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USJとオッペンハイマーの恐怖とは

私は爆音が苦手だ。いやパンクなんか大音量で聴かないと聴いた気がしないので正確に言うと、「爆音がするとわかっていて、その時が来るまでが恐怖」である。
いや爆音に限らず、びびらせることが起こるとわかっている時間が怖いのだ。

例えば、ユニバの「ジョーズ」。小船に乗ると運転人兼案内人が「皆様、ようこそ。私がこのツアーを案内させていただく鈴木です」とか言う。
しばらくすると「皆様、申し訳ございません。航路を間違えてしまいました」とか言う。

私は二回目だからわかっているのだ(妻や子どもが乗りたいというので、いやいや乗った)。
この後、ジョーズが水面に出てきて、やっつけるためにライフルをぶっぱなすのだ。

「鈴木〜!何が間違えてしまいました、だ!」

この時点で私は下を向き、両耳をふさぐ。
ジョーズが出てくるのがわかっているから、かなりのストレスになる。

「出てくるのがわかっているのに何で怖いの?」と妻は言うのだが、わかっているから怖いということをわかってくれない。
やがてライフルの轟音が鳴り響き、水面に炎が立ち、ガソリンと硝煙の臭い。

うわー、パニックになりそう。オレはもうダメだー!

帰り着く時にはもう疲れ果てる。

「皆様、ツアーにご参加いただき、ありがとうございました」

と鈴木。参加者から拍手。

鈴木、頼むよ。って鈴木に罪はないのだが。

ユニバは私にとって楽しむ場所ではない。ディズニーで唯一楽しめたのが「イッア ア スモールワールド」だ。あれはいい。何度でも乗りたい。

いや、まだある。

ユニバにアニメ映画がある。主に子どもが観る短編映画だ。それは4Dと称する、画面と座席が連動し、シャボン玉が画面に出れば実際にシャボン玉がどこからか現れ、花が出てくれば花の匂いがしてくるというもの。
それだけならいい。問題は登場人物が電柱にぶつかれば、座席もガタッと落ちるのだ。

今度はいつ座席が落ちるのか。それを考えるといても立ってもいられない。

ストレスに耐えきれなくなり、座席から立ち上がって通路に座り込んだ。

すぐにスタッフが来て「どうしました?」
と聞いてきた。

「いえ、な、なんでもないです」

スタッフは怪訝に思っただろう。

思い出した。

今の妻と結婚前、京都太秦の映画村に行ったことがある。
夏だったのでお化け屋敷をやっていた。彼女が
「入ろうか」と言う。

入りたくなかったのだが、内心は平静を装って入った。
お化け自体は人間が扮しているから怖くはない。怖いのは驚かせるために突然出てくることだ。

恐怖は半端ではない。

私は彼女を先に歩かせて地面を見ながら、彼女の上着を掴んでおそるおそる歩く。いつ出てくるんだ。いつなんだ。

そしてお化けが出てくる。視覚ではわからないが、雰囲気でわかる。

「ぎゃあー」(私の声)

「ひええー」(私の声)

ついに一歩も進めなくなった。

「立ち止まっているお客様、後ろがつかえていますのでお進みください」(館内アナウンス)

勇気を振り絞って進むと最後のコーナーでお化け(多分学生アルバイト)が二、三人一斉に出てきた。

ぎゃああああ〜、ごめんなさい、ごめんなさい!

なぜか謝りながらやっとの思いで一周して出口に出ると、並んでいるお客さんの視線が痛かった。

あれから15年、上映中の「オッペンハイマー」をとても観たいのだが、ニューメキシコ州の世界初の核実験がとてつもない閃光と爆音のシーンだと知って毎日迷っている。

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