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今年のアメリカ大統領選挙は11月3日の夜には結果がわからない可能性が高い

前回の記事で、今年のアメリカ大統領選挙がとても安定しており、形成はバイデン氏に有利である理由についてまとめました。

それからも状況はトランプ氏にとって有利な要素はほとんどなく、算出されている確率はしだいに不利になっています。今日の段階でバイデン氏の勝率は87%、トランプ氏が13%。前回ヒラリー・クリントン氏との勝負で出現したような「総合得票では負けるものの、選挙人数では勝利する」のパターンによるトランプ氏の勝利は8%にまで下がりました。

しかしそれでも今年の選挙には予測ができない面があります。それは新型コロナウィルスの影響で郵送投票が増えているという事情です。

選挙当日の Blue-shift 問題

2000年の選挙を除けば、ここ数十年、アメリカ大統領選挙の結果は当日の夜遅くには大勢が決まっており、敗者が勝者に電話をして敗北を受け入れ、勝者が勝利宣言をおこなうといった流れがありました。

しかし今年は新型コロナウィルスの影響もあって、投票場にいかずに郵送投票で済ませてしまう人が数多くいます。このことが、特殊な開票状況を生み出すのです。

ルールは州によりますが、郵送での投票は多くの場合選挙日の前日の消印があれば有効で、2週間後までに到着したものを数えるといった流れでまとめられます。

しかし開票自体は選挙日の前に始める州もあれば、選挙日が終わってからでないと数えないという州でまちまちです。

たとえば激戦区のペンシルヴァニア州の場合、郵送投票の開票は選挙日の投票が終了してから始められます。そうなると郵送投票のほうが集計に時間がかかりますので、当日に機械で投票した人々の票が先に数えられて、あとから郵送投票の分が参入されることになります。

当日に投票するのはトランプ支持者でコロナウィルスへの対策をそこまでとっていない人々の割合が多いと予想されていますので、開票直後はトランプ氏が優勢になり、その後にじわじわとバイデン氏が追い上げて追い抜いてゆくというパターンが多くなりそうなのです。

郵送投票が数えられるにしたがって民主党への遷移、Blue-shift がみえると予想されているのです。

これはメディア的に大きな問題があります。最初、トランプ氏が圧倒的な状態で勝っているようにみえている段階で一部のメディアがトランプ氏の当確を出してしまうと、あとから Blue-shift が起こったときに混乱が生まれかねないのです。

ツイッターやFacebookが、この段階で時期尚早に当確を出した場合は投稿を消したりすると声明を発表しているのにはそうした背景があるのです。

選挙のゆくえが司法に委ねられる可能性も

こうした Blue-shift が生まれても、郵送投票で送られた票が数えられるのを両候補がじっくりと数日待つのなら問題はありません。

しかしここで、トランプ氏が時期尚早に勝利宣言を出してしまうことを危惧している人もいます。それはこうした流れです:

11月3日の夜、当日に投票された機械式投票の開票が進められ、トランプ氏がちょうど勝利を宣言できる程度の州で優勢になったとします。本来は何百万票もある郵送投票を数えないといけないのですが、この段階でトランプ氏が勝利を宣言したとします。そして「郵送投票には詐欺が多い」といった難癖をつけて、勝利宣言以降の票の集計を止めるために裁判所に提訴するということが考えられます。

この夏以降、トランプ氏自身が「郵送投票は詐欺だ」と何度も公的な場で繰り返していますし、同じ言葉をあろうことか司法長官のウィリアム・バー氏も(証拠を示すことなく)主張していますので、このシナリオはあながち荒唐無稽ともいえません。

裁判はもちろん最高裁にまでもつれこみますが、そこで現在承認にむけた手続きが踏まれている新しい最高裁判事に保守的な人物を送り込んでおけば、裁判で有利な判断を引き出せるかもしれないわけです。

いずれにせよ、選挙日当日の夜は勝者は決まらない可能性が高い

実際にトランプ氏がこうした民主主義の根幹を揺るがすような手段に打って出るかはまだわかりません。しかしいずれにしても、現在の郵送投票の数をみていると、投票日当日にこれらがすべて数えられる可能性は低いことがわかります。

状況が一目瞭然なほどにバイデン氏が圧勝ということでもないかぎり、わたしたちが選挙結果を知るのは選挙日当日ではなく、へたをすれば数日から一週間後という可能性すらあるのです。

このあたり、日本のメディアはここまで細かい話を説明せずに報じる可能性も高いので、あわてて勝者を早く決めないように注意しなければいけないのです。



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