【詩】経験

夜の黒い雲の中に二人はいた
雲の上の空には満月があって
それは僕らには見えなかったけれど
雲の中まで射し込む暗い光がわずかに
二人の繋ぐ黒い手の形を
互いにわかりあわせていた
黒い僕ら、暗い僕ら
鉛玉の言葉を世間に撒き散らし
そこいら中を血の海にしてきた僕らが
星座になることもできず雲の中をさ迷っている
愛とかいうものがお互いにまったく別の意味になり
この世の人の摂理からすらも外れているようだった
僕らは探さなければならない
地上で輝く何かわけのわからないものを
わけのわからない地の上の僕らの未来を

簡単に人は死ねるし
簡単にものの仕組みは壊れるから
この天空からこれから落ちていく僕らは
何か分からないもの総てを大切にしなければならない
僕らは雨になろうが雪になろうがいい
どうにも手に入れがたい未来に向かって
二すじの細流を刻む
それがいいのだ、是非そうしたいから
生まれてきた

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