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ウエルカム・トゥー・フレンチリヴィエラ

日本人観光客と出会う機会が随分減ったな、と感じたのはフレンチリヴィエラで長く滞在するようになってからのことだ。

ちなみにリヴィエラとは北イタリア西部から南フランス東部にかけての地中海沿岸の名称である。イタリア側はリヴィエラ・リーグレ、そしてフランス側はコートダジュール、紺碧の海岸と呼ばれている。

自然豊かなこの地方ですれ違う観光客はどちらかというとバックパッカーが多い気もするが、リゾートバカンスをエンジョイする老若男女、小さな子供連れのファミリーも多くいる。そんな観光客たちから発せられるのは、英語ロシア語イタリア語、ドイツ語などが主なところ。最近では中国語を話す女子旅も多い。

パリでよく見かける日本人の女子旅やカップルやモード系のお洒落さん、小綺麗な奥様方などはほとんどいない。

昨今の円安で全体的な日本人海外旅行者数がグンと減った影響もあるだろう。それでもパリでよくすれ違う日本人観光客をこちらで見かけることは少ない。


南仏観光ではパリと違って村から町へ、町から村へと広範囲での移動が必要となる。だからツアーや運転手つきで移動する人が多いんじゃない?と観光業に詳しい友達が教えてくれた。

毎日ブラブラ犬と一緒に近所を散歩している私とすれ違わないのは、街の中心地を観光する日本人が少ないから、ではないかと言う。

そうなのかなぁ。まあ多分それもあるだろう。

観光スポットがギュッと詰まったパリと比べると、交通が不便な上に広範囲にかけて点在する観光地を巡るのに時間と手間のかかる南仏は、よほど特別な思い入れでもない限りなかなか足を伸ばして訪れようと思えない日本人が多いのかもしれない、と私は想像する。

日本🟰東京と思っている外国人が多いように、フランス🟰パリと思っている日本人が多いのだろう。九州や北海道、私の地元の関西にだって見どころはたくさんあるのに。

パリの次に人気の高いモン・サンミッシェルは、東京から行く日光のようなものだろうか。大抵の人はパリから(結構遠いのに)強行日帰りツアーで訪れている。


実際パリ旅行と聞くと、買い物をしたり美術館へ行ったり、お洒落なカフェや有名なレストランで食事をしたりすることを思い浮かべるだろう。

華の都では見るもの買うもの食べるものがたくさんあって、全部やり切るには数日の滞在では短すぎる。だから人々は繰り返しパリを訪れたいと思い、何なら住んでみたいとさえ思うようになる。

対して南仏は。。。

買い物が出来ないわけではないけれど、ブランド品を買うならパリの本店の品揃えには敵わない。ディスプレイや店の雰囲気だって本店に比べるとこぢんまりとしたものだ。

何よりも、フランス・パリの本店で買いましたのよオッホッホ、というステータスが付かなくなってしまう。

観光の目的ナンバーワン、The Must Visitである美術館については、パリの壮大な建物や1日では鑑賞しきれないほど膨大な所蔵品数に比べ、南仏の美術館は小一時間もあれば見て回れるかわいいサイズの美術館が多い。

日本のメディアで頻繁に紹介される店はないし超有名絵画を多数所蔵する美術館もない。

でもそこが南仏の良さ、だと私は感じている。

パリのように意識的に壮大な計画を練って作り込まれた街ではない、自然の中で人間が工夫をして生きているのが南仏。

前にもどこかで書いた記憶があるが、パリは「ディズニーランド」だと思う。実際の夢の国ディズニーランドでは現実が見えないように工夫がされているが、パリでは各自が理想のパリを見るためのフィルターを自前で持っていて、見たい物だけをキラキラと輝かせて見ている。

自前のパリフィルターを持ち合わせていない私のような人間がパリへ行くと、汚い人間の欲や嫉妬、闇の部分がそこかしこに見えて辛くなる。


南仏に住んでいる人たちも同じ人間だから、闇を抱えて生きている人は多い。でもそんなちっぽけな人間たちよりも自然の方が断然偉大で、そんな偉大な自然に囲まれて暮らしていると、人間のチマチマとした苦悩になんて全く心を振り回されなくなる。

空の色、海の色、辺りを取り巻く空気にすらカラフルな色がついて見えるのが南仏コートダジュール、すなわちフレンチリヴィエラ。

かつて印象派の画家たちがこぞって訪れ、心を動かされて筆を取った南仏の色と光、そしてその自然は今でもちゃんとここに存在している。

オルセー美術館に飾られている印象派の絵画は南仏のリアルな色を切り取ったものだ。


印象派の画家たちや詩人、作家たちが愛したフレンチリヴィエラのリアルな自然を感じてみたい人には是非訪れて欲しい場所。

円安が落ち着いたら日本人観光客にももっと訪れてほしい、おすすめの場所なのです。

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