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毎月、実験して暮らす

屋根のつららから水が滴る音がメトロノームみたいだなと久しぶりに浸かる湯船でとろけながら聞いている。

雪が降った日の外は「しずか」より「静謐」みたいな感じがするなあと毎回思う。

去年の雪日記。

ふわふわに降ったのに、朝にかけてかちかちのつるつるに固まってしまった地面を辿りながら今日は会社に歩いて行かなければならなかった。
晴れまくっている日に在宅勤務ばっかりしていた罰かもしれない。

20分くらいてくてくと歩かなければいけない。
保育園や学校の前では先生たちが朝からせかせかと雪かきをしていた。子どものために整備された道を堂々と通らせていただく。

巨木が、根本から真横に倒れていた。「KEEP!」の警察のテープがぐるぐると巻かれていた。
巻く相手が巨木だとしても、あのテープは怖い。
倒れた木は根っこがびりびりに破けていて、怖かった。折れた枝にはびっしりきのこが生えていて、嫌だった。

歌声が聞こえてきた。エルサみたいな神秘的な歌声だったら徒歩出社のしがいもあるが、雪で愉快になったオッサンが傘を振り回しながら歌っているだけだった。

雪だるま3体、かまくらを2つ観測したあと、今度は爆音でTWICEが聞こえてきた。誰もいない校庭で、ずっと流れていた。
理由は結局わからなかったし、人1人いなかったけど、ゲレンデみたいだなあと思った。冬だね。

犬の足跡を見つけた。嬉しい。犬の足跡に見とれて歩いていたら滑って転びそうになった。底ツルツルの革靴を履いているということを忘れてはいけない。

おびただしい数のカラスがサッポロベジタブルの袋に群れていた。
群れた鳥ほど苦手なものはないのに、今日に限って機敏に鳥たちを避けられるような道のコンディションにはなっていない。おびえながら変な歩き方をして、進む。

こんなたくさんのものを見て聞いて怯えているのにこれがまだ勤務前だということに疲弊してしまう。

「こっちの方が雪なさそう」と思って選んだ初めての道が雪だらけだったり、「行ける!」と思って挑んだ信号が点滅しだしたり、雪を避けようとするあまり水たまりに突入したり、なんの報いかというほど散々な悲しい目にあってやっと出社した。

警備の人とか、清掃のスタッフさんとか、当たり前のようにいつもと同じように仕事をしていて驚いてしまう。びちょびちょの裾と前髪をひっさげてやっとデスクに辿り着いた。

***
雪トークもそこそこに、退勤。
こんな日こそ湯船!と思って今浸かっている。


リンク貼れなかった

↑こうやって実験を重ねながら年も重ねているのだけど、湯船にはたまに浸かるのが合っているという実験結果になった。自分のためだけに大量の水が廃棄されるというのは心が痛む。
湯船は、雪が降った日と泣いた日くらいにするのが丁度いいということになった。

今月は、「家にいる時間」への投資。
寝る時にちゃんとパジャマっぽいパジャマを着てみたり、家中をあったかい色の電球に取り替えたり、仕事しながら羽織れるかわいいかわいいショールを買ったりした。

寝る時おひさまの匂いにしたいので

不思議なことに、というか、私が単純なだけなのだけど、きちんとしなくていいところをきちんと整えたりすると生活まるごときちんとしてきたりする。

パジャマを着たいからはやくお風呂に入ろうとするし、だらしない格好にとっておきのショールは似合わないし、あったかい光にさらされた洗い物は片付けたくなる。

調味料に投資する月とかもやってみたいな。使わないだろうけど瓶のマヨネーズとかつぶの大きいマスタードとか変な形のスパイスとか、憧れる。

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