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私を構成するライブ6選(前編)

こんにちは。


前回のnoteがあまりにも内容がない、冷蔵庫の中にあるいつまでも飲まれないほんの少しだけ残ったペットボトルのジュースのように、量的にも味的にも最悪なものだったので、挽回というわけではないが、僕という人間を創り上げた今までのライブ経験(観る側)のお話をさせていただきたい、真面目に。

「6選」という実にキリの悪い数字についてだが、ほんとは5選にしたかったのだけどどうしても外せない、このライブは外したくないのせめぎ合いの結果によるものである。いっそ10選とかにするか、と思ったけどそれをやるとこのnoteは学術論文並みの分量になり、誰も読んでくれなくなると思ったのでやめた。

そもそも、僕はしがない東北の地在住の人間である。地方在住の音楽好きあるあるとして、「好きなバンドが来ない」というものがある。よくTwitterで首都圏民が「〇〇と××が2週連続で来日する😭お金足りないよー😭」みたいなツイートしてるのを見かけるが、贅沢な悩みすぎてブチk…もとい、頭を引っ叩きたくなる。

首都圏在住の音楽オタクの皆様は、自分がいかに恵まれた都市に住んでいるかを多少は自覚しろ。

全国ツアー発表されても僕の街には来ない、なぜか来ない。ライブハウスも、ホールもあるのに。海外アーティストなら尚更である。もちろん、今の厳しい不景気の世の中だから、無理なものは無理、というのもあるのだろうが…

自民党への悪口も書きたくなってきたけどそんなnoteではないのでやめます。音楽の話をしよう。

ちなみにランクづけ等はしてません。数こそ首都圏の連中に比べて多くはないけど、それでも頑張って遠征していろんなライブを見た。そのどれもが素晴らしい体験で、ビミョーなのとか金返せなんて思ったライブは幸せなことに一度もない。それらに順位をつけるなど、僕には到底できませんでした。

①Blur (@ SUMMER SONIC、2023/8/19)

まずは直近のやつから。

Blurが日本に来る、その報せを職場の休憩でスマホ見ながら受け取った時の興奮は忘れ難い。
再始動が発表され、まさか日本にも来る…?みたいなザワザワがTwitterの音楽界隈を漂っていた矢先の発表。
僕はもともとblurのプロパーなリスナーというわけでもなかった。どっちかっていうと熱心に聴いていたのはOasisのほう。でもBlurのオシャレにあの気の抜けた世界観や、グレアム・コクソンのギタープレイをYouTubeで観ては興奮していた。

気づけばチケットを取り、気付けば季節は夏に変わっていた。

あの日の幕張はもう、地獄のような暑さで、その暑さがヤフーニュースになってしまうほどだった。思い返して我ながらよく生き残っていたなと思う。
大学生の頃は体力が有り余っていたので、フェス1日くらい余裕で元気に過ごせていたのだけど、社会人として働き始めてからは、基本毎日デスクワークに加え休日は一日中寝ているという生活で僕の基礎体力はガタ落ちしていたので、blurが開演する頃にはへっとへとであった。

スタンディングで見ることを諦め、マリンスタジアムのスタンド席(激混み)にどうにか空きを見つけて座る。
ようやく見つけた席はグレアム全く見えないクソ席であった。

開演。ステージ上部の『blur』のロゴが点灯し、出囃子が鳴り、ふらーっとメンバーが現れた時の心の震えは忘れられない。疲れも吹き飛んだ。

Tシャツやポロシャツといった、ビックバンドとは思えぬラフな服装で登場した彼ら。デーモン・アルバーンはとても機嫌が良さそうで、ニコニコしながら客席を指さし、「Good evening!」と美声で呼びかける。

新譜の曲から開演し、畳み掛けるように"Popscene"、"Beetlebum"を連打。
"Popscene"の間奏では、グレアムはぴょんぴょん飛び跳ねながらなんとギターを抱えて後転をキメる。眼鏡大丈夫?と思ったけどメガネは気づかぬうちに吹っ飛ばしていたようだ。まだ2曲目なのに。

