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IPF Japan 2020から考える射出成形機のトレンド(植物性樹脂によるSDGs)

 こんにちは。ちょっと前にはなりますが、11月18日〜20日までオンライン開催されていたプラスチックの展示会、IPF Japan 2020 Virtualの射出成形機に関するトレンドを考えてみました。JIMTOFとも被っておりなかなか見る時間が取れず、遅くなってしまいました。展示会自体は、オンライン上で5月21日まで出展内容を見れますので、まだ見れていないという方や見たけど興味のあるメーカーしかみていなかったという方は是非ご覧になってください。


 EV化や軽量化、5Gや在宅ワーク、医療関係など、樹脂業界はこれからも好景気が見込める分野だと思われます。その中で、このオンライン展示会を通して、今樹脂業界にどのようなトレンドがきているか、どのような最新技術があるかを考えました。樹脂成形の中でも、最も一般的で、様々なものが成形できる射出成形機に特化し、射出成形機メーカー8社がどのようなことを掲げて出展しているかをまとめてみました。

 その中でも特に出展が多かったトピック、及び気になったトピックがこれらになります。(各社のトピックリストは下部にあります。)

1. SDGsを意識した、植物性樹脂での成形の提案(ソディック、東洋機械、ニイガタ、日精)

 石油を使わない様々な植物性樹脂での成形技術の提案が目立ったように思いました。SDGsを意識したものだと思われますが、今まではここまで多くのメーカーが大々的に展示する内容ではなかったので、市場としてのSDGsの広まり、また技術革新が起こっているのだと思いました。
 具体的には、植物性樹脂は流動性が低いことなどから薄肉成形での均一な充填が課題でしたが、各社それぞれの成形機側の技術によって薄肉成形を可能にするという内容等でした。
 この分野は材料がより進化していくと思われ、より植物性樹脂を使用した環境に良い樹脂製品が確実に増えていくため、今後も要チェックしていきたいと思いました。

2. IoT対応、視認性・操作性の高いタッチパネル式操作盤(芝浦、住友、東洋機械、ニイガタ、日精、日本製鋼所)

 成形機も数年前から操作盤がタッチパネル式に変わってきてはいますが、最新のソフトウェアを搭載したIoT対応のタッチパネル式操作盤を展示しているところも多くありました。
 主な特徴は、視認性がよく成形条件や金型条件など様々な情報がわかりやすい、アイコンなどで直感的に使える操作性、IoT対応であるといったところです。JIMTOFよりもIoTを押しているところが多いことが少し驚きました。成形条件はもちろん、周辺設備とリンクさせて様々な情報を遠隔でも確認・管理できるとう内容でした。


3. ガス対策(芝浦、住友、ソディック、東洋機械、ニイガタ)

 これらの技術も数年も前から発表されているものではありますが、ガス対策を展示しているところも多く、まだまだ樹脂成形の大きな課題の一つであると感じました。芝浦、住友、東洋機械は、スクリューの特殊設計により低せん断でガスの発生を抑制しており、ソディック、ニイガタは孔を開けてガスを排出する方法でした。ソディックはその穴から樹脂がでないようスクリュー回転速度や材料供給速度をAIで自動制御する機能がありました。

4. 高精度型締・型締力の均一化(芝浦、住友、東洋機械、ニイガタ、日本製鋼所)

 各社様々な方法で型締力の均一化をはかり、高精度な型締を実現していました。これらの技術で、薄肉成形でも均一な型締を可能にします。
芝浦 コアバック動作を自動制御
住友 保圧中スクリュ後退自動速度制御、高応答型締圧縮装置、高精度えジェクタ圧縮
東洋機械 平行度調整機構、ダブルタッチ機構
ニイガタ Mサポートシステム、BPF制御
日本製鋼所 型締力フィードバック制御

5. 自動化、他工程のシステム・集約化(芝浦、ソディック、ニイガタ、日精、ファナック)

 自動化にも様々な方法が提案されていました。多軸ロボットを使った自動化がしやすいような設計(低床化)であったり、型替えを自動で行うシステム、さらに前後工程も合わせたシステム化等様々な展示がありました。
芝浦 前後工程の機械、システムアップ
ソディック 竪型成形機の自動化、カセット型を使用した全自動成形システム
ニイガタ 三菱電機のロボットを使用した自動化システム
日精 低床化、省スペース化
ファナック 自社多軸ロボットによる自動化

6. 多かった製品、成形例

 今回の展示で多かったサンプルワーク、成形の例は、薄肉成形になります。スマホや電子部品、各種容器向けと思われますが、薄肉成形での高精度な成形を押しているところが目立ったように思います。その他は、自動車部品用スーパーエンプラやコネクタもありました。住友はそれらの製品ごとの成形技術・適した成形機を展示していて、展示内容が顧客目線であると思いました。


感想

 IPFでこれらの展示をみて、技術的な解決法が展示されている課題は、ガスであったり、型締力の均一化、温度制御等、ある意味昔からの課題でもあるので、まだまだ射出成形機の技術開発要素は残っているのではないかと思いました(金属加工機の場合、より周辺の自動化、ソフトウェアの自動化にシフトしていると考えていることと比較して)。そのため、今後も細かい技術の開発、標準仕様化が進んでいくのではないかと考えました。そして各メーカーそれぞれ解決法の考え方が違うため、それぞれ顧客ごとに自社の製品や課題にあった機械を選定する必要があると考えました。
 またSDGs関係の展示が多いことからも、おそらく大手企業中心に市場ニーズとしても出てきていると感じ、今後は非常に早いスピードで材料の脱石油化、成形機の省エネルギー化がより進んでいくと感じました。
 自動化という面では、多品種なワークが増えるので、様々な大きさの成形機で、型替えの自動化が進むと感じました。東洋機械のキヤノン製によるマルチモールドシステムや、ソディックのカセット型システム等、周辺装置や複数企業と連携した、型替を自動で行うシステムが今後増えてくると考えました。これらの項目に注目して今後の樹脂業界をみていきたいと思いました。

本日も最後まで読んで頂きありがとうございます。

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