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人生初のデモに行ってきた

 「よっしゃ!行くぞ!」

 まだだーれもいない梟文庫でぼんやりTwitterのタイムラインを眺めていると,京都での「安倍内閣総辞職を求める緊急街宣」のお知らせが流れてきた。連日の官邸前抗議行動の盛り上がりに「私も行きたい!!」とウズウズしていたので,「ついに京都でも!」と念願のデモ初参加を即決。夕方まで習い事のあるムスメをピックアップしてから二条駅に向かえば,19時スタートに間に合うじゃないか。よしよし。学校から帰ってきたムスメが「帰ってきたよ。」と電話をかけてきた時に,「今日習い事のあとに出かけるから。詳しいことはあとで話す。」とだけ伝えた。まるでだまし討ちみたいなものだが,電話で話すにはややこしい。あとからムスメが「お母さんがあんなこと言うから,何かと思った。コワかった。」と言うので,すまんムスメと大反省したが。

 しかしデモなんて行ったことがない。どうしていいか分からないことだらけなのだが,Twitter上には親切な情報がたくさん流れている。面白かったりユニークだったり,怒りマックスが表現された数々のプラカードもコンビニのネットプリント(※1)で簡単にコピーができるように拡散してくれている。せっかくなので・・・ていうか正直に言っちゃいますけど「ちょっとこういうのやってみたい」という不謹慎なミーハー心で,安倍さんの顔の上に「RESIGN NOW」と書かれたプラカなど数枚をネットプリントでコピーした。うーん,しかしこんなぺらぺらのコピー用紙を持って行ってもなぁ・・・と悩んで,分厚い段ボール紙両面に貼りつけてみると,おおっ。それっぽくなったような。これに持ち手をつけたいところだが,木の枝くらいしかないや。それはちょっとカッコ悪いような気がしたので,ひとまずやや厚手になったプラカを持ってムスメを迎えに行った。

 教室から出てきたムスメに「じゃーん!今からデモに行きます。」とプラカを見せると,「行くの!?一緒に行っていいの??」と顔を輝かせた。あっなんだ,デモ行きたかったんだ・・・とちょっぴり拍子抜け。そりゃそうか,ハハが「デモ行きたい,デモ行きたい」ってしょっちゅう言ってるんだもんね。よく分かんないけど,そんなにハハが行きたいって言っている「デモ」ってもんがどんなものなのか,気になりまくりだよねぇ。色々すまんという感じではあるが,まぁとにかく行ってみよう!とムスメと二人地下鉄の駅まで急いで自転車を走らせた。

 地下鉄の乗継で下車する人々の流れを見て,ムスメは「この人たちみんなデモに行くのかもしれないよ。」と嬉しそうに言う。官邸前か!!って笑ってしまったけれど,「なんで?そう思ったっていいでしょ。そのほうがいいでしょ,だって。」と膨れるムスメ。そうだよ,そうだね。ごめんなさい。自分たちと同じように,たくさんの人が参加して欲しい。そんな期待をそのままお話してくれただけだよね。私が時々Twitterで見ているぎゅう詰めの中での「ドラム&コール」デモのイメージなんだろうなぁと微笑ましくて,「太鼓あったらいいのにね。」と話すと,ムスメ「リコーダー持ってきたらよかった?それか,タンバリンとか?」・・リコーダーとタンバリンが鳴り響くデモを一瞬にして想像してしまいお腹抱えて笑いたくなったのだが,それは頑張って自制した。

 二条駅に着いても土地勘がないもので,ムスメと二人しばらくウロウロと「デモ」を探した。あっなんか声が聞こえるね,なんて言いながら声のするほうに向かうとすでに街宣は始まっていて,「安倍やめろ」などのプラカを掲げた人々が2~30人ほど集まってスピーチを聞いていた。持ってきたプラカを出すのはちょっぴり勇気がいったし,どんなふうに掲げていたらいいのかもよく分からなかったが,「このために来たんだぞ。」と自分に言い聞かせて手提げ袋からプラカを取り出した。すると近くにいた人が「自分で持ってきたんですか?すごいですね!」と褒めて下さり,ふっと緊張がゆるんだ。色んな方がかわるがわる「これはおかしい」とスピーチされ,通りがかりの人も足をとめて聞いていた。当日告知の街宣だったが私のようにTwitterを見て来ました,という方のスピーチもあった。ムスメもスピーチを聞きながら「そんなのおかしいなぁ。」と呟いたり,「一日一億円稼いでる人もいる一方で,格差が・・・」なんていうくだりには目を丸めて「そんなにあったら私何に使おう・・」と,何だか真剣に!?考えてもいたようだった。ムスメがイメージした「ドラム&コール」人だかりのデモではなかったが,声をあげる人々の姿,その声に耳を傾けること,「私も反対だ!」と自分たちなりの意思表示(この日はプラカ)をするということ,その経験ができて本当によかったと思っている。「あべやめろ!」とかドラムに合わせて叫んでみたかったけどね。・・・と相変わらずミーハーなようだが,でも日々感じている(現政権への)「怒り」を「声」にするという身体表現は,意思表示とは別の形で,心身の健康にとっても大事なんじゃないかと思う。

