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隠されていた「内部情報」に関する規制庁弁明

原子力規制委員会での検討開始前から、経産省と原子力規制庁の間で、原発の運転制限を経産省の法律に移す調整があったことについて、規制庁の担当課長が12月27日の定例ブリーフィングの中で弁明を行った。

各紙報道がなされているので、そこにはない詳細を記しておく。

驚きの説明の数々

原子力規制庁定例ブリーフィング →令和4年12月27日の資料2「運転期間の見直しに係る資源エネルギー庁とのやり取りに関する経緯について」(令和4年12月27日原子力規制庁)を見ながら動画を聞いて欲しい。

原子力規制庁定例ブリーフィング(2022年12月27日)

「事前に検討した経緯が存在しない」は真っ赤な嘘だった

・・・と、この会見で分かった驚きの数々を書き連ねていく前に、驚きもしなかったこともあるので先に書いておこうと思った。官僚は嘘をつくという事実だ

しかし、書き始めてみると、やはり深刻だ。鈍感になってはいけない。驚くべき事実として記録しておかなければと思い直した。箇条書きで書いておく。

  1. 運転期間の制度変更について、原子力規制委員会での検討開始前から、経産省と原子力規制庁(以後、規制庁)の間では調整されていたことを示す内部情報が、NPO法人原子力資料情報室にもたらされた。

  2. 原子力資料情報室は、文書の存在を知った上で、規制庁自らが行政文書としてその文書を公開せざるを得なくなるよう、次のように情報公開法に基づく請求を行った。「原子力規制委員会・規制庁における原子炉の運転期間延長に関する検討資料一切(2022年4月〜11月末まで、原子力規制委員会及び原子力規制庁内での検討、関連省庁や被規制対象者などの外部とのやり取りなど)

  3. これに対して、原子力資料情報室は、請求した文書が「事前に検討した経緯が存在しない」と原子力規制企画課より電話で告げられる。

  4. そこで、原子力資料情報室は、12月21日正午過ぎに緊急記者会見を行なって、その「存在」を記者たちに知らせた。

  5. 21日午後の原子力規制委員長定例会見は紛糾。情報の中身はほぼ確かめられた。文書の存在も確認するよう多くの記者たちが会見中も会見後も求めた。

  6. 求めに応え、27日の規制庁ブリーフィングで担当課長らが出してきたのは、原子力資料情報室が示した内部資料そのものだった。また原子力資料情報室が開示請求で求めていた「事前に検討した経緯」の説明も、問題の内部資料が作成された経緯として、資料(7月27日時点分以降)と共に行われた。

  7. こちらでも書いておいた通り、官僚は、知られたくない情報を開示請求された際、事実に反して「不存在」という嘘を文書ではなく、電話で連絡する場合がある。そのオーソドックスな隠蔽の手口が今回、使われたことになる。

 緊急記者会見 資料 原子力規制庁の運転期間延長事前検討問題 より

嘘の重さ

事態は深刻だ。単なる嘘ではないからだ。国家公務員が嘘をついた、この場合の深刻さは次の通りだ。

  • 情報公開法は、誰もが行政機関の保有する行政文書の開示を請求できる「開示請求権」(第3条)を定めている。しかし、規制庁は、存在するものを「ない」といった嘘で開示請求者の権利を侵害した。法律違反を犯したのだ。

  • 情報公開法は、行政機関の長は、開示請求があったときは、不開示情報が記録されている場合を除き、開示請求者への「開示義務」(第5条)がある。つまり規制庁は、嘘によって義務から逃れようとした。

原子力規制委員会にも嘘、国民にも嘘

そして上記画像の行政文書開示請求書の「宛先」を見てほしい。

  • 情報公開法では、開示義務は「行政機関の長」にかかっている。今回の場合は、「行政開示請求書」の宛先は「原子力規制委員長」だ。原子力規制企画課は、原子力規制委員長に代わって嘘をついたことになる。

  • 問題は「原子力規制委員長に代わって嘘をついたこと」を原子力規制委員長が知っていたか、または指示したかどうかだが、答えは否(いな)だろう。なぜなら、原子力規制委員長が運転期間延長に関する検討を規制庁に指示したのは10月5日の原子力規制委員会だったからだ。その事前に検討した経緯があってはおかしいのだ。

  • つまり、規制庁原子力規制企画課は、開示請求を行った原子力資料情報室に「事前に検討した経緯が存在しない」と嘘をついた瞬間、原子力規制委員長にだけでなく、10月5日の原子力規制委員会を傍聴・取材していた人にも嘘をついていたことになる。

  • 逆に言えば、原子力規制委員会の席で、これから検討するそぶりを見せた嘘がバレては困るので、開示請求に対して事前に検討した経緯はないと嘘の上塗りをする必要が生じてしまったとも言える。

全ては検討済みだったのに、茶番劇を見せられていた。原子力規制委員会も国民も騙されていたことになる。

12月27日に行われた弁明で明らかになった驚きの数々を書き連ねて行こうと思っていたが、国家公務員による「情報公開法」違反は許されるべきではないので、今回はこの件を強調するために、この点だけにとどめておく。

続きを別途書く。(翌日28日の原子力規制委員長会見でも、さらに愕然とすることが判明してキリがないが。)

【タイトル写真】原子力規制庁資料

こちらからダウンロード ハイライト部分は筆者加筆
https://www.nra.go.jp/data/000415345.pdf

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