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初音ミク×鼓童スペシャルライブ2023に参加しました

初めに

まずはこれを言いたい。
まさに最大級の生命讃歌だった。
3年ぶりになる太鼓パフォーマンス集団鼓童と初音ミクのコラボによるいわゆる鼓童ミクが帰ってきた。
コロナ禍によって三年前……2020年に行う予定だった第三回鼓童ミクが中止になってしまった事件を乗り越え、再びNHKホールに鼓童ミクが帰ってきたのである。
行かない理由は当然無い。その上、鼓童と初音ミクとのコラボはこれが最後という事である。
あまりにも残念で仕方がないが、これが最終回という事であるならば、その最後の最後まで命燃やし尽くして観に行かねばならない。そう決意を固めるのであった。
というわけで前口上が長くなりましたが、チケット運にも恵まれた事も有り、喜び勇んで一路NHKホールへと向かったのである。

6月3日夜公演

公演は6月3日と4日の二日間。自分は土夜と日昼で公演に参加。尚、この記録は土夜の公演後に興奮冷めやらぬままに書き出しているので正直言って乱文長文になってる事は否めない。
だが! これが! 語らずにいられようか!
折からの台風により新幹線は止まり、飛行機も遅延が相次ぐ中、それでもNHKホールにコレだけの人間が集う事になろうとは。
開演時間一時間前で既に会場は熱気で充分。昼公演を観ている人間も当然いるだろう。好評の様で、自分にとっては三年ぶりの鼓童の公演に心が迅る。

実の所、自分はマジカルミライよりも鼓童ミクの方が好きだったりする。それは、やはりバーチャルだけではない肉体的なパフォーマンスをじっくりと魅せつけられるからに他ならない。
マジカルミライにも勿論バンメンがいて、バンメンもまた主役なのだが、公演中の初音ミクの一部とも言えるバンメンとは違い、鼓童ミクは鼓童もまたピンで舞台を仕切れる主役なのだ。
時間キッカリ、NHKは流石というか、開演5分前には会場に前奏が流れ始め、ボルテージが徐々に上がっていくのが感じられた。
嗚呼、遂に始まるのだ!
振り返ってみれば、全ての曲に感想を入れたいと思うぐらい素晴らしかったのだが、それだとただただ冗長になるのとあまりにも気持ちに整理が効かな過ぎるので、印象深かった曲目についてだけ書き連ねていきたいと思う。お許しください。

熱風!

コレは予想していた通り。最近の風潮としてテーマソングは一発目が定石となっているから、自分の中でもやっぱりな、という感覚。
ただ、Youtubeで聞いた時とは感じ方が違う。そう、「」が違う!
太鼓の音圧、バンドとの融合、ビジュアルに出る圧倒的な筋肉!
その全てがまさに熱風を吐き出しているかのよう。思わず拳に汗が握る。

スイートデビル。コレを鼓童がやるとこうなるのか! という驚き。やはり太鼓の音圧が入ると途端に別の曲の様に感じる。ドラムが弱い訳じゃない。太鼓が強すぎるのだ。例えるなら雷。落ちる雷は恋に落ちる音そのものだ。

輝くミラーボール、汗、そして筋肉!
太陽系デスコは最高of最高。
何というかコレほど太鼓と完璧な融合をするとは思わない曲。以前にも聞いたけれど、やっぱりコレは生で聴きたい。リズムも振動も同調する気持ちよさは格別。何度でも聞いていたい曲の一つ。

曲目が落ち着くと、奈落から鼓童演者が迫り上がってきて場内が一瞬どよめいた。
鼓童より語りが入る。
最初、自分は鼓童によるオリジナル曲だとばかり思っていた。だが、口上を聞くにあたりそれが意味を成しているとハッキリ理解出来た。
「ようやく帰って来ることが出来ました」
そして理解が出来た瞬間、涙が溢れ返りそうだった。帰ってきたのだ。そう、万感の思いがそこにあった。誰も彼もが心中に抱えた気持ちは同じだったに違いない。
乗り越えたのだ。未曾有の危機を。そして、よくぞ生きていてくれた! そう思わずにはいられなかった。

三人振付の極み、そして夕暮れ

大好きな曲、どりーみんチュチュ。まさかこの曲を太鼓でやるとは思わなかった。心臓の鼓動音を表現しているドラム音が太鼓に変わる事で強烈なビートに変わっている。乙女のまさに強烈な鼓動だ。
三人の鼓童メンバーがそれぞれミクリンルカの動きをトレースしているのも見ていて本当に気持ちが良い。いつまでも見ていたくなる、まるで夢のような瞬間だった。
続けて来るとは思ってた大江戸ジュリアナイト
2020マジミラで見て以来、鼓童でコレをやるのはもはや必然と言うべきか。そこまで思い入れがある曲ではなかったが、鼓童の演出で聞くと途端に噛み合ってくる。
まさかここまでしっくりとくる曲になるとは。太鼓が演出としてある曲は鼓童にとっては最高の素材なのかもしれない。
完成形を見て評価がハッキリ変わった曲の一つとも思っている。
ルカ、カイトと来れば、当然続けてメイコさん。アメージングドルチェも忘れられない。
メイコさんの曲も鼓童での披露。これも素晴らしい。マジカルミライでの演奏はそれはそれで良い物だけど、太鼓のビートに合わさる事で縦に揺れたくなってくる。縦揺れは正義だ。揺れているのは俺だけではないのだ!(?)