 さて以前「私は傷ついていた~Twitterの世界での立憲民主党体験~」の記事にも書いたが,私はこの1年くらいの間に「政治は自分たちの生活から遠い世界での出来事なんかではない」という経験をしてきた。SNSでの「#枝野立て」が立憲民主党の誕生につながる民衆の声の一部であったように,どれだけ小さくたって,それぞれの場所でそれぞれの人が声をあげていくことが大事なんだ,ということを学んだ。その経験を次にいかしたい,自分たちの生活の中で政治のことも考えていきたいと,ご縁あって「くらしとせいじカフェ」にも時々参加させてもらっている。京都府知事選挙を控え,私が望む社会のあり方の実現に力を尽くしてくれそうな候補者・福山和人さんのお話も聞きに行った。そんな中での森友学園公文書改ざんのニュース。議会民主主義の基盤を揺るがしかねない事態だと言われているのに,居直り続けている政権・・・こんなことを許してしまった先に待っている絶望的な社会を,子どもたちに手渡さなくちゃいけないなんて嫌だ。「こんなのおかしい!」「絶対認めない!」安保法制の時にも同じことを思ったが,今この声をあげなければ,後世子どもから「なぜあの時,あの歴史的分岐点で,お母さんは黙っていたのか。」と責められる地獄が待っている。それは残念ながら決して荒唐無稽な話ではない,と思う。

 そして「声をあげること」は,何も政治に対してだけ求められているのではない。繰り返し何度でも言うが,政治の世界で起きていること(権力関係の中での支配と暴力)は,家庭や学校,職場などこの社会の至るところで起きている。ブラックな働かせ方,DVや性暴力,虐待やいじめ,セクハラにパワハラ・・・それらに対して,「おかしい」「いやだ」と声をあげていくのは,その当事者の方々だけに求められているのではない。#me tooの声が#we tooにつながっていったように(※2),1人の勇気ある声を「それっておかしいよね!私もそう思う。」とみんなの声にしていくこと。1人ひとりの声が,よりよい社会を作っていくんだということ。そのためにはやはり他者に,社会に「見える形で」表現していけたらいいのだと私は思う。

 デモへ向かう道すがら,私はムスメに言った。「今日一番大事なのはね,おかしい!って意思表示することなんだよ。嫌だな,おかしいって思っている人がたくさん集まっている様子を写真にとってもらったり,報道してもらったら,反対している人たちがいるんだよって可視化,見えるようにすることができるよね。それが目的なんだよ。」

 これからムスメが生きていく社会は,「おかしい!」「いやだ!」と思ったら声をあげるのが当たり前なんだ!という社会であって欲しい。願わくば40過ぎてオロオロしているハハを尻目に,「おかしい!」「いやだ!」と思っている仲間と連帯し,今よりマシな社会にしていくためのスキルやノウハウを生存上必要なリテラシーとして実装してもらいたいとさえ思っている。

 いいやん,11でデモデビューしたんだし。できるやん,それ。

 明日17日の京都市役所前出発のデモ行進(※3),「一緒に行ってくれる?」とムスメを誘ったら「いいよー。私もプラカ作らなくちゃ。」と軽やかなお答え。「デモ行く」が勇気のいるハードル高いアクションではなく,町のあちこちでさくっと意思表示のできるカジュアルな場になっていったらいいよね,ほんとに。

※1
ネットプリントでどうぞ,と無料配布されているプラカードは,「予約番号」を記載してくださっています。コンビニへ行ってコピー機で「ネットプリント」を選んだあと,予約番号を入れるとコピーできます。Twitterをしている人,簡単なのでお試しあれ。デモに行かなくてもこのプラカを玄関にはるだけでも意思表示になりますよね。

※2
ハリウッドでセクハラ被害に声をあげることから始まった#metoo運動。日本でもジャーナリストの伊藤詩織さんがご自身の性暴力被害を訴えましたが,逆に非難されるなどの酷い二次的被害が問題となりました。当事者が「私もme too」と声をあげるだけではなく,「私たちもwe too」と考えていったらどうかと伊藤詩織さんは提案されました。
「#MeToo と声をあげた人たちを支え、"私"だけの問題ではなく"私たち"の問題として考え、私たちの「これから」を変えていくために活動していくプラットフォームです。」
#we too Japan Facebookより
https://www.facebook.com/wetoojp/

※3
内閣総辞職を求める京都アクション
https://twitter.com/demofromkyoto
3月17日18:30〜サウンドデモ。デモコースは京都市役所前→四条河原町→円山公園。京都から内閣総辞職を求める声を上げるために「内閣総辞職を求める京都アクション」を学生中心に立ち上げられたそう。SNSをされている「怒っている」方,ぜひ拡散をお願いします。ご関心のある方,頭数になりにいきましょう~。

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