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刺繍が好きだ

学部生の時、ど真ん中でコロナ禍だったので、半年ほど実家に帰省していた。アルバイト先も休業になったり、大学もリモートだったりで東京にいる意味がなくなったからだ。

そんな、やりたいことも特に見つからないまま、ぼんやりとテレビを見ていた時だった。それが、出会いだったのかもしれない。
たまたま、中央アジアの刺繍の特集番組を見たのだ。田舎だったから、再放送なのかもしれないが、自分にとっては衝撃的な出会いだった。

あくまで当時のイメージだけれど、「トゥス・キーズ」と呼ばれるその刺繍は、とても精緻な技術で作られており、今にも消えてなくなりそうな儚さがあった。模様一つ一つに意味があり、全体で子孫繁栄を願っている刺繍に胸を打たれたのだ。

今では見えない壁のある人と人との関係が、密になっているような遥か昔の家族の姿がくっきりと見えるような願いの形が、とても愛おしかった。

言葉に表すと軽薄に見えてしまうかもしれないけれど、私はその番組を見て一つの小説を書いた。

それが3年生のゼミで発表した「トゥス・キーズ」だった。

https://ncode.syosetu.com/n3049hf/1/


良ければ色んな人に見ていただきたい、個人的には結構な自信作である。そこまで長くないので是非にと言う具合だ。

その後、これで満足してるのもなと悶々と考えている間に、ちょっとした時間が流れ、引越ししたてで、友達とシェアハウスを始めた新生活が始まったばかりの頃、実際にトゥスキーズが見られるイベントがあるらしく足を運んだ。

写真を撮るのが苦手なので微妙なアングルなのだが、手に取りながら間近で見ることができて、とても嬉しかった。
馬頭琴の演奏も聴かせていただけたり、様々なお話を聞かせいただけたりで、とても充実したイベントになった。モンゴルの民族衣装も着させていただいた。また、リモートではあったけれどウズベキスタンの方の楽器の演奏も聴くことができて、思い出になったことを今でも覚えている。

その頃はトゥスキーズにも「花の柄があった」というのをテレビで見ていたので、「これにはお花の柄はないんですか?」となんとなく質問したところ、イベントにいたウズベキスタンの雑貨屋さんのお姉さんに「シルクロードを渡ってウズベキスタンの刺繍に影響されたからあるだけで、元々はこういう模様だけなんですよ」的なことを説明された気がする。ついでにウズベキスタンの刺繍である「スザニ」なら、花の模様が多く刺繍されているという情報も教えていただき、初めて「スザニ」に出会ったのだ。

次の小説は「スザニ」をモチーフにしたファンタジー小説にしようと思いたったものの、元々調べ事が下手で、大学の論文指導の授業でも手こずった自分からすれば生のスザニにたどり着くことも難しく、コロナ禍の影響もあり中々お目にかかれることができなかった。

それから数ヶ月後、谷中に友達とトルコ絨毯を見に行く機会があり、やっぱり中央アジアが好きだ!となった。日本にはないデザインのエキゾチックな雰囲気が好きなのだ。

で、それまた期間を空けずにペルシャ料理を食す機会があり、めちゃめちゃテンションが上がった。中央アジアの料理は美味い。アルバイト先のネパール人と同じしていても、やっぱり行きたいし調べたい気持ちは止まらなかった。

その間にウズベキスタン大使館で世界遺産に関するイベントがあり、抽選で受かったのでいそいそと向かうことになる。

ここでやっと生のやっとスザニが見られた!柔な雰囲気とお花と果実が描かれた可愛らしい刺繍を見れて嬉しかった。それと、ウズベキスタンの料理もいただくことができて、世界遺産そっちのけで楽しんでしまった。「どんな表情してるの?」みたいな陶器の置物も可愛かった。

この後に行ったカザフスタンのイベントで、「袖なしが女性用の民族衣装」だよと教えてもらった気がする。ベレー帽のような帽子も、いつか手に入れて被ってみたいと感じた。

そこからうまく先行研究が探すことができず、また数ヶ月が経ち今年の2月頃、なんとスザニが体験できるイベントがあると耳にした。

それは行くよね体験するよねってことで、ズフロさんというウズベキスタンの刺繍作家さんが来日されている「ウズベキスタンの刺繍とスザニ展」イベントに行って来た。ありったけの刺繍を見て、ありったけズフロさんの手つきを見て来た。真似できない本物の技術が、隣に座っている感覚で体験することができる素晴らしい機会に恵まれて、自分がスザニに辿り着けなかったのは、この時のためなんじゃないかと思った。

これからもっとスザニの文化が知りたいものの、参考文献が見つけられませんので、めちゃめちゃ困っている。

終わりに

誰か助けて〜の精神で、来年の春卒業するための論文を鋭意製作中。励ましや情報は、いつでも募集しているので、よろしくです!

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