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プログレッシブ・ロック・ババア

これを書いている今日(3/5)の労働は最悪であった。そもそも最高な日なんてないのだが、今日は特にひどかった。

非通知の番号からの外線電話を取ったのが運の尽きであった。受話器を取った瞬間、耳に飛び込むオバサン特有の声。この時点で嫌な予感がした。

そのオバサンはうちの職場、というより職場を含めた、僕が住む市の取り組み全体(ちなみに市役所勤務ではないよ)に対し、『貴重なご意見』を延々と、なんと1時間にわたって僕に対してご高説くださったのである。
(念の為、プライバシー保護の煙幕を文章に張っているつもりです)

思いっきり皮肉を、大さじ100杯くらいこめて『貴重なご意見』と表記したが、あんなもんご意見の体をなしていなかった。例えるならTwitterでフォロワー2とかのアカウント(アイコンは猫)が延々と1人で呟いている政治やら情勢やらへの不満を、1人の人間に電話越しにぶつけている感じ。ワシ人間やで。赤べこじゃねえんだぞ。心があるんや俺にも。大層ナイーブなやつ備えてますよ。

しかも口調からして、「◯◯市のためを思って」という、私は善行をしていると心底確信している感じが不快通り越して不気味まであった。恐ろしい殺人事件とかを犯した犯人と刑務所の面会スペースのガラス越しに向き合う弁護士ってこんな気持ちなんだろうな。

敢えて「クレーマー」ではなく、貴重なご意見をくださる人、「ご意見ニスト」と表現させていただくが、ご意見ニストの電話対応は初めてではなかった。そういう時はとにかく相手の話に相槌を打ち、刺激しない。私は赤べこだ、赤べこなのだと暗示をかけ、相手の言葉の嵐が過ぎ去るのを待つ。これがvs.ご意見ニストとのバトル(というより、防衛戦)における鉄則だ。

しかし今回のご意見ニストは一筋縄ではいかなかった。
「これこれこういうわけだけど、あなたどう思うの?」と、僕の意見を聞きたがるわけである。

ハァ?

それで僕が何か言葉を返せばそれを遮り、「いや、そういうけどね、云々€☆#÷〆:*」と、卓球元日本代表丹羽孝希の如き高速カウンターが返ってくる。

僕が言葉に詰まると「ねぇなんで黙るの?もしもし?」と、お前メンヘラかよみたいなモードに突入するのである。

かと思えば急に「私が昔行ったパリではねぇ、ナントカカントカ€❗️⇔☆#〒+」と機嫌よく自慢話を始めたりする。

ヤバい。信じられないくらい情緒不安定。
転調が激しすぎる。プログレッシブ・ロック・ババアである。キング・クリムゾンやイエスも腰を抜かすであろう。


「赤べこ法」が通じず、ボロボロになりながら、1時間近くにわたる電話を切った時、昔インフルエンザにかかった時のような全身の倦怠感に襲われた。肩の凝りがものすごかった。
近くの席の人が慰めてくれたのが救いだった。

本当は「業務の妨げになりますので、お電話切らせていただきます」とやりたかった。実際、役所ではそういうこともあると上司から聞いたことがある。できなかった理由としては、そんなことをしたらおっそろしいレベルのカウンターが返ってきて、僕の身も心も砕け散るだろう、という恐怖からである。

その電話がかかってきたのは午前中。午前どころか3日分くらいのエネルギーを使い果たした僕は満身創痍で帰路につき、今家の布団の中でこれを書いている。
こういう時、ギターを弾いて怒りを発散、表現し芸術に昇華する表現者もいる。レイジとか。
しかし僕は無理だった。怒りとは僕にとってノイズでしかないようである。

かのノエルギャラガーはストレス解消法を聞かれた時に「ストレス溜まった時は何しても無駄さ。それよりストレスを溜めない生き方をした方がいい」と言っていた。きっとノエルもリアムの遅刻とかリアムの言動とかリアムの声の調子の悪さとかにイラついた時はギターなぞ手に取らず、ドラッグでトぶか煙草吸って寝てただろう。
見習って、これを書き終わったら煙草吸って、シコって寝ようと思う。

そのプログレッシブ・ロック・ババアはなんと、僕の住んでいる地方を揶揄し「これだから◯◯人は」「◯◯人は何にも考えてないよねぇw」と、あからさまな差別発言まで繰り出してきたのである。もはやレイシストである。

僕は誓った。いつかフルアルバムをリリースする時は、このババアが燃えている写真をジャケ写にしよう、と。

Know your enemy.

おしまい。

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