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原子力災害対策指針見直しに関する論点提起

1月30日、「原子力災害対策指針の見直しZoom勉強会」(1月20日)で約3分ずつ提起された論点を、原子力規制委員長、原子力規制庁長官、原子力防災会議議長、原子力防災会議幹事会議長に、Webゆうびん速達にて提出しました。

内容は以下の通りです。


原子力災害対策指針見直しに関する論点提起


原子力規制委員長 山中伸介 様
原子力規制庁長官 片山 啓 様
原子力防災会議議長 岸田文雄 内閣総理大臣
原子力防災会議幹事会議長 松下整 内閣府政策統括官

2024年1月30日
「原子力災害対策指針の見直しZoom勉強会」呼びかけ人
吉田千亜/まさのあつこ/他参加者

 1月1日の令和6年能登半島地震は、原発立地および周辺自治体や住民に衝撃を与えました。原子力規制委員2人が行った13日の女川原発視察の際は、関係首長から「能登半島の地震の経験を踏まえた屋内退避というものがそもそも成立するのか」「孤立地域に対してどうやって対応するか」と問われたと、杉山智之委員が報告、山中伸介委員長も「能登半島の地震では、家屋が倒壊をしたり、集落が孤立したりという状況(略)での原子力災害という複合災害の問題、これは非常に重要な問題である」(原子力規制委員会1月17日議事録P34)と発言。原子力規制委員会における「原子力災害対策指針」(以後、指針)の見直しに向け、原子力規制庁が論点整理をすることになりました。

 以下は1月20日に開催した「指針の見直しZoom勉強会」の参加者が約3分ずつ提起した論点や課題です。今後の論点整理と討議、原子力防災会議への反映をお願い致します。
 さらに、規制庁の論点整理の前までに、原発立地・周辺自治体および避難先自治体との公開協議や、一般国民を対象とした公聴会の開催も実現させてください。

1.自治体および職員体制について(現在の指針P11〜)

  • 原子力防災担当が少なく、在任期間が短く、代替わりし、対応能力が落ちている。

  • 指針に基づく「原子力災害対策マニュアル」も何度も改訂され、追いついていない。

  • 今回は少人数の職員しか参集できなかったとの報告がある。

2.警戒事態等に際しての判断、通信および要員参集について(現在の指針P6〜)

  • モニタリングポスト欠測と通信途絶による警戒事態、施設敷地緊急事態、全面緊急事態の判断、通信および避難・避難準備指示の困難性・不能性。

  • 要員参集の困難性・非現実生(道路寸断、通信断絶他)。

3.屋内退避と避難について(現在の指針P7〜)

  • 携帯/固定電話の不通、停電などによる情報途絶。

  • 家屋倒壊や一部破損で屋内退避は成立しない。

  • 地域に耐震構造の放射線防護施設があっても土砂崩れや道路寸断で到達不能の可能性。

  • 「のと里山海道」など緊急輸送道路(避難、物資供給、緊急車両用)を含めた道路寸断、地盤隆起による避難(二段階避難も含む)の非現実性。

  • 柏崎刈羽原発周辺では、津波避難だけでも道路渋滞で避難が困難。積雪時は避難不能に。

  • 避難先予定が被災し、避難しようにもできない。

  • 停電等によるガソリンスタンドの給油機能喪失(住民拠点サービスステーション不機能)

  • 津波被害や海岸隆起による海路断絶。

4.スクリーニング(避難退域時検査および簡易除染)について(現在の指針P71~)

  • 道路寸断、断水、停電、渋滞、要員対応力から不可能。

5.安定ヨウ素剤について(現在の指針P58〜)

  • 5キロ圏:事前配布とされるが、家屋倒壊、津波から避難しながらの服用は不可能。

  • 30キロ圏:自治体の備蓄を職員が避難途中の住民に拠点配布するのは道路寸断で不可能。

  • 適時服用(ヨウ素摂取24時間前から6時間後)指示やその他の核種暴露低減効果の限界。

6.実働組織による避難・救助の不可能について(現在の指針には欠如)

  • 警察、消防、海上保安庁、自衛隊による陸路、海路、空路等による即時避難・救助は、いずれにおいても、複合災害発災時には望めないことが今回、明白になった。

  • 石川県の原子力防災訓練ではヘリコプター利用の想定(①除染しきれない住民を県立中央病院へ搬送、②孤立住民の避難)はあるが、着陸できる場所は孤立集落には存在しない。道路寸断で集合場所(距離のある学校等)にたどり着けない。

  • 実際に、今回は志賀原発の30キロ圏内で400人が8日間孤立していた。

7.原子力総合防災訓練(現在の指針P64〜)

  • 震度6強地震の複合災害を想定した訓練でも、道路損壊は1箇所だけの非現実的な訓練。

8.原子力防災会議のあり方について

  • 原子力防災会議(議長:内閣総理大臣)では、どの「緊急時対応」についても、原子力規制委員長が「原子力災害対策指針に沿った具体的かつ合理的なものである」、防衛大臣他関係大臣が「支援」等を表明し、了承する。しかし、避難バスの乗り場が津波の浸水区域にある等の見落があるなど、そのあり方には重大な欠陥がある。

9.指針見直しの限界

  • 能登半島の状況をみれば、上記の論点すべてを見直し、自治体の「緊急時対応」や「避難計画」を書面で、原子力防災会議が了承したとしても、それは実行不可能である。すると、現在の指針以上に「避難しなくてよい」方向へ政府方針が向かう懸念が強く、それは国民の生命・健康を蔑ろにすることにしかならない。

以上。

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原子力災害対策指針(最新の2023年11月1日版)はこちら

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