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アナログゲームマガジン大賞2023名局賞 2023年10月31日新人王戦決勝三番勝負第3局 上野裕寿四段-藤本渚四段

「技術面では三段リーグで一番強いと思っていた」。上野裕寿はプロ入り決定後の会見でそう話した。大言壮語ではない。彼の三段リーグでの勝率は群を抜いていて、昇段に4年半かかったのはたまたまでしかなかった。20歳という年齢でのプロ入りは決して早いものではないが、その実力は既にプロ中位以上にあり、いずれトップ棋士になれる器として将来を期待されている。
 上野のデビュー戦は新人王戦の決勝第1局だった。新人王戦は三段リーグの成績上位者にも出場資格があり、上野はそれに該当し参戦、トーナメントを勝ち進んでいた。その最中に四段昇段したという形である。同様の例は多数あり、中でも優勝に至った者として青野照市、森内俊之、糸谷哲郎といったタイトル獲得者の名が並ぶ。また三段のまま優勝した都成竜馬の例もある。都成はその後昇段し竜王戦決勝トーナメントに進出するなど活躍している。
 上野は三段リーグ時、「精神力の勝負だ」と思っていたという。実力は確実に足りている。だがあと1勝が届かない。そんな彼の気を奮い立たせた出来事が藤本渚のプロ入りだった。藤本は上野の同門、弟弟子である。その縁あり、数多くの練習将棋を指していた。その藤本が、自分より先に、17歳で三段リーグを突破した。その悔しさが上野の原動力になった。
 そしてその二人が新人王戦決勝という大舞台で激突したのである。

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