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審査も点検もすり抜け:「もんじゅ」と高浜原発の共通点 #GX

高速実験炉「常陽」について書いた中で、原型炉「もんじゅ」は、冷却材のナトリウム火災が起きて先に廃炉が決定したことを書いた(*)。すると、ナトリウム漏れの原因についてコメントをいただいた。

原型炉「もんじゅ」のナトリウム火災の原因、改めて

火災の原因となった「ナトリウム漏れ」がどう起きたのかは忘れていたが、そのコメントをもとに、改めて調べた。なんとか検索しまくって、以下にたどり着いた。

事故当時の事業者「動力炉・核燃料開発事業団」(現、日本原子力研究開発機構発機構)が内閣府の原子力委員会に報告した内容だ(便利な世の中だ)。
「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故の概要 
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/koso/siryo/koso01/siryo07.htm

この報告によれば、
・「ナトリウム漏えいは2次主冷却系Cループ中間熱交換器出口配管に取り付けられている温度計から漏れ出た」。
・「温度計の破損原因は配管内の流れによって温度計の細管部に振動が発生し、このため温度計の段付部が高サイクルの疲労を受け破損した」

設計「不適切」と審査で指摘できず

そして、なぜそうなったのか。恐ろしいことが書いてある。
・「米国機械学会の基準を正確に理解しないまま適用したこと、温度計の段付部に丸みを付けなかったことが分かり、設計が不適切であり、また、動燃における設計の審査においてその問題点を指摘できなかったことが分かりました。」

出典:内閣府原子力委員会「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故の概要(動力炉・核燃料開発事業団)  

事故翌年の原子力白書には、漏えいが起きた箇所も図解説明している。

出典:1996年原子力白書第1章

他の原発(ハード)や規則(ソフト)に反映は?

原子力委員会に報告されたことが、常陽や他の原発に反映されているか?規則にも反映されているのか? 調べなければ。

常陽はパブコメ中でもある(パブコメサイト締め切り6月23日夜中)。

建設時も特別点検でも点検で見つけられない:高浜原発

もんじゅの事故原因は、高浜原発4号機の問題とも通底するところがある。
つまり、原子力規制委員会は、4号機の燃料棒落下を「老朽化」問題ではなく(接続部はんだ付け部分はいまだに物理的に未確認のまま)、「建設時の施工不良」だとした(既報)。しかし、それならそれで、37年前および延長申請前の特別点検でも見つけることができなかった問題は重視されて欲しい。それと同じだ。

稼働前の審査も、老朽化の点検もすり抜ける

事業者の設計や施行ミスが規制者に見過ごされて運転が始まり、時間の経過とともに、事故の発現でそれが発覚することがある。だからこそ、「運転期間」は安全規制として必要であり、今日、参議院本会議で賛成多数で可決されることになる原子炉等規制法案と電気事業法案は、将来に向けて大きな禍根を残すことになる。

*原型炉だった高速増殖炉「もんじゅ」で「1995年12月8日、ナトリウムが原子炉補助建屋内に漏えいし、火災が発生した。漏えいは3時間以上にわたり、総量で約0.7トンのナトリウムが漏えいした」と、1996年の原子力白書第1章で書かれているが、まとめて「ナトリウム漏れ事故」と称されることが多い。私は「ナトリウム火災」と今後も呼んでいきたいと思う。

【タイトル画像】

内閣府原子力委員会「もんじゅ」ナトリウム漏えい事故の概要(動力炉・核燃料開発事業団) より


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