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アメリカ大統領選挙、1ヶ月前の予想を立てておきます

アメリカ大統領選挙ではよく、戦局を大きく変えてしまう意外な出来事のことを "October Surprise" 「10月のサプライズ」などといいます。

しかし今年に関しては、10月にはいる前からトランプ氏がひた隠しにしていた連邦税の支払状況についてのスクープが New York Times から報道され、そのニュースさえも消し飛ぶような悲惨な第1回ディベートが行われ、さらにそのニュースさえもかき消されてしまうトランプ氏新型コロナウィルス感染という報道があって追っている方としてはヘトヘトです。

それでも選挙戦は粛々と進行中で、現時点で情勢は安定から一方的な方向へと変化しつつあります。このタイミングで、私も勝手な予想を立てておいてあとで答え合わせをしたいと思います。

世論調査を読むための2つの注意点

大統領選挙の世論調査の結果は、実のところ2017年ころからずっと安定した状態です。まだ候補になると決まっていなかったバイデン氏とトランプ氏を仮想的に見立てた調査でも、常にバイデン氏が優勢という状況があったのです。

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そして今年に入ってからも、その状況は基本的に変わっていません。数多くの世論調査を、それぞれの調査会社の政党に対する偏りを補正し、すべてを平均した時系列をみても、バイデン氏はずっと優勢です。

ここで注意をしなければいけないことが2つあります。その両方が、2016年にヒラリー・クリントン候補が +3% 程度優勢だったにもかかわらず敗北した理由になっています。

1つ目が、世論調査自体の誤差です。2016年には、世論調査は大学を卒業していない白人層を大きく数えそこねていました。トランプ氏を強烈に支持したこのブロックにちゃんと重み付けをしなかったことによって、世論調査に系統的なヒラリー優勢のバイアスがかかってしまったのです。

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この表は現時点での接戦州ごとの戦況ですが、もし2016年と同じくらい世論調査が間違っていた場合の数字が2列目にまとめられています。現状、2016年と同程度の誤差があってもバイデン氏はペンシルヴァニア州、ミネソタ州、ウィスコンシン州、ミシガン州、アリゾナ州といった場所を獲得して、大統領選を制することができるくらいリードしていることがわかります。

しかも、2016年の誤差についてはすでに各世論調査が対応をしていますので、誤差はおそらくこれよりは小さくなることが予想されているのです。すくなくとも、同じ理由で前回ほど大きな誤差が起こることは考えにくいわけです(違う理由なら、ありえます)。

2つ目に注意すべき点として、州ごとの偏差があります。たとえ全国の世論調査で +3% 程度勝っていても、民主党は基本的に大統領選挙を制することができません。というのも、勝敗を決める接戦州であるペンシルヴァニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州といった場所は全国平均に対して+3ポイントほど共和党側にシフトしており、その壁を乗り越えて支持を集めない限り民主党は勝てないからです。

目安として、バイデン氏の優勢が全州平均で +3 ポイント程度なら勝率は50%程度、+5 ポイントで 70%程度となります。

では、これらの点を考慮すると現状はどうなっているのでしょうか。

世論調査を信用するなら、バイデン氏勝利。でもどの程度の勝利に?

実は党大会が行われたあたりで、バイデン氏が有利なものの、トランプ氏との差は2ポイントほど縮まっていました。

しかし悲惨なディベートと、トランプ氏新型コロナウィルス感染のニュースによって、ここにきて戦況が一変しつつあります。

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バイデン氏優勢とはいえ、安定して 23% ほど勝利の確率を残していたトランプ氏の勝ち筋が急速に消えつつあるのです。現時点では100回の選挙があったとして、不確定性を考慮するとバイデン氏が85回当選、トランプ氏が14回当選という情勢になっています。

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こうした情勢を考慮して、週毎の世論調査を見たところ、私の勝手な予想としてはこのあたりに落ち着きます。

バイデン氏の勢いがこのまま伸びて、フロリダ州はおろかジョージア州、オハイオ州までもが民主党側に落ちる可能性が高くなっています。ネブラスカ第2区、メイン第2区といったように勝者総取りではない場所も情勢は民主党に優勢ですので、それらをあわせると 369 vs 169 でのバイデン氏の勝利。注目されている上院の議席数は民主党52くらいになるでしょうか?

ただし、もちろんこれは普通に選挙が行われて、普通に開票が行われた場合の話です。

次回のリポートでは、今回危惧されている選挙の混乱についてまとめておこうと思います。


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