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運転期間を巡り、今日臨時原子力規制委員会

2月10日(金)の閣議で、GX基本方針とそれに連なる束ね法案の一つ「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」いわゆる「GX関連法案」が閣議決定された。

岸田内閣はGX基本方針を強行に閣議決定

繰り返すが、パブコメにかけられた「GX実現に向けた基本方針」案には以下のようにあった。

既存の原子力発電所を可能な限り活用するため、原子力規制委員会による厳格な安全審査が行われることを前提に、運転期間に関する新たな仕組みを整備する。現行制度と同様に、運転期間は40年、延長を認める期間は20年との制限を設けた上で、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとする。

「GX実現に向けた基本方針」案 P7

閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」では微修正されて次のようになったが、内容に変化はない。

既存の原子力発電所を可能な限り活用するため、現行制度と同様に、「運転期間は 40 年、延長を認める期間は 20 年」との制限を設けた上で、原子力規制委員会による厳格な安全審査が行われることを前提に、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとする。

「GX実現に向けた基本方針」P7〜8

8日の原子力規制委員会では、一人の委員から「経産省資料に基本的に40年60年の枠組は維持すると書かれている」、「今の炉規法をわれわれ原子力規制委員会が進んで改正する必要性はない」と安全審査制度案に反対意見が出ていた(既報)。岸田内閣は、その結論を待たず、反対意見と相反するGX基本方針を閣議決定してしまった。

民意不在の原発回帰に抗議会見

閣議決定直後には、原発回帰政策を批判してきた有志が「民意不在、原発回帰のGX推進法に抗議する」との共同記者会見を開いた。その一人、原子力資料情報室の松久保肇さんの意見は次のようなものだ。

「第1に、GX基本方針で掲げる原発回帰策は、ウクライナ危機、脱炭素、電力ひっ迫のための解決策にもならない。再稼働をできないのは理由がある。工事が完了していない、地元了解が得られていないなどだ。建て替えるといっても、建設開始は2030年前半と言われ、欧州の例では建設期間が延びて10年〜15年以上かかる。2050年までに約1.5℃に気温上昇を抑えるいわゆる「1.5度目標」はまったく達成できない。

第2に.安全性が大前提だと主張しているがそうなっていない。福島第一原発事故の教訓を踏まえて、推進と規制は分離されたが、エネ庁と規制庁は運転期間の延長について昨年7月からこっそり相談を繰り返していた。原子力規制委員会は10月5日に議論を始めた演技をし、西村経産大臣はフルオープンでやっていると発言していたが、まったく違った。規制と推進は一体化し、安全はないがしろだ。

第3に、国民意見を聞いていない。原子力規制委員会のパブコメでは運転期間延長に反対意見が多かったが聞きおかれ、経産省の説明会はまだ開催途中で、意見を反映しないという。GX基本方針を作成したのはGX実行会議だったはずだが、閣議決定前には開催されず、パブコメさえ共有していない。この会議はなんだったのか。

結局、原発の運転期間延長も、再稼働も、新設も、2030年代前半の先の話であり、なぜ、今これを決めなければならないかがわからない。ウクライナ情勢とか資源価格高騰とかをダシにして、原発回帰を果たす方便だったのか。」

立法事実は事業者からの要望

閣議決定の前日9日に署名「原発運転「原則40年」削除の撤回を!」が提出(既報)された後には、市民団体が経産省と原子力規制庁と質疑を行った。

「原子力規制委員会が運転期間を手放す理由はないではないか」「立法事実はなんなのか」と合理的な説明を求められたのに対し、資源エネは「電力ひっ迫、直近のウクライナ危機、気候変動の観点から、あらゆる選択肢を追求する必要がある」と、原子力規制庁は「原子力規制委員会の令和2年の見解が」と繰り返すばかりだった。

「令和2年の見解」は原子力産業界が、安全審査などで停止している時間を運転期間から除外してほしいという要望に対して出されたものだ。山中原子力規制委員長は8日の記者会見で、「業界の要望が立法事実ではないか」との筆者の問いに、「令和2年の見解」は「きっかけ」だと回答したが、それこそが立法事実だ。

2月13日に臨時会議

2月8日の原子力規制委員会で、山中委員長は結論の出なかった「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)」について、来週も引き続き議論をすると述べた。そして、今日2月13日(月)18:30から臨時会議が開催されることになった。議題は「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第9回)」。意見がまとまらなかったらどうするのかは8日の記者会見でも問われた質問であり、注目すべき点の一つだ。

【タイトル写真】

第 72 回原子力規制委員会 臨時会議の開催のお知らせ より

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