Fiat24のWeb3 Banking Protocol(Web3の銀行プロトコル)を理解する
Fiat24がWeb3を利用した銀行システムのプロトコルを開発しています。
裏側の仕組みを調べたところ非常に良い設計だったので、情報をシェアしたいと思い、この記事を書きました。
というわけで、今回は
Fiat24のWeb3 Banking Protocol
を紹介します。
具体的には
Fiat24とは
Fiat24のメリット
設計
日本円の対応
について説明します。
*この情報は2024年5月時点のものであることに注意してください。
Fiat24とは
Fiat24は
送金と決済を合理化するグローバルな決済アプリ
です。
Fiat24は、顧客台帳を記帳する新たな手段としてブロックチェーン技術を活用し、顧客に現金口座と決済サービスを提供しています
パブリックブロックチェーンである、イーサリアムレイヤー2ネットワークのArbitrumを利用してFiat24は瞬時に送金を行い、新しい支払い方法、支払い方法、換金方法を提供しています。
これは時代遅れのレガシーシステムに取って代わる先駆的な方法で、人為的ミス、操作、効率、人員などの中核的な側面を根本的に改善します。
Fiat24は分散型アプリ(dApp)なので、ブラウザやお気に入りの暗号ウォレットからアクセスできます。それゆえ、アプリの導入が不要です。
これはあなたのスマホが銀行アプリで埋め尽くされるのを防ぎます。
従来のインターネットバンキングでは、ユーザーはユーザー名とパスワードを使って銀行口座にアクセスし、通常はテキストメッセージ(SMS)を受信して取引確認コードを取得し、支払い注文を完了します。
すべての顧客データと取引記録は銀行のバックエンドデータベースに保存されているので、単一障害点にさらされるリスクを抱えています。
しかし、Fiat24のプラットフォームでは、全く異なるアーキテクチャで設計しています。
顧客は一意のNFT(Non-fungible Token)を保有し、このNFTを通じてアイデンティティを表し、従来のユーザー名とパスワードを完全に捨てて現金口座にアクセスします。
これはユーザー名とパスワードを使ったり、SMSを使う認証よりはるかに安全です。
また、銀行休業日や週末などの制約を受けることなく、常に顧客はバンキングサービスを利用することができます。
休日前に銀行に行って、あらかじめお金を引き出しておく必要はありません。
ブロックチェーン技術の性質により、顧客は24時間365日、Fiat24のサービスとやり取りし、利用することができます。
Fiat24は、BDOスイスの監査を受けたコンプライアンス・インフラとプロセスにより、従来の金融機関と同様のAML要件をすべて満たしているので安全性も保証されています。
Fiat24のメリット
Fiat24は従来のバンキング サービスとWeb3ブロックチェーン決済イノベーションをシームレスに統合することで、利便性を高めると同時にセキュリティを強化し、単一障害点のリスクを回避しています。
Fiat24を通せば
顧客はMetaMaskまたはその他の非保管暗号ウォレットに保管されている暗号資産を法定通貨の出金、交換、毎日の暗号消費の支払いに使用でき、 VISAが受け入れられる場所ならどこでも暗号資産を使用できるようになります。
これは社会に革命的な変化を引き起こすでしょう。
なぜならFiat24を使えば
暗号通貨で日々の買い物ができるようになる
からです。
現状、暗号通貨を店舗で利用するには、暗号通貨を法定通貨に換金して銀行にプールしておくか、現金にして財布に入れておく必要があります。
しかし、Fiat24を使えば、ウォレットに入っている暗号通貨をその場で法定通貨に換金してクレジットカード経由で利用できるので、いつでも暗号通貨を利用することが可能です。
これは暗号通貨の実用性を大きく向上させます。
暗号通貨はボラティリティが大きいので安定的な通貨として利用するのには向きませんが
支払い時に必要な額だけを換金して利用できる
のであれば使い道はそれなりにあるはずです。
他にもFiat24は、金融機関の業務効率を大幅に向上させることができます。
これを可能にしているのは、既存の銀行との設計の違いです。
既存の銀行とFiat24の比較を、具体的な表にしてみます。
Fiat24では、特定の項目がブロックチェーン技術を使うように置き換わっていることがわかります。
このことは
分散型台帳技術とも呼ばれるブロックチェーン技術が、そもそも会計に適した設計になっている
ことから実現しています。
現在の世界では、各銀行が台帳を持っているのが一般的です。
台帳はたくさん存在していて、これらの何万もの台帳をエラーなく完全に同期するには、非常に高いシステム要件が必要です。
そのため、多くの銀行がシステムの設計、構築、運用に多額の費用を投じています。
しかし、ブロックチェーンのアトミックスワップ特性は完璧なので、この問題を解決できます。
この問題を解決すると、銀行業務で必須の内部調整の必要が激減します。
これにより、銀行金融機関の業務効率が大幅に向上し、労力が節約されます。
例えば、同じ日の取引量でも、DeFiのUniswapの従業員はわずか10名ですが、集中型取引所では数百人、場合によっては数千人の従業員が必要になります。
これは、サービス運営費に大きな差が生まれます。
また、ログインとパスワードというwebの不完全な仕様が取り除かれるのも大きなメリットです。
Fiat24はユーザーの認証にNFTを使います。
Fiat24は登録とKYC審査(本人確認手続き)に合格したFiat24NFTユーザーのみが、このNFT アカウントを通じて銀行口座に接続できます。(現在はスイスのみ)
ログインとパスワードを使うシステムのセキュリティ強度は、どうしても利用者のセキュリティに対する意識によって左右されますが、NFTアカウントを使用するこの方法は、従来の銀行口座とパスワードを完全に放棄するので、セキュリティ強度に個人差が生まれません。
これは間違いなく従来の銀行にとって革命的です。
このようにFiat24は、現在有効なweb3の技術をうまく活かしながら既存のシステムと連携することで、資金決済の合理化を成功させています。
* NFTは2021 - 2022年に発生したNFTバブルのイメージで、デジタルアートの売買イメージが強いですが、実際は認証や資産のトークン化でその真価を発揮します。
将来有望なNFTに利用方法について知りたい人は以下の記事も参考にしてください。
設計
次はFiat24の設計を見ていきましょう。
Fiat24の設計に関しては、私が実際のコードまで追ったわけではないのですが、色々な情報をまとめると設計の方向性が見えてきたので、それをシェアする形を取ります。
例えば、イーサを入出金する場合だと
Uniswapプロトコルを呼び出してETHをUSDCに変換
独自の出金チャネルのスマートコントラクトでUSDCをUSDにして入金/出金する
いうフローになっているようです。
つまり、暗号通貨の入出金時に、リアルタイムでステーブルコインから法定通貨に変換して入金/出金処理を行う
という仕組みです。
逆にいうと、
暗号通貨を暗号通貨としてFiat24に預ける
という機能は備わっていません。
なので、暗号通貨自体はウォレットや取引所で管理する必要があり、Fiat24はあくまで暗号通貨の換金方法を提供し、その機能を既存の支払い方法とシームレスに連携している
ということです。
この仕組みの良い所は
シンプル
他のシステムと連携が容易
ということでしょう。
例えば、上記のフローにクレジットカードなどの支払いチャネルを加えれば、買い物の支払いでETHなどの暗号通貨が利用できるようになります。
実際、Fiat24ではETHを使ったクレジットカードの支払いに対応しています。
この仕組みであれば、ドルを使った決済も可能になります。
また、ドル以外の決済でも、安定した法定通貨のステーブルコインがあればFiat24の設計を応用して対応が可能になります。
シンプルで応用も効きやすい非常に良い設計だと思います。
日本円の対応
我々日本人が気になるのは、Fiat24が日本円に対応しているかということです。
結論から言うと
現在は対応してません。
現状のFiat24はドルとユーロのみの対応で、利用可能なユーザーもスイスに口座を開けることができる人のみになります。
しかし、将来的には、この仕組みが日本に導入される可能性もあります。
しかし、現状は適用すら不可能で、特にハードルが高いのは
安定的な日本円のステーブルコインがない
日本の法律を変更し、暗号通貨の仕組みに合った新しい法律を作成する必要がある
の二つになります。
また、日本という国の特性上、Daoで運用されるステーブルコインが生まれるとは思えず、結局銀行が全部を担うことになるのではないでしょうか。
そもそも日本のDaoは政府によって細かく法律を定められていて、世界の他の国とはルールが異なります。
Fiat24という黒船の到来で変化を期待したい所ですが、現状の日本の金融機関の仕組みを考えると、日本円の対応は、なかなか難しいのではないでしょうか。
まとめ
今回は
Fiat24のWeb3 Banking Protocol(web3の銀行プロトコル)を理解する
という記事を書きました。
まとめると
Fiat24はブロックチェーンを使った送金・決済アプリで、既存の銀行より各タスクが大幅に効率化されている
L2・NFT・uniswap・smart contract・chainlinkといったweb3では枯れた技術を使って、既存の仕組みと上手く連携している
日本円には対応していないし、たとえ導入したとしても時間がかかる
ということです。
ブロックチェーンの登場時
「ブロックチェーンによって金融革命が起きる」
と一部のメディアや識者が騒いでいましたが、2024年現在でも特に劇的な変化は起きていません。
その理由は、実際に既存金融のブロックチェーン化に取り組んでみると、技術的な問題や法の問題が次々と発生し、なかなか先に進むことができなかったからです。
しかし、時間が経つにつれて徐々にブロックチェーン技術は進化し、以前では不可能だったことも今は可能になってきました。
今後、ブロックチェーン技術はさらに洗練されていくはずです。
本記事でも紹介したように
ブロックチェーン技術は、そもそも会計に適した設計になっています。
なので、既存システムとweb3の連携はどんどん進んでいくでしょう。
そして銀行との連携においては、Fiat24がその動きの中心となっていくと思います。
今回の記事が今後のあなたの考えの参考になれば幸いです。
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