜も漁師になって、2人で漁に出てるよ。」
「えー、浜菜ちゃんもですか?」

海人君の妹さんですね。歳は舞さんより2つ下だそうです。

「そうさ。最初は危なっかしかったし、遭難しかけたこともあったけど、2人とも、今はもう一人前だな。」
「すごいんですねー。浜菜ちゃんて、クマのぬいぐるみを抱きしめて、お母さんと散歩してる姿しか浮かばないです。はは。」
「うん、小さな頃はそんなだったな。」

久地さん、懐かしそうです。そういう思い出って大切ですよね。静かな海岸沿いで、穏やかな時間が流れていきました。

(つづく)


■宇宙巡光艦ノースポール
第1章の第1節から第4節をKindleから電子書籍として販売中です。なぜノースポールは作られたのか、また、小杉とライラはどうしてノースポールに乗り込むことになったのか。そうした、物語の発端となる話を収めています。

よろしければ、読んで頂けますとさいわいです。
よろしくお願い致します。m(_._)m

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2024/04/10
はとばみなと


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