そう、このライブの何が特別だったかというと、デーモンをはじめとした他のメンバーはもちろん、グレアムの機嫌と演奏の調子が凄まじく良かったのである。
"Beetlebum"の、僕が大好きで大好きで仕方ないあのギターソロが、マリンスタジアムという広大な空間で爆音で鳴り響いていたあの時間は今思い出しても"クる"ものがある。
ほかにも、急にピックを投げてニヤリとして見せたり、"Coffee&TV"のギターソロでメタリックなタッピングをして見せたり、など。同曲はグレアムがリードボーカルをとるのだけど、演奏前に「ハーイ」とあまりにあっさりすぎる挨拶をし、傍のビールを控えめに掲げ、「カンパイ」と控えめに言う。ビール飲んでたらドラムが始まっちゃって「ちょい待って!」って感じで演奏を止める…などなど。とにかくマイペースなグレアムの振る舞いがすごくよかったのだ。

セトリも凄まじかった。アルバム『13』に収録されている"Trimm Trabb"という、ブラーの実験的側面が爆発している、いってしまえばフェス向きとは言い難い曲があるのだけど、彼らは堂々と演奏してしまう。マリンスタジアム、サマーソニックのトリという極めてポップなフィールドで。


もちろん、代表曲はほぼほぼやってくれた。先述の"Coffee&TV"に続けて、"Country House"、"Palklife"、"To The End"という信じられないセトリ。今思い出しても反則級すぎて、死人が出なかったか心配になる程だ。"Girls&Boys"ではMVのあのFILAのジャージにデーモンがお色直しして登場したり、"Song2"ではイントロのドラムの時点でスタンドまで総立ち、「Woohoo!!」で比喩抜きでスタジアムが揺れていた。


そして最後がまた、良かった。"Tender"では「Oh my baby,oh my baby…」の大合唱の中、みんなスマホのライトを点灯し、ベタだけど感動的な空間を作り上げていたし、新譜からの"The Narcissist"がもう素晴らしすぎた。様々な困難を経てここまできたバンドにしか鳴らせない、メランコリックな名曲。なにより、新曲が今までの代表曲となんら変わらぬ強度で鳴り響いているのが凄かった。

そして、オーラスは"The Universal"。

7〜8月にかけて、ダルすぎる仕事をこの曲を聴きながら乗り切った。「あともう少しで、この曲を生で聴ける」という思いのみで仕事を倒し、幕張までやってきた僕は、いざ演奏されたこの曲のスケールに圧倒されるがあまり、「今この瞬間、だれか俺を殺してくれ」とさえ思った。この素晴らしい気分のまま、この気分が落ちてしまう前に、いっそ人生終わらせてくれ、と。

1人の人間を、もうここで終わってもいい、という、ハンターハンターのゴンばりの感情にさせてしまうBlur、凄すぎである。


マジでグレアム見えない

②Phoenix(@ 豊洲PIT、2018/4/24)

Phoenixというバンドと出会ったのは、たしか大学1~2年の頃、Two Door Cinema Clubと出会ったのを皮切りに、海外の「インディー・ロック」という呼ばれるジャンルに嵌って様々漁っていた時のことだったと思う。
MGMT、Vampire Weekend、Foster The Peopleなどなど…どれも凄く好きで未だに聴いているのだけど、その流れで見つけたPhoenixには、自分でもなぜかわからないけど他のバンドとは比較にならないほど嵌ったのだ。

これがハマるきっかけになった曲です。

で、2017年のサマーソニックで彼らのライブを観て心底感動し、そしてその数か月後に単独公演の開催が発表。迷わずチケットを取ったのだが、我ながらすごい行動力だ。大学生の頃なので今よりずっとお金なかったのに。

会場は豊洲PITという、括りとしてはライブハウスだが、3000人くらい入るかなり規模のデカい会場。微妙に立地が悪く、駅から10分くらい歩いていった記憶がある。

この時のライブの何が凄かったか、それは「バンドのテンションと客のテンションが完璧に呼応した」ことだ。言い換えると、バンドも客も異常に盛り上がった、ということである。
SEが鳴ってメンバーが登場した段階で信じられないくらいの盛り上がり、そして1曲目"J-Boy"から始まった瞬間、爆発。「会いたかった!!」という思いがお互いに爆発したわけである。
そして何より神セトリ。代表曲はほぼほぼ網羅したうえで当時の新譜『Ti Amo』の曲も絶妙に挟みこんでくる。"Entertainmant"からの"Lisztomania"の時なんて、観客皆絶叫である。僕も当時は若く、体力も有り余っていたので負けじと食らいついていった。

