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スタートアップ:夢の扉が教えてくれる、大人になる喜びとほんの少しの寂しさ


大好きなドラマがまたひとつ、終わった。

土曜の夜に疲れをいやし、日曜の夜にパワーを与えてくれた。
これから何を楽しみに頑張っていったらいいのだろうか…。


Netflixで配信されている「スタートアップ:夢の扉」は、超絶ざっくりまとめてしまうと、韓国のシリコンバレー「サンドボックス」を舞台に、成功のために奮闘する若者とその周囲の人たちの物語。

キャラクターは皆、才能に溢れた人たちが多いから、眩しすぎて自分を重ね合わせるなんてとてもできない。でも、スケールは違えど、誰しも抱える悩みや辛さを彼らも抱えていて、感情移入できる場面がとても多い。

親からの期待に応えられない自分にがっかりしたり、でも期待に答えるための人生じゃないよなと思ったり、見栄を張ってしまったり、嘆いてもどうしようもない境遇や能力の差にやるせなさを感じたり。


1話あたり90分弱あるが、退屈することはない。

展開されるストーリーはもちろん、綺麗な韓国の景色やサンドボックスの開放的でエネルギーに溢れた雰囲気、可愛らしさの残る家庭の風景などもみていて楽しい。
また、キャラクター達の表情と音楽だけの、セリフがないシーンが結構あって、個人的にはかなり好きだった。一人で思い悩む時間や自分と向き合う時間を覗き見ることで、ますますキャラクターへの愛着が湧いた。



このドラマは、今いる場所から外に出てみると、大切な人や守りたいものが増え、人は変わるということ。大切なものが増えると苦しむ要因も増えるけれど、大切な人を喜ばせたいとか、幸せにしたい、という思いが自分の幸せに直結することがある、ということを教えてくれる。

何もかも手に入れることはできないこの人生において、何を手放し、何を手に入れるのか、選択をすること。ときには、自分の意思にかかわらず何かを失ったり、手に入れたりすることもあるけれど、それでも自分の身に起きたこととしてどう向き合うのか。そんなことを考えさせてくれる。



※ここからネタバレします※




私は、このドラマの何が好きだったんだろうか。


おばあちゃんが繋ぐ縁

見ていた人は、みんなダルミのおばあちゃんのこと大好きだと勝手に思っている。

この物語はすべて、おばあちゃんがジピョンを救ったことから始まっている。サムサンテックを大きな成長に導いたヌンギルの存在も、おばあちゃんがいたから。ダルミがお母さんを許し、楽になれたのも、きっかけはおばあちゃん。

おばあちゃん、ほんとに強い。

サンドボックスでのみんなの奮闘は、技術で世の中を便利にする素晴らしさ、成長し前進していくパワーを見ている私たちに与えてくれる。一方で、成長とか成功とかいう前に、愛とか思いやりから結局は発展が生まれるのだということをおばあちゃんが教えてくれる。

見返りを求めない行動ってなかなかできることではないけど、ドサンのような頭脳やダルミのような行動力がなくても、人間性は自分次第でどうにかできような気もするのだ。それは、分かりやすく評価はされなくても、やっぱり大事なことなんだ、とおばあちゃんのおかげで思える。



大人になるのは、少しだけ寂しい


最終回で、ドサン、ヨンサン、チョルサン、がサムサンテックの最初の事務所に行ったシーンが、個人的に一番泣いた。

成功したくて、今の生活から抜け出したくて、いつまでこんな生活がつづくのか、と不安と戦いながら、必死に頑張っていたかつての3人。暑くてかび臭い部屋から脱出して、シリコンバレーで仕事もして、今は自分たちで事業までしている。

たくさんの夢が叶って思い通りになって、本当に頑張ったよな、頑張ってよかったよな。今本当に幸せだよな。幸せだよ。幸せけど…やっぱりあの頃楽しかったよなあ…というあの感じ。

過去に戻りたいわけではないけど、昔の必死さや泥臭さや熱量は、いろいろなものを手に入れた今の彼らでも、どうしたってもう手に入れられないのだ。何かを手に入れても、良い結果になろうとも、大事な出来事が過去になっていくこと、その瞬間をもう味わえないということは、やっぱり少しだけ寂しい。

その寂しさはどうにも解消できるものではないけれど、抱えて生きて行くことこそ人生という感じがして、いいなあ、と思ってしまった。



役に立っても立たなくても、そこにいるだけで良い

成長したダルミを見て、してあげられることはもうないと、自分の存在価値に疑問をもつようになったジピョン。おばあちゃんに対しても、ダルミに対しても、何か利益を与えられないと、存在価値がないと思っていたみたいだ。境遇を考えれば、そういう発想になるのも不思議ではない。

でも、そんなことないのだ。おばあちゃんはジピョンがジピョンだから、大事に思っていて、何かして欲しいとかないし、ただ幸せでいて欲しい、本当にそれだけ。

何もしてあげられなくても、自分は大切にされる存在なのだと思えたとき、他者に対しても、分かりやすい価値だけを求めることはなくなりそうだ。おばあちゃんみたいに。

生きていくために成長するしかなくて、凄まじい成長をしてきたのかもしれないけれど、ジピョン氏には心理的に安心したうえで、もっと幸せになって欲しい。


女4人で幸せになる

ダルミのお母さんは誰かと再婚して楽になろうとするのでもなく、自分で生きていくこと、お義母さんを支えることを選んだ。インジェは養子縁組を解消し、後ろ盾を自ら断ち切った。

自分の人生を自分で切り開く女性4人が、最後に幸せな家族になるのがすごくいい。男性に依存しなくても自然に幸せになっているのが、これまでの家族の形に囚われていない感じがして本当にいい。



まだまだ好きなところはたくさんあるけれど、総論、とにかくどいつもこいつも幸せになって欲しいドラマだった。

たくさんの理不尽を乗り越えてきたダルミやジピョン、親の価値観に左右されてきたドサン、恵まれているように見えてもたくさんの苦しみがあった母親とインジェ、そしてたくさんの人に愛を配ってきたおばあちゃん、とにかくみんなそろって幸せになってほしいと思わずにはいられなかった。


毎週、元気をくれたことに心から感謝。




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