閑話休題。
鼓童パートでは驚きの二本槍を両肩に付けた二人組が太鼓を打ち鳴らし現れて度肝を抜いた。
最初、単なる飾りかと思っていたが、まさかの楽器だったとは。打楽器の世界の奥深さに感嘆を隠せない。ガンキャノンとは言い得て妙だ。

やがて会場が静かになり、壇上が赤く夕暮れに染まっていく。和に全振りをしたglow 。これは本当に驚いた。前奏で即曲目は理解出来たが、バンド無しの鼓童による和楽器、琴と笛と太鼓のアレンジだけであそこまで完璧に和の世界観を作り上げられるとは思わなかった。
本来はギターによる切ない旋律が特徴的な神曲だったが、鼓童のglowは本当に夕暮れが目の裏に浮かぶかのようで、思わず目頭が熱くなった。これほど心動かされる曲も珍しい。出してくれるならCD媒体で欲しいと思う。デジタルソノカとかで売ってくださいマジで。

バンメン紹介からのリンレンラッシュ!

劣等上等リモコンいーあるふぁんくらぶ というリンレンの三大楽曲が鼓童によって蘇る。
どれも正直に言ってしまえば飽きる程聞いた曲で目新しい所もない。けれど、鼓童の演目としては本当に舌を巻く。
演者が動きを完全トレースしている所が何よりも愛を感じる。以前にも見たことがある筈なのに、何度見ても楽しい。
何度でも見たくなる、そこにこそ人間のパフォーマンスの真骨頂があるのかもしれない。
一つとして同じ物はない。底知れぬレベルの努力と命燃やすレベルの情熱が繰り広げられているのだ。
少しずつ終わりの時は近付いていく。それを象徴するかのように、笠村トータさんの僕が夢を捨てて大人になるまでが流れた。
夢を捨てられないから、今みんながNHKホールに集まっている。全員の夢の具現化がここに成されている。捨てた夢でも拾える。人は三年もの時が流れても、もう一度夢を拾い直せるのだ。

起こる機材トラブルからの神降し

それはグリーンナイツセレナーデの瞬間起こった。ミクさんが歌詞を忘れてしまうという十年に一度か二度(過去三度)起きた大失態。だがそれが逆に全員の気持ちを一つにする。
鳴り響くミクコール。暗くなる壇上でバンメンも客側を煽り、声が出なくなったミクさんを応援する。俺はこの初音ミクを取り成す客と演者との、初音ミクを実体として扱う文化が本当に好きだ。
何事も無かったかのように演目は再開され、鼓童の凄まじい筋力による高速の太鼓打ちが披露されるまで、心の中でも身振りでも応援を絶やさずにはいられなかった。
太古、神を舞台に降ろす時に人はきっと同じように願ったに違いない。令和の世の中で確かに神降しの儀は遂行されたのだ。

アンコール

鼓童で聞きたいミク曲上位になるであろう千本桜がここで来た! 流れとしては正直言って桜の雨がこの後にでも来るのでは? と思っていたのは否めない。だが、桜の雨が来てしまっては結びにならないのでは? というジレンマもある。それを見透かされたかのような次の曲は意外な物だった。六人全員登場で悲鳴が聞こえたのは間違いない。鼓童でブレッシングが聞けるなんて!
とにかくこの曲に関しては何も言うことが無いレベル。昨年のマジミラでも反則かと思ったぐらい、心に響く曲だった。同時に嗚呼、鼓童は本当に終わりに向けて動いているんだな、と実感させられた。
「生き抜く為に前を向け、来週も来月も来年も来世も一緒に歌おう。ここに集えた奇跡にありがとう」
それは命の輝きそのもの。鼓童とミクさん達からの熱い熱いメッセージ。
これでラストかと思いきや、壇上の画面にはクラップの文字が映し出された。

最後の最後は原始の打楽器

Hand in Hand。本当の最後。締め括り。肉体言語、人類最古の楽器はやはりクラップという事なんだろうか。手を打ち鳴らし、全員が一つになり、手と手を取り合う人間讃歌の曲を体で、全身で、鼓動で感じ合う。
鼓童が打ち鳴らす太鼓の音、音圧、心臓の音、クラップ音、そしてペンライトの光。全てが渾然一体となった世界は何よりも美しかった。
大団円、ミクさんが壇上で口にしたのは「さよなら」でも「ありがとう」でもなく「楽しかった、またね」だった。
そう、また初音ミクさんにはマジカルミライで会える。そして鼓童のメンバーにも、それぞれの演目が待っているのだ。
初音ミク×鼓童スペシャルライブ2023はこうして終わりを遂げた。けれども、それでもまだ自分は願っている。
最後の熱風が鳴り止まなかったように、三三七拍子が響き渡ったように、またいつの日かシン初音ミク×鼓童スペシャルライブとして復活を遂げる日の事を。
その時まで、いつの日か。
ありがとう鼓童。ありがとう初音ミク。命燃え尽きるまで!


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