そんな観客を目の前にして、気分が良くならないパフォーマーなどいないだろう。ボーカルのトーマ(僕がこの世で一番好きなボーカリストです)は気持ちよさそうにシャウトを連発、他のメンバーも最高に楽しそうに楽器を鳴らしまくる。それを見て我々観客もさらにテンションが上がり…という、歓喜という概念にドラえもんのひみつ道具「バイバイン」を振りかけたかのような調子でヒートアップしたライブはあっという間に終わってしまった。

普段生きていて、例えば家で飲酒をしながら、あるいは歩きながら音楽を聴いて、「今聴いてるこの音楽のすばらしさを誰かに伝えたい!でも誰もいない!」というどうしようもない衝動を抱えることがあるのだが、あの日豊洲PITに集まっていたのはそういう人たちだったのではないか、と思う。

トーマ、客席に降りてきがち
最後はトーマがクラウドサーフ
この4人横並びのルックスが良い


③Cornelius (@ SUMMER SONIC、2023/8/19)

「期待」という気持ちは複雑だ。美味しいと聞かされてウキウキして入ったラーメン屋、あるいは面白いと聞かされてワクワクして観た映画。「あれ…?そうでもなくね…?」となってしまった経験、皆さんもきっとあるだろう。

このライブはその全く逆パターン。特に何も予習せず、とりあえず見ておくかほかに見るもんないし、ぐらいのテンションで観に行ったせいか、余計な期待を何もせず観たおかげで、それはもうとんでもない衝撃を受けたのである。

ステージには開演前から白い幕がかけられており、暗転するとそこに緑色のレーザーで模様が映し出される。そして炭酸飲料の缶を開ける音、紙をぐしゃぐしゃと丸める音、口笛…といった環境音が流れ、そして
「あ、あ、あ、マイクチェーック。あ、あ、あ、聞こえますか?」
と、どこかユーモラスな、大名盤『FANTASMA』のオープニングトラック"MIC CHECK"から幕開け。
「マイクチェック、聞こえますかー」のリフレインを繰り返し、だんだん脳がトリップしてきたところで音が止み、幕にメンバー4人のシルエットが写った瞬間、痺れた。そして写し出される「Thankful」「To Be Here」「SUMMER SONIC 2023」のメッセージ。又痺れる。

そして"火花"のイントロと共に幕がサッと落ち、メンバーの姿があらわに。
このオープニングだけでもう圧倒されたのだが、さらに凄いのが全曲にめちゃくちゃカッコいいVJが用意されていて、そのすべてが完全に演奏とリンクしているのである。Youtubeに何個か映像があるのでぜひ観てほしい。


"Another View Point”ではテレビのザッピングのように様々なアーティストの映像が流れては消えていく。ビートルズからThe Jam、ニルヴァーナにレッチリ、キュアー、そしてその日のヘッドライナーだったブラー、翌日出演のリアムギャラガーなども写し出す粋さ。

小山田圭吾氏、ギタリストとしての才能もすごい。いや、異能といった方が良いだろうか?"Count Five or Six"ではハードロックもかくやのディストーションギターを轟かせ、タッピングまで披露。"いつか/どこか"ではエフェクターを駆使したどうやって弾いてんねん、なソロで度肝を抜く。

そして"あなたがいるなら"。なぜそれを人力で再現できるのだ、という、タメと空白を活かした独特なリズムと譜割、音数を極限まで減らしているのにエモーショナルなギターソロ。喰らった、喰らいまくった。覆された、価値観が。

フェスの醍醐味として、知らなかったアーティストとの新たな出会いがあると思うのだが、その中でもトップレベルの出会い、衝撃であった。この日以来、棺桶に入れたいアルバムに『FANTASMA』、『Mellow Waves』が加わったのは言うまでもない。




あまりに長くなってしまったので、ここで一旦切ります…

後編につづく。

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