見出し画像

婚活日誌 4人目 食べ方のくせがすごい男


その彼とはマッチングアプリで知り合った。

彼が行きたいカフェがあり、私たちはその場所で待ち合わせをした。

彼にこんにちはと挨拶をしたけれど、彼は緊張しているのかほぼ喋らなかった。
無言の空間は辛かった。会った瞬間、もう帰りたかった。

その場でランチを食べようとしたのだが、お店にはランチらしき案内は見当たらない。そこにはただシフォンケーキが置かれているだけだった。
不思議に思い店員に尋ねると、
ランチはもう取り扱ってないんですよーと言われた。

ああ、え?、ランチしていないのに来た意味は何?と思いながら、とりあえずシフォンケーキだけ買うことにした。

この一連の流れの間も彼は無言である。

なぜこの人は何も会話をしない?解散した方がいいのか?と思い、お昼どうしましょうかと私は彼に尋ねた。

「お昼ご飯を探してください」と言われた。

急にランチを探すミッションが課せられた。

もう色々とめんどくさくなっている私は一番その場に近い定食屋を選んだ。
そこで再集合することとした。

初対面の時点でお通夜状態だったのだから、このままランチをしても楽しいわけがない。
もういっそのこと家に帰ってやろうかなと考えたが、流石にそれは人として常識がなさすぎると思いながら運転をして、気がつけば定食屋についていた。

私はとりてん定食、彼はとろろそば定食を頼んだ。

軽自動車を改造して、軽自動車に泊まりながら移動することを趣味としているようでひたすらに熱弁していた。なんかよくわからないけど、改造が楽しいんだと。
多分私の顔は引き攣っていた。


休日は外に出ないと意味がない、外に出ろ、一日引きこもって過ごすなんか論外すぎる。とりあえず夕方からでも外に出ろと、私の引きこもり癖を否定された。

こいつは人の欠点を水を得た魚のように指摘してくるタイプだ。

休日なんだからどう過ごそうとその人の勝手だろうと思うのだが、そうではないようだ。とにかくものすごく否定された。

やっぱりあの時家に帰れば良かったと後悔した。


注文した定食が来た。

彼はとろろそばをご飯にバウンドさせて食べていた。

食べ方の癖がすごすぎる。

しかもそれをずるずると音を立てて犬のように食べていた。

唖然として何も言葉が出なくなってしまった。

帰りたさがMAXを超えてしまった私は、

無言のままご飯を食べすすめて、

あ、お会計割り勘で!さよなら!と言って、一目散にその場から立ち去った。


ブロックしようと思ってアプリを開いたら、もうすでにブロックされていた。

結果は同じだけれど、先にブロックされると若干悔しい気持ちになった。


多分、この先会うことも思い出すこともないだろうけど、
今日もどこかでそばライスを食べているのだろう。



ああ、思い出したら、やっぱ、気持ち悪いな。


おしまい。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?