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【詩】どんどん開いていく

三角錐の底辺がどうしても三角形であることに
特に不満はなかったけれど
実際はどんどん定義が変わっていくので
今日のようによく晴れた春の日には
もう上半身裸になって
人の群れの本来のあり方である
人口ピラミッドの底辺に降りていく
乳幼児の死亡率が高い野生のピラミッドは
底辺が四角じゃなくて三角なんだそうだ
冗談じゃないよね
クフ王のはるか前から
建築物のピラミッドは四角錐なのにさ

バベルの塔は円錐を目指していたし
東京スカイツリーに至っては
基礎が三角の三方から組み上がって
途中で円錐状に変化するらしい
わけのわからない認識不能の大混乱の中で
かわいそうな多くの乳児たちは
一枚の布に包まれて土に埋められたし
今より多くの若い人たちが感染症などで亡くなり
人口の二本の斜辺を削っていった

ピロートークでむかし君が言うにはさ
 あのね、お魚がむちゃくちゃたくさんの卵を産むのは
 大抵がほかの生きものの餌になることを見越しているからなんだよ
 たぶんお魚の雌はそのことを考えると
 身震いするくらいに気持ちがいいんだよ
 いやだね
そんなことを君が気持ちよさそうに言うからさ
僕は心底嫌になって
心まで紫色になっちゃった

人のあり方をちょっと脇に置いてみると
空間はいくらでもねじ曲がりはじめるし
ものごとに順番はなくなって
時間は行き来ができるほど同じ高さで横並びになる
そんな世界で
三角錐はそのあり方をどうやって選ぶんだろう
僕はただ脱いだシャツを円筒形の洗濯槽に放り込んで
短い円柱形のコインを直方体の空間から
機械の内部へ落としていく
コインランドリーでジーパンやパンツまで脱いでしまえないのは
仕方がないけど
まあ、黄砂まじりの雨に濡れたあとだから
それだけでもましだ

雨はとっくにやんでよく晴れているけれど
湿度が高くて
重い空気は透明感を持たない
おまけに雲があったところよりもまだ高いところを
黄砂が覆っており
それがだんだん降りてくる

大気圏の底辺で
僕らは
実はもう実現している明日
もしくは明日を含む未来を待ち続けている
そうだろ